「小学校時代にモテた男子の末路」を聞きに、高須クリニックに乗り込んだ聞き手。美容整形の専門家として、高須克弥先生が答えやすいであろう仮説を用意し、準備万端だったけれど、高須先生の話術に転がされるばかりで話は前へ進まない(詳細は「小学校時代にモテた男子の末路(前編)」を参照)。取材時間残り30分。果たして「小学校時代にモテた男子の末路」は判明したのか、しなかったのか。(聞き手/日経ビジネスデスク・鈴木信行)

この人に聞きました
高須克弥(たかす・かつや)氏
1973年昭和大学医学部整形外科大学院卒業。1976年愛知県名古屋市にて高須クリニック開設。テレビなどのメディアを使って美容整形を一般に認知させた立役者(写真/古立康三)

――小学校時代にモテた先生が、思春期になると途端にモテなくなった、と。

高須院長(以下、高須):小学校時代にモテたでしょ。それで高校に入ってからもっとモテようと努力したんですよ。

 例えば、石原裕次郎さんの歩き方を真似してみたり。ちょっと足を引きずってみるとか、背中を丸めてみたり。要するに映画スターの真似です。でもそういう小ざかしいことをすると可愛げがなくなる。

――つまり、小学校時代にモテた男子は成功体験があるが故に、思春期に入るともっとモテようとして、本来の武器だった可愛げをなくしてしまう、と。

藤本義一さんと横山ノックさんが教えてくれたこと

高須:そう、可愛げ。言い換えればギラギラしないことです。

 バラエティ番組「11PM」に準レギュラーで出ていた頃、藤本義一さんと仲が良くて。藤本さんが「高須さん、わしこの頃メチャクチャ、モテまんのよ」と言うわけです。「秘訣を教えてください」と言ったら、「白髪頭にしてこういう風(ギラギラ感のない枯れた感じ)にしたら、女の子がみんな寄ってくるんですわ。みんな、わしのこと_____と思うとる様やけど、わしまだ_____でっせ」と。

 そしたら、横山ノックさんが「わしはエロダコだからみんな寄ってこんのやな」と言うわけです。

――先生(笑)。でも、可愛げがある人がモテるという分かりやすい事例ではあります。

高須:かっこつけちゃダメなんです。でも「モテたい」という時期はそういうわけには行かないですよね。

【高須先生が考える小学校時代にモテた男子がその後、モテなくなる理由】
(1)小学校時代にモテた男子は、可愛げがあるからこそモテていた
(駆けっこが速いとか運動神経が良い子がモテるというのは誤解で、運動神経の良い子が往々にして可愛げがあるだけ)
(2)しかし、高校生にもなると、モテようと意識し可愛げがなくなる
(小学校時代にモテた成功体験があるが故に、よりもっとモテようと思う)

高須:映画を見てモテる勉強をするわけですよ。タバコの吸い方にしても「うーん、俺に近付くと不幸になるぜ」って雰囲気を醸し出そうとしたりね。「不幸になるのはお前だよ!」って話なんだけど(笑)

――確かに(笑)。

高須:結局、映画を参考にするのは全部ムダ。あれは“最初からモテる人たち”がやっていて様になるんであって、普通の人がやったら可愛げがなくなるだけです。アイドル産業なんか見てごらんなさい、男性、女性とも「可愛げを長く維持できる感じの子」に白羽の矢を立てるんです。顔立ちが美形かどうかなどは、実はさほど関係ない。

 さっきも言ったけど、むしろ完璧な顔立ちはモテません。人間は「欠けている部分」に恋をするんだと思うんです。人気タレントさんは皆、完璧な顔じゃないでしょう。お笑いタレントも「足りない」からこそモテるんです。

――そう言われてみれば、そんな気もします。

高須:ファッションモデルなんて、歩き方も完璧だしスタイルも完璧だけど、僕は「衣紋掛け」だと思っていますからね(笑)。ロバはロバでいいんです。馬だってサラブレッドでなくて構わない。ばんえい競馬の馬も立派だし、ゴビ砂漠を横断する馬でもいい。みんなそれぞれいいところを持っているんです。

 ロバがより輝くロバに、ばんえい競馬の馬がより輝くばんえい競馬の馬になれるようお手伝いするのが僕の仕事です。それを、ロバをサラブレッドにしようとおカネを毟り取る悪い美容外科もいるんですよ。

――そう聞きます。

高須:ロバがサラブレッドになろうなどとしなくていい。残そうと思えば、十分に子孫は残せます。自分の足りないところを補ってくれるDNAを持っている人がどこかにいて、そういう人とうまくDNAを交配していくようにこの世界はできているんです。

――なるほど。

郷ひろみさんに見た「モテる苦労」

高須:モテる人を見て羨ましいなあと思うのは、「自分のDNAを撒き散らすチャンスがたくさん与えられていいなあ」と思うからです。でも現実には撒き散らすことなんてできないし、そもそも世界中にDNAを残す必要なんてないじゃないですか。

――それはそうです。

高須:それどころか、モテる人は大変ですよ。

 郷ひろみ君とはもうデビュー当時からの付き合いなんだけど、彼なんか本当に大変で。デビューしたての頃は、本当に熱狂的なファンが押し寄せてきてたの。マネジャーたちが必死にガードするんだけど、もうピラニアのようでね。僕も、彼が逃げる時に一緒になって逃げましたよ。そしたら、ひろみ君が「先生は誰も追いかけてこないから逃げなくていい」とアドバイスしてくれました(笑)。

――確かに(笑)。可愛げというのは、再生できませんか。

高須:わざとらしく可愛げを出すと、それはそれで、あこぎになるんですよ。

――とすれば、思春期に可愛げをなくした先生も、小学校の時の黄金時代は二度と戻ってこなかった、と。

高須:いや、それがね、この頃また、むちゃくちゃモテるんですよ。どこへ行ってもみんながベタベタしてきて。「先生、私、胸が小さいんだけど大きくした方がいい?」とか言われて、どれどれって触っても誰も「キャー」一つ言わない。

 まあ、向こうにしてみれば、毒のないコブラだとか、牙のないクマを相手にしている気持ちだろうと思うけど。

――ギラギラが消えて可愛げが復活した?

高須:無邪気で純粋な気持ちのまま生きてこれたら小学校の時からずっとモテ続けたかもしれません。でも途中で「事業を拡大してやろう」とか「美容整形の名人として褒められよう」とか「可愛げのないこと」を考えたところから、モテなくなったんだね。

 それが、気持ちを開放して、自分に嘘をつくのも止めて、「みんなが喜ぶことだけをやろう」と考えたら、再びモテるようになったんです。何しろ「彼女がいる」って公言しててもモテるんだから。今だって、隣の部屋で漫画を書いてますよ。

――なんと、西原先生、隣にいるんですか。

僕は愛されていると思っている

高須:ええ。彼女に漫画で「尿漏れ、ツイ廃(ツィッター廃人)老人」とか書かれることで、みんなに愛される存在にしてもらえたと思っています。とても感謝しているんです。西原だって、普通の女性は「尿漏れ、ツイ廃老人」からは逃げていくでしょう。僕はこれでも愛されていると思っているんですよ。

――それは漫画を読んでいて十分伝わります。

高須:今、心配なのは、こういう風にモテるようになった爺は、みんな騙されて選挙に出ちゃうことなんですよ。選挙に出て晩節を汚す。だから僕が「選挙に出たい」と言い出した時は、「それはもうボケた証拠だから、暗殺してくれ」って西原には言ってあります。

――わかりました(笑)。先生、今日はありがとうございました。最後にまとめると、小学校時代に一番モテた男子の末路は、「思春期以降はモテなくなるけど、やがて人間的に成長し、可愛げが復活すれば、再びモテる時も来るかも」。こんな感じでしょうか。

高須:そうでしょう。ところで「末路」と言えば、最近、僕は「あっ今、ここで死んだら凄く幸せなのにな」と思う瞬間がたくさんあるんです。でもその瞬間を常に逃していて、最後はとても悲惨な末路になるんじゃないかと不安なんです。

――そんなことにはならないと思います。

高須:そうですか。でも「これだけ人気があるんだから1つ選挙に出てみませんか」なんてそそのかされて、とち狂ってしまい…。

――大丈夫。その時は西原先生が暗殺してくれます(笑)。

高須:そうだね(笑)。

文/鈴木信行 似顔絵イラスト/大嶋奈都子 ポートレート写真/古立康三

「宝くじで1億円当たった人の末路」
 著者:鈴木信行
 出版社:日経BP社
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