企業の人事・組織戦略・人材関連サービスのための専門イベント「ヒューマンキャピタル2017」が6月28日〜30日の3日間、東京国際フォーラム(東京・有楽町)において、日本経済新聞社と日経BP社の主催で行われました。セブン&アイグループのダイバーシティ推進についての基調講演の模様をお届けします。

 企業の人事・組織戦略・人材関連サービスのための専門イベント「ヒューマンキャピタル2017」が6月28日〜30日の3日間、東京国際フォーラム(東京・有楽町)において、日本経済新聞社と日経BP社の主催で行われました。

 6月29日の「日経WOMAN特別セミナー」では、セブン‐イレブン・ジャパン取締役常務執行役員で、セブン&アイグループ ダイバーシティ推進プロジェクトリーダーの藤本圭子さんが基調講演を行い、約150社の事業会社を傘下に持つ同グループがどのように女性活躍を推進してきたのかを紹介しました。

トップコミットメントが推進のカギ

 セブン&アイ・ホールディングスは、セブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、デニーズジャパンの共同株式移転により2005年に設立されました。国内外に約150社のグループがあり、世界18の国と地域でコンビニエンスストア、総合スーパー、食品スーパー、百貨店、レストランなどを展開しています。

 同グループでは、「企業の競争力を強化し、企業価値を高める」「持続可能な競争力を持つ企業にする」という目的から、ダイバーシティ推進における2020年までの目標を5つ定めています。

1.女性管理職比率30%達成(課長級・係長級)
2.男性の育児参加促進
3.介護離職者ゼロ
4.従業員満足度の向上
5.社会的評価の向上

 「現在、お客様の7割は女性です。女性を戦力化することで、お客様のニーズを満たす商品開発や品ぞろえ、買い物しやすい売り場が実現されて消費につながり、消費が会社の収益に貢献する。結果としてダイバーシティ推進が企業の収益や競争力の向上をもたらす好循環になると、とらえています」(藤本さん)

 ダイバーシティ推進をする上で大きなカギを握るのは、トップコミットメントの有無だそう。同社では2006年に当時の代表取締役会長兼CEOであった鈴木敏文さんが「女性幹部の割合を2割から2割5分にする」と社内外に発信したことを皮切りに、ダイバーシティ推進が経営戦略として位置付けられました。

 2012年にはダイバーシティ推進プロジェクトが発足。グループ内には「ダイバーシティ推進連絡会」という会議体があり、中核事業会社9社が推進状況を共有しています。好事例があれば9社以外の事業会社にも発信し、グループ全体のダイバーシティ推進につなげているとのこと。

女性の意識改革で新たな課題が判明

 ダイバーシティ推進に当たって最初に行ったのは、女性の意識改革だそう。2012年に育児中の女性を対象とした「ママ’s コミュニティ」を発足。昼休みの時間を使って仕事と育児の両立に関するディスカッションを行い、不安を解消していきました。その中でパートナーに対する家事育児の参画体制への不満が最も多かったことを受け、2017年からは男性にも対象を広げて、名前を「子育てコミュニティ」へと変更したそうです。

 また、「身近なパートナーの理解や協力がなければ、女性だけがいくら頑張っても燃え尽きてしまうだろう」という理由から、男性の育児参加促進を目的とした「イクメン推進プログラム」も2013年から開始。子育て中の男性社員を対象に、夫として必要なサポートや、身近な妻の課題を認識してもらう取り組みも始めました。

 「これまでパパたちは、余った時間で育児や家事に協力するという考えだったのですが、育児や家事のために時間を取る主体者意識が芽生えてきました。どうすれば効率よく仕事をして早く帰宅をできるかも考えるようになり、それが働き方や業務プロセスの見直しにもつながってきました」(藤本さん)

 また、男性の育児参加促進を目的に「育児休暇制度」も導入。未就学児がいる男女の社員が対象で、年間5日を上限に、有給の特別休暇を1日単位で取得可能にしています。

女性管理職候補者を育成する取り組みも

 女性管理職の育成に向けては「Women’s Management Community」を開催。グループ各社の女性管理職が対象で、「マインドセット」「マネジメントスキル」「管理職としての基礎知識」の3テーマを扱っています。

 「そもそも女性管理職自身が、持続的な企業の成長力や競争力につながるという女性活躍推進の意義をきちんと理解していないこともあります」と藤本さん。その理解を深めるために、社内の女性役員に登壇してもらったり、社外講師を招いてマネジメントに関するセミナーを開いたり、IRやCSR、広報などの管理職として必要な基礎知識に関する講義を行っているとのこと。

 この6月からは、女性の係長職と担当者向けに「なでしこアカデミー」を開催。女性管理職候補者の母集団を形成するため、「グループ内で頑張っている身近な先輩社員に、働き方や仕事の工夫などを話してもらい、自分の仕事を見つめ直したりモチベーションを上げて、管理職を目指す意識を持たせたりすることを目的にしております」と藤本さんは説明しました。

管理職の意識改革も重要

 また、管理職の意識改革については、トップコミットメントと同様に重要だと藤本さんは説明します。

 「そもそも管理職の人たちは、今までの自分のマネジメントや仕事の仕方がよかったから管理職に選ばれているという自負がありますし、『24時間働きます』『どこでも転勤します』という世代の管理職に育てられた人が多いので、一筋縄ではいかないことを実感しています」(藤本さん)

 そのため、管理職の意識改革を目的とした「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を開催。外部の講師を招いて、「マネジメント」「リーダーシップ」「働き方改革」の3つを軸としたテーマを取り上げています。妊娠中や育児中、介護中の社員のマネジメントを多岐にわたり明記した「ダイバーシティ・マネジメントブック」も作成し、部下とのコミュニケーション促進のツールとして活用されているそうです。

 加えて、ダイバーシティ推進の取り組み開始から5年が経過した節目の今年は、各事業会社の社長と幹部を集めたセミナー「7&i ダイバーシティDAY2017」を開催。「Change, or Die! -変革せずして企業の存続あらず-」をテーマに、カルビーの代表取締役会長兼CEO・松本晃さんを招いて講演を行いました。

「スポット保育」で祝日勤務を可能に

 最後に藤本さんは、「働き方改革」への取り組みとして、専門会社に委託し、社内の会議室などで社員の子どもの保育を行う「スポット保育」を祝日・年末年始に実施した例を紹介しました。「子育て社員が祝日・年末年始も存分に活躍できる環境を支援する」ことを目的としており、0歳〜小学生の子どもがいる男女社員を対象にしています。セブン‐イレブン・ジャパンでスタートし、今年の5月からはグループ内に拡大しているとのこと。

 利用者からは、「祝日の保育園はキャンセル待ちで預けられないときもあったが、安心して働ける」という声が上がるなど、労働力の確保や、働き方の選択肢の拡大、定時のお迎えが必要なことによる生産性の向上などが成果として得られたそうです。

 同グループでは、「仕事」と「生活」の関係を「ワークライフシナジー」と呼んでいるそう。「仕事で得た知識や成長した自分を生活で生かす。同時に、生活で得た情報や知識をまた仕事に具現化していくという相乗効果をもたらすものとしてとらえている。今後もダイバーシティの推進を地道に取り組んでいきたいと思います」と、藤本さんは締めくくりました。

文/飯田樹 写真/佐々木辰生