企業の人事・組織戦略・人材関連サービスのための専門イベント「ヒューマンキャピタル2017」が6月28日〜30日の3日間、東京国際フォーラム(東京・有楽町)において、日本経済新聞社と日経BP社の主催で行われました。6月29日の「日経WOMAN特別セミナー」では、基調講演に続いてパネルディスカッションを開催。3社のダイバーシティ推進責任者が、取り組みを紹介しました。

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待ったなし ダイバーシティ推進の最重要ポイントは?

 登壇したのはサントリーホールディングス ヒューマンリソース本部 人事部ダイバーシティ推進室 室長 弥富洋子さん、りそなホールディングス 人材サービス部 ダイバーシティ推進室 室長 杉本仁美さん、LIXIL 日本人事総務本部 人事部 ダイバーシティ推進室 室長 成田雅与さんです。

 これらの企業は日経WOMANが5月に発表した「女性が活躍する会社BEST100 2017」において上位にランクインした企業です。モデレーターは、日経WOMAN編集長の安原ゆかりが務めました。

マミートラックに入らないために「早期にフルモード化」

 まずは各社による女性活躍推進の取り組みに関する全体像の紹介として、今年の調査で食品業界1位となったサントリーホールディングスの弥富さんが登壇。同社は、「女性が働きやすい、かつ成果を上げている会社」を目指し、2025年までに女性管理職比率を20%にすることを目標にしています。

 そのための重点課題としているのが「多様な人材の創出」「働き方革新」「マネジメント革新」「一人ひとりの考動革新」「基盤整備」の5つだそう。特に、妊娠期から復職後までの施策では、「早期にフルモード化してもらう」ことを目的に、「産休前と同様に活躍してほしい」と一貫して伝えているそうです。

 これらに加え、2014年以降重点的に取り組んでいるのは「パイプラインの確立」、「部門間格差の解消」、「ストレッチ機会の提供」の3点。全社的には、一人ひとりの考動革新を目的とした「ダイバーシティ通信」の発行、男性の育休取得促進や「ちちおやガイダンス」にも取り組んでいるそうです。

 続いて登壇したのは、その他製造業部門で3位となったLIXILの成田さんです。2011年に国内住設機器メーカー5社が統合して誕生したLIXILは、「住生活産業のグローバルリーダー」となることを掲げており、そのためには「エネルギーと創造性を創出できるダイバーシティ」が必須であるとして、2012年1月にダイバーシティ推進室が設置されました。2014年には、女性に特化したアクションプラン「WeDoアクション」を策定し、目標数値も設定しています。

 具体的な取り組みとしては、「人事施策」「人材育成」「環境整備」「風土醸成」の4分野において、実行権限のあるリーダーが率いるワーキンググループを結成。特に人事施策として行われている、POD(People&Organization Development)という「人を発掘・抜てきし、機会を与えて育成する」プロセスが有効に機能しているそうです。

 最後に銀行業界で1位にランクインした、りそなホールディングスの杉本さんが登壇。女性活躍推進の起点となったのは、2003年の「りそなショック」で想定以上に多くの男性社員が退職し、人員構成が大きく崩れたときでした。

 同グループでは二つの大きな制度改革が行われたそうです。一つは「組織のフラット化」。2004年7月に総合職・一般職という職制を廃止。現在は、すべての社員が希望する勤務エリアを申告する「本拠エリア制度」と、個々人のキャリア形成やキャリアフィールドを自ら選択する「キャリアフィールド制度」の二つを導入しています。

 もう一つは、2008年7月に導入した「同一労働同一賃金」の考え方です。職務の難易度や職責の大きさを示す職務グレードと人事評価を、職種にかかわらず共通化。同一の職務グレードであれば、社員(正社員)もパートナー社員(パートタイマー)も給与が時給換算で同額になるようにしています。

同一労働同一賃金が「スマート社員」を可能に

 続いて、各社が取り組みの特色を紹介。LIXILの成田さんは、取り組みの要は「トップの強いリーダーシップ」だといいます。ポジティブアクション(管理職への女性の積極登用)の結果、2012年時点で22名だった女性管理職は2016年には167名になり、新卒女性の採用数も2014年から2016年にかけて3年連続で30%以上を達成したそうです。女性のプロジェクトリーダーを増やす施策も行いました。

 また、女性デザイナー開発商品のグッドデザイン賞受賞などが女性活躍推進の結果として出ているとし、「意識改革もやっていますが、やはり実績を出して見せるのが重要なポイントだと思います」と成田さん。

 りそなホールディングスの杉本さんは、特色のある制度として、社員とパートナー社員の間に位置するスマート社員(限定正社員)を紹介しました。「勤務時間限定型」と「業務範囲限定型」の2種類があります。「同一労働同一賃金」の考え方に基づき、職種変更時も従来と同じ職務グレードが適用される仕組みのため、「能力相応の仕事をやらせてもらえないというように、キャリア形成に影響が出ることはない」のだそう。

 一方で、転居を伴う転勤や休日の突発的な対応、時間外のトラブルは社員が優先的に対応するため、職種間で賞与や福利厚生などに差を設けることで、「公平性や社員の納得感の醸成」を図っているそうです。

 最後にサントリーホールディングスの弥富さんが、2010年から実施している「S流仕事術」を紹介。「無駄のない、スリムでスピーディー、かつスマートな仕事をすることで、時間配分を適正化」し、「時間生産性を上げる」ことを目的とした取り組みです。具体的には「新たな制度構築」「IT活用」「風土醸成」に力を入れており、例えば、「テレワーク・フレックスタイム制度」は昨年末時点で従業員の約7割である4460名が登録しているとのこと。

妊娠期から復職までのロードマップを作成

 最後に各社から、成功ポイントや現在取り組んでいる課題が紹介されました。

 りそなホールディングスの杉本さんは、経営者のコミットメントと、女性社員の声を経営に反映させることを目的に発足した「りそなWomen’s Council」の活動が重要だったと振り返ります。今後の課題としては、管理職比率は着実に増加しているものの、本部の部長クラス、支店長クラスなどの経営層が手薄なため、育成の工夫を考えているそう。加えて、「男性社員の意識改革にも取り組んでいきたい」とのこと。

 サントリーホールディングスの弥富さんは、パイプライン確立に向けた取り組み事例として、「女性リーダーフォーラム」を紹介しました。女性マネージャーや管理職経験者の有志9名が中心となり、イベントなどを開催しているそう。弥富さんは「自立自走して活動」が行われているのを見て、「会社に変革が起こりつつある」ことを実感したそうです。

 最後にLIXILの成田さんは、「キャリア形成のサポートが必要」という課題への取り組みを紹介しました。毎年約200名が育休に入っていることを背景に、妊娠が分かった時点から職場復帰するまでの個人のロードマップ「ままっぷ」を作成。ワーキングマザーの声を基に、「この時期にこういうことをしてほしい」ということを、上司と面談をしながら作成するものだそうです。

 会場には多くの来場者が集まり、各社の取り組み事例について熱心にメモを取る様子が見受けられました。

文/飯田樹 写真/佐々木辰生