国際線のフライトともなれば13時間の乗務の日もあり、遅刻や忘れ物は厳禁。常にお客様から見られるだけに美しさもキープしなくてはいけない──いつの時代も憧れの職業であるCAですが、仕事の責任は重大です。テキパキ仕事をこなすための時短術をJALのCAさんお二人に教えていただきます。
 今回は、国際線CAの山本陽子さんの時短術をお届けします。

長距離フライトのある日の朝は緊張の連続

 主に国際線のフライトに乗務する山本陽子さん(30歳)は、CA歴8年目。国内線のフライトを2年ほど担当した後、国際線乗務に移行しました。

 現在はシカゴ、ロサンゼルス、フランクフルトなどの長距離路線をはじめ、ホノルルなどの中距離路線、バンコク、シンガポールなどのアジア路線、国内線など、まさに世界各国を飛び回る毎日です。

 長距離路線であるシカゴ便に乗務する日のスケジュールを拝見すると、朝4時30分には起床。1時間ほどで身支度を済ませ、成田空港に出勤します。

 「絶対に寝坊や遅刻はできないため、朝はスマホと目覚まし時計を時間差でセットします。もし、どちらかが壊れていたら大変なことになりますので、アラームは常に二つ使っています。朝食はパンとスープといった簡単なものにして、出かける前の洗い物を少なくしています」と山本さん。早朝から緊張感に包まれている様子がうかがえます。

 成田空港に到着後は制服に着替え、乗務するCA全員で出発ブリーフィングに参加します。お客様の情報、クラスごとのサービス内容、緊急時の安全確認など、その日のフライト内容を確認します。

 出発準備を整えてお客様をお迎えし、離陸。13時間のフライト中は食事のサービスや機内免税品の販売などに従事し、お客様が機内で快適にお過ごしいただけるようサービスを行います。シカゴに到着するのは日本時間の24時(現地時間9時ごろ)、就寝できるのは日本時間の3時ごろという「長い1日」です。

 しかも、山本さんの役職は「リードキャビンアテンダント」。チーム一丸となって良いサービスが提供できるように担当するクラスをまとめる立場にあります。体力的な疲労だけでなく、精神的にも疲れたときに、山本さんはどのようにリカバーしているのでしょうか?

休日の同僚との語らいは格別

 翌日以降の仕事の活力を蓄えるため、山本さんは休日の過ごし方を工夫していました。

 2日間のお休みのうち、1日目は家事をした後にスポーツジムで汗をかき、リフレッシュ。夜は友人と夕食を楽しみます。同僚と会う機会が多く、仕事上の情報交換や悩み相談などで会話が尽きないそうです。

 このように、外出したり人とおしゃべりしたりすることで、エネルギーをチャージできるといいます。

 休日2日目は翌日のフライトに備えて早めに就寝します。

前日に翌日の行動をシミュレーション

 山本さんが「社会人になってから始めた」習慣が、翌日の行動のシミュレーションだそうです。

 「翌日の持ち物や着る洋服、業務内容を前日のうちにシミュレーションしておくと、1日の流れがスムーズになります。その上で実際の行動は、『10分前行動』を意識。早めの行動をしていると、たとえ電車が1本遅れたとしても、慌てなくて済みます」

 山本さんの持ち物では、iPad・パスポート・IDカードが「忘れてはいけない3点セット」。

 「このうちのどれか一つを忘れてもフライトできませんので、きちんとバッグに入れたか何度も確認しています。新人の頃は持ち物リストを冷蔵庫に貼って、忘れ物を防いでいました」

 次のページでは、国際線のCAという仕事をこなす山本さんを支える具体的なアイテムを紹介していただきます。

山本さんをサポートするアイテムたち

 スケジュールの管理はiPadと手帳の二刀流。山本さんの場合は、仕事の予定はiPad、プライベートは手帳、と使い分けているそうです。

【iPad】

 会社貸与のiPad。「2年ほど前から会社からiPadが貸与され、フライトスケジュールや自分のスケジュールを確認できるようになりました。紙媒体のスケジュール表だった頃に比べて、スケジュールの把握が早くなりました。また、仕事上の資料も確認できますので、機内アナウンスの練習をするなど、自己啓発のためにも活用しています」

【手帳】

 仕事の予定はiPadで、プライベートの予定は手帳で管理。「毎月のフライトスケジュールが出たらすぐに、手帳に予定を書き込みます。月ごとのTO DOリストを書いたり、重要な予定にはスマホのアラームをかけたりして、忘れないように気を付けています。仕事が忙しいときも、手帳に書いてある楽しみな予定を眺めると元気が出ます!」

【布団クリーナー】

 3〜4年ほど前に購入した布団クリーナー。UVランプ+たたき出し機能で、布団のホコリやダニを吸い取ります。

 「留守にすることも多く、布団を干すタイミングが難しいため、購入しました。お天気に左右されず布団をきれいにできますし、安心して眠れるようになりました。忙しい毎日を乗り切るため、やはり睡眠は大事です。長距離フライトのときも休憩時間はしっかり仮眠し、体を休めます」

【スポーツジム】

 山本さんの意外な趣味がボクササイズ。

 「もともとはスポーツジムでヨガクラスを受講していたのですが、物足りなくなってボクササイズを始めました。年齢を重ねるとともに疲れやすく、腰痛も感じるようになってきたので、もっと筋肉や体幹を鍛えようと思ったのも理由の一つです。仕事で疲れていても休日のうち1日は運動して、汗をかいたほうがスッキリします。ボクササイズのおかげなのか、風邪をひかなくなりました」

【歴史小説】

 もう一つの意外な趣味が歴史小説を読むこと。

 「父から『細川ガラシャをテーマにした小説を読んでみるといいよ』と勧められたのがきっかけで、歴史小説を読むようになりました。最近は織田信長の娘、冬姫の小説を読んでいます。戦国時代は決して女性が活躍できる環境ではなかったのに、そのなかで生き抜くたくましさ、しなやかさ、凜とした生き方に感銘を受けています。機内での休憩中や、ステイ先のホテルで読書を楽しむこともあります」

【足のむくみを取る靴下】

 オン・オフどちらの日も愛用している、ドクター・ショールの「寝ながらメディキュット」。寝るとき専用の着圧ソックスで、足首から太ももまでカバーし、むくみを解消してくれます。

 「これをはいて寝ると足がスッキリ、疲れも取れます。むくみが残っていると重い物を持ったり、食事サービスのワゴンを押したりするときに踏ん張れず、力が出ないのです。休日もたくさん歩いた日には使っています」

ステップアップして良かったこと

 オンにオフに充実した時間を送っている山本さんですが、2年前にリードキャビンアテンダントに昇格する話があったときは、悩んだそうです。

 「それまでは先輩から教えていただいたことや、自分の役割を遂行することを考えていればよかったのですが、リードキャビンアテンダントになれば乗務経験や国籍の違うCAをまとめ、指導育成する立場にもなります。はたして自分が仕事の指示を出す側に回り、皆が働きやすい環境をつくれるのだろうか……と少し不安でした」。

 仕事上で何か悩んだり、迷ったりしたときは、同期の仲間の存在が支えになっているといいます。

 「同期入社の皆も同様に、8〜9年目でステップアップやキャリアアップを考える時期になるようです。同じ悩みを持つ人からのアドバイスは身にしみますし、反対に『私は悩み過ぎかな』と肩の力が抜けることもあります。昔よりも仕事の悩みは増えているかもしれませんが、この2年間はやりがいも増え、楽しく充実した時間を過ごすことができています」

 今は「後輩に『この人になら指導されたい』と思われるCAになりたい」と語る山本さん。手帳を見せてもらうと、多忙なスケジュールの中でも英語の勉強を続けていました。「ステップアップした分、それに見合った働きをしたいと思っています。今後は英語などの勉強はもちろん、バランスの取れた食事をするなど体調面にも気を配って、仕事に励みたいです」

文/三浦香代子 写真/稲垣純也、PIXTA