自分は何も提供しないのに、他人からモノや情報を搾取しまくる、通称「くれくれちゃん」。その実体について、はあちゅうさんが鋭く斬り込みます。

 初めての著作の印税が入ったとき、知人が無邪気に「印税いいな〜ごちそうしてよ〜」と言いました。「本ってそんなにもうかるもんじゃないんだよー」と笑いながら答えつつも、なんだか傷ついてしまったのを覚えています。その人、私が本を出すのになんの協力もしてないし、本を出すまでの苦労も何も知らないくせに、なんで知り合いってだけで「ごちそうしてよ」なんて言えるんでしょうね。

 印税を不労所得のように捉えている人って少なくなくて、「棚ぼたで入ったお金ならいいじゃん」みたいなノリでの「ごちそうしてよ」なんですよね。私、印税では足りないくらいの時間を本にささげているので、不労所得ではないのですが……。本の印税ってなぜか仕事の対価だとは思われづらいという特性があります。「給料入った」って人に「いいな〜ごちそうしてよ〜」とは言わないと思うんですが。

 前置きが長くなりましたが、今回はこういった目に見える金品に限らず、情報もタダで与えてもらうことが当然だと思っている「くれくれちゃん」のお話です。

与えてもらうことが当たり前だと思っている人種=「くれくれちゃん」

 例えば映画好きな友人に、「何か面白い映画やってない?」と尋ねること、ありますよね。私の場合はブログでグルメ紹介をしていることもあって、「●●(場所)でおいしいお店知らない?」と聞かれることが多いです。

 でも映画にしろおいしいお店にしろ、聞かれた人はタダでその情報を得たわけではなく、自分で映画館やレストランに足を運び、お金と時間をかけてその情報を集めたわけです。

 「くれくれちゃん」は、こういった自分が得する情報をいつも他人に求めてくるくせに、自分からは何も差し出さない人のことを指します。

 彼・彼女らは自ら苦労して情報を得たことがないので、おいしいお店や面白い映画を探す労力を知りません。そのため、教えてあげた情報の価値やありがたさを感じることなく、気軽に「サンキューサンキュー! でもさっき教えてくれたような高級店じゃなくて、もうちょっとカジュアルめで駅近、しかも禁煙のほうがいいんだけどどっか知らない?」と、さらに追加注文まで入れてきたりします(笑)。

 私も、オススメすることには責任が伴うと思っているので、聞かれると昔のブログとか見返したりして、結構時間かかるんですよ。でも、聞いてきた側は意外と「相手が自分のために時間を割いてくれている」っていう意識がなかったりしますよね。

 もちろん仲良しに対してはそんなこと、思いませんよ。でも、普段は連絡を取っていない人から気軽に何かを聞かれると、なんかすごく軽く扱われている気がしてしまうんですよね……。ケチな話ですが、グルメ情報を提供するのって、私にとっては「仕事」なんですよ。なのになんで仲良くもない相手に、タダ働き? って。ブログを書くのもお仕事の一つなので、気軽に「書いてよ」って言われると、ムッときちゃいますね。

人の紹介を気軽に頼んでくる「くれくれちゃん」もいる

 情報だけでなく、「●●さんと知り合いでしょ、今度ご飯に一緒に行かせてよ!」と、人の紹介を気軽に頼んでくる「くれくれちゃん」もいます。

 おいしいお店は店名を教えれば終わりですが、人の紹介となると、相手と自分との信頼関係にも関わってくる。そして、せっかく引き合わせても相手のことをろくに調べもせず、ただのミーハー心だけだったことが判明したときの場の空気といったら……。OB訪問を頼まれて、よかれと思ってつないだら、先輩に対してすごく失礼な態度を取られて、顔向けできなかったこともあります。知らない相手のことを気安くつなげちゃダメだな、と学びましたね……。

 若い読者モデルさんとかちょっとしたインフルエンサーとかに多い気がします。自分が何者かだと思ってしまって「私と知り合えばあなたも得でしょ」的な態度を取る人。てっぺんの人はもはやプロなのでそういう態度を取らないんですが、中途半端な子に限って、「私はなんでもしてもらって当然」と思っている気がします。相手が時間を割いてくれていることに感謝しないで平気で約束の時間に遅れてきたりする。

 さらに「くれくれちゃん」は「手柄泥棒」と化することも多いのです。

さも自分が発見した情報のように振る舞う「手柄泥棒」

 例えば、おススメした情報や面白い話を、さも自分が見つけたネタかのように紹介していたり……、別にいいんですけど、そこに仕事が絡んでくるのなら、事前に一言欲しいです。私がラインで聞かれてオススメしたお店がまるっとその人のオススメとして雑誌に使われていたときはあぜんとしました。

 中学生のとき、Aちゃんという子に面白い話をしたら後日、そのAちゃんに「ねえねえ、面白い話があるんだけど……」と、自分がした話と全く同じネタを聞かされたことがありました(笑)。テレビで芸人さんが話した「すべらないネタ」を、まるで自分の体験のように話している人が合コンにいたこともありましたね……。私、けっこうお笑いが好きなんで「あ、これあの芸人さんの話じゃん」って気付いてしまうんですよ。もちろんその場で指摘はしませんが、その後、その人のことをなんとなく信用できなくなりますね……。

「小さい損」を重ねると「大きな損」を招く振る舞い

 こうして書き連ねてみると自分の器の小ささも感じてしまいますが、私も、決して出し惜しみをしたいわけじゃないんです。

 むしろ気持ちよく人を紹介してくれる人に対しては、私もいつかすてきな人を紹介して恩を返したいと思いますし、おいしいお店を誰かに教えてもらったら、その人が好きそうなお店をピックアップして伝えようと思います。

 つまり人間関係はギブ・アンド・テイクであって、互いに頼り合うことでよいコミュニケーションが生まれるんだと思っているんです。そういった意味で一方的に自分がもらうことだけを当然と思っている「くれくれちゃん」との付き合いは、しんどくなってしまうんです。

 「くれくれちゃん」はタダで情報をもらって得したような気になっているかもしれません。でも他人に頼ってばかりの一方通行の関係性は「小さい損」が積み重なっている状態なので、結局は人が離れていくなど、「大きな損」を招くような気がします。

 私も人に何かを相談することがありますが、そんなときは、自分が相手に代わりに与えられるものを、きちんと考えるように意識していきたいですね……。

聞き手・文/小泉なつみ 写真/小野さやか、PIXTA(イメージ) 取材日:5月30日

Profileはあちゅう
作家、ブロガー。1986年生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。在学中にブログを使って「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、カリスマ女子大生ブロガーとして活躍。電通、トレンダーズを経てフリーに転身。月額課金制個人マガジン「月刊はあちゅう」、「小さな野心を手帳で叶えるオンラインサロン」などを運営。著書に「とにかくウツなOLの、人生を変える1か月」(KADOKAWA)、「言葉を使いこなして人生を変える」(大和書房)など。