こんにちは、「ワークルールとお金の話」の佐佐木由美子です。先月、休日出勤をしたので、今月になってから代休を取った佳織さん。しかし、給与がカットされてしまったといいます。その理由とは……?

そもそも代休の仕組みって?

 めったに休日出勤をすることがない佳織さん(仮名)。代休を取得するのも、今回が初めてのことでした。ところが、代休を取った月の給与がカットされてしまい、「損をした気分」だといいます。いったい、どういうことなのでしょうか?

 そもそも代休とは、休日に働いた場合に、その代償として以後の労働日に休みを取ることをいいます。例えば、納期に間に合わせるために日曜日に出社し、その代償として次の木曜日に休みを取るような場合です。

 ちなみに、代休と似ているものとして、「振替休日」があります。これは、あらかじめ休日と定められている日を労働日として働き、その代わりに他の労働日を休日と交換することをいいます。大きな違いは、事前に振り替える日を特定しておくことです。

 佳織さんのように、振り替える日を事前に特定することなく休日に働いてしまい、その後に代償として他の労働日を休日として休む場合、休日労働という事実は消えませんので、法定休日に働いてしまった場合は35%以上の割増賃金が支払われる必要があります。

 行政解釈の通達においても「休日に労働を行った後にその代償としてその後の特定の労働日の労働の義務を免除するいわゆる『代休』の場合は『休日の振替』には当たらない」としているため、休みを後から取った場合、給与は振替休日と同じ、とはなりません。

月をまたいで代休を取った佳織さんの場合

 佳織さんの会社は、給与計算期間が末締めで、支払日は翌月15日です。5月の法定休日に8時間働いて、6月にその分の代休を取って会社を休みました。このように、給与計算期間をまたいでしまう場合、休日労働として働いた8時間分については、6月支給給与で時間単価の135%が割増賃金として支給されます。時給単価が1500円の場合は次の通りです。

@1500円×1.35×8時間=1万6200円

 そして、6月の労働日に代休を取ると、8時間の労働分に対する給与は休みと相殺されるために7月支給給与で差し引かれることになります。

@1500円×8時間=1万2000円

 つまり、結果として佳織さんに支払われた金額は、4200円(1万6200円−1万2000円)となるわけです。先にこの割増賃金分も含めた給与をもらっているために実感が持てないかもしれませんが、翌月に給与が差し引かれていても、決してマイナスになるわけではなく、割増賃金分はプラスとなっています。

企業によって運用ルールはさまざま

 なぜこのような方法を取っているかといえば、法律では賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うことが定められているからです(労働基準法第24条2項)。そのため、「来月に代休を取るからよいだろう」という臆測で、最初から35%の割増賃金分しか支払わないというのは、本来は認められていません。

 しかし、運用上こうした細かい計算をしていない企業が多くあるのも事実で、代休を取ることを前提として35%の割増賃金のみを支払っている会社もあるでしょう。後から控除されない、という意味では、一見よさそうに見えますが、もし実際の代休が取れなかった場合は、100%分の給与が支払われていないことになってしまいます。

代休制度がない会社もある

 「代休制度があるのは当たり前」と思っている方も多いかもしれませんが、実はそうでもありません。

 法律上は、休日出勤をした代わりに従業員へ代休を与えることまでは義務付けていないのです。つまり、就業規則等に代休制度が設けられていなければ、代休を自由に取ることはできないことになります。

 仮に、振替休日を利用する場合も、就業規則等の定めが必要となり、この場合は、事前に休日と振り替える労働日を決めておかねばなりません。

 休日に働いたからといって、必ずしも休まなければならない、ということではありません。会社によって運用はさまざまなので、まずは会社のワークルールを確認してみましょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA

Profile佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)
人事労務コンサルタント・社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、働く女性のための情報共有サロン【サロン・ド・グレース】を主宰。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」をはじめ、新聞・雑誌等メディアで活躍