長い人生では、思わぬアクシデントもあれば、思いがけないチャンスが巡ってくることもあります。アクシデントに備えるには、国や会社のサポートの制度を知っておいたり、民間の保険に適宜加入しておいたり、貯金しておくことなどが有効と、これまでの連載でもお伝えしてきました。 
 一方で、自分も頑張って働いてお金を得たのだから、お金にも頑張って増えてもらい、気持ちにゆとりを持ちたいですよね。
 そこで今回は、お金を増やす方法の一つとして、「運用」についてお話ししましょう。

運用は怖いもの?

 「運用」というと、なんだか怖いものと思う人もいるかもしれません。金融広報中央委員会が行った調査によると、金融商品を選ぶときに「元本が保証されている」ことを重視する人は26.6%と最も多く、「利回りが良い」を重視する人(18.3%)を上回っています※1。また、これから保有したい金融商品について「預貯金」を希望する人は44.7%と最も多く、株式や投資信託等の有価証券を希望する割合(23.7%)を大きく上回っています。自分のお金を管理していく上で、それを増やすことよりも、守ることを強く意識している人が多いことがうかがえます。

※1 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](2016年)

 しかし実は、「運用」は一概に怖いものではありません。運用とはお金を増やすこと全般を指し、広い意味でいえば、お金を貯めて増やしていく「貯蓄」も含まれるからです。預貯金を持っている人なら、既に運用を経験しているといえるのです。

 一方で、値動きがある株式や債券、投資信託などにお金を投じることを「投資」といい、これも運用の一つです。つまり、お金を運用することは、必ずしも高い収益を狙って投資をすることだけではなく、貯蓄も含めて上手に増やすことを指すわけです。

 今はとても金利が低く、コツコツ貯めるだけではなかなかお金が増えにくい状況です。そんな中で、初心者の方も上手に運用をして、お金を少しずつ増やすチャンスを広げていきたいものですよね。

金利の高い預金を探そう

 「貯蓄」で運用をするなら、預金の金利に注目してみましょう。今、自分が預けている銀行の金利は何%でしょうか? 2017年7月現在、大手銀行の普通預金の金利は年0.001%、定期預金で年0.01%です。これは、仮に100万円を1年間預けて得られる利息が10円、100円ということです。定期預金では、満期が長いものではより高い金利がつくこともありますが、今はほとんど変わりません。さらに、預金の金利には税金がかかり、利息が入金されるときには20.315%が差し引かれてしまいます。定期預金に100万円預けても、手取りはたったの80円弱にしかならないわけです。

 そこで、少しでも金利の高い預金を探してみましょう。インターネットを中心に取引をするネット銀行なら、金利の水準が比較的高い預金があります。1年満期の定期預金で、年0.05〜0.25%の金利がつくところがあります。この場合、100万円を預けると、1年後には500円〜2500円(税引き前)の利息がつきます。これなら、化粧品1つ分、ランチ1回分くらいのお金にはなります。もともと出したお金は同じでも、預け先を変えることでお金が増えやすくなり、自分のために使えるお金の幅も広がります。

 ネット銀行はパソコンやスマートフォンから口座開設をして、入出金はコンビニなどのATMでできます。ATMの利用手数料や振込手数料が一部、またはすべて無料になるところもありますので、手数料の出費を節約するのにも有効ですよ。

運用をして税金も安くなる「確定拠出年金」

 「貯蓄」だけでなく、「投資」にもチャレンジしたい方は、株式や債券、投資信託等を買うこともできます。ですが、初心者の方がいきなり買うのはちょっと怖いかもしれません。そこでおすすめなのが「確定拠出年金」という制度を使うことです。

 確定拠出年金は、国の公的年金の上乗せ制度の一つです。毎月、一定額を積み立てると同時に金融商品を買って運用します。運用できる商品は、制度への加入のしかたなどによって異なりますが、一般的には定期預金、積立型の保険、投資信託を合わせて20本前後から選べます。

 定期預金は銀行で、保険は保険会社で、投資信託は証券会社や銀行など各金融機関で買うこともできます。しかしこれを確定拠出年金で運用すると、税の優遇を受けられるのが大きなメリットです。

利益が出なくても税の優遇を受けられる

 確定拠出年金で受けられる税の優遇は主に三つあります。一つ目は、積み立てた金額に応じて所得税と住民税が軽減されること。積み立てた金額が年末調整で「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になります。例えば年収400万円の会社員の場合、月1万円を積み立てると年間12万円に対して所得税10%分、住民税10%の、合わせて2万4000円の節税効果があります。これが確定拠出年金に掛金を積み立てるだけで適用されるのはうれしいポイントです※2。

 運用で利益が出たら、そこでも優遇されます。これが二つ目のポイントです。確定拠出年金の制度を通して運用した投資信託が値上がりしたとき、定期預金に利子がついたときなどは、通常差し引かれる20.315%の税金がかかりません。

 三つ目のポイントは、受け取るときに一定額までは税金がかからないか、少額で済むことです。確定拠出年金で積み立てて運用した結果は60歳以降に受け取りますが、このとき、「公的年金等控除」や「退職所得控除」という所得税の控除を受けられるためです。

※2 会社員が「企業型」で積み立てる掛金のうち、会社負担分は所得控除の対象になりません。会社が個人へ給与として支給する前に、確定拠出年金の口座に直接お金を入金するため、もともと所得税の対象にならないためです。

確定拠出年金に加入するには

 確定拠出年金には、会社員がお勤め先を通して加入する「企業型」と、自営業者などが金融機関を通して加入する「個人型」があります。企業型は、退職金制度の一つとして会社が定めた金額で運用するのが基本ですが、会社によってはさらに自分で掛金を上乗せできる、あるいは給料の一部を掛金にできるところもあります。企業型の利用方法について詳しくは、お勤め先にご確認ください。

 これに対して、自分で銀行、証券会社、保険会社などの金融機関に行って口座開設をして運用するのが「個人型」です。「iDeCo(イデコ)」とも呼ばれます。もともとは退職金制度のない自営業の方などに向けた制度でしたが、今年から原則としてすべての人が利用できるようになりました。会社員の場合は会社に届け出が必要ですが、退職金とは別に自分でお金を積み立てて運用できます。会社の企業年金制度の違いに応じて、月に1万2000円〜2万3000円まで積み立てることができます。

 このように、初心者の方でもチャレンジしやすい運用の方法はいくつかあります。ただ節約をしてお金を貯めるだけではなく、自分が頑張ったぶん、お金にも頑張って増えてもらうしくみを作れたら、きっと気持ちにもゆとりが生まれるはずですよ。

文/加藤梨里 イラスト/とげとげ。

Profile加藤梨里(かとう・りり)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者) マネーステップオフィス株式会社代表
保険会社、銀行、FP会社を経て独立開業。家計、保険などお金のセミナー、執筆、相談を行う。働く女性のライフプランと健康にも関心があり、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任助教も務める。監修を担当した最新刊は『ガッツリ貯まる貯金レシピ』、『年金世代のしあわせ家計簿』
マネーステップオフィス株式会社:http://moneystep.co/