人生は選択の連続です。たった一つの選択が、その後の人生を大きく左右することも。今回は、私たちがつい引かれてしまう「3つの選択」について、お金のプロであるセゾン投信社長の中野晴啓さんにインタビューを敢行しました。「専業主婦」「宝くじ」に続いて、最終回は読者にも大人気の「ふるさと納税」についてお聞きしました。聞き手は、働く女性のマネー事情に詳しいFPの高山一恵さんです。

「専業主婦という願望 手を出してはいけないその理由」(8月2日公開)
「宝くじで3億円当選 強運をつかんだ派遣社員のその後」(8月4日公開)
「ふるさと納税 返礼品目当ての『寄付』が非難される理由」(この記事)

「返礼品目当ての寄付は本末転倒な行為」

高山さん(以下、敬称略):第1回で「専業主婦」、第2回で「宝くじ」についてお聞きしましたが、最後は、「ふるさと納税」についてお聞きしたいと思います。ふるさと納税については、賛否両論あり、物議を醸しているテーマだと思いますが、中野さんはどう思われますか?

中野さん(以下、敬称略):僕は、ふるさと納税には疑問を感じますね。そもそも、ふるさと納税は、自治体間格差を是正するために、自分の生まれ故郷や愛着のある土地に寄付するのが趣旨だったはず。なのに、返礼品ばかりが注目されて、本来の趣旨を台無しにしてしまった。

高山:ここ数年の返礼品の盛り上がりはすごいものがありますね。最近、各自治体に向けて、総務省から返礼品の規制についてお達しがありましたね。

中野:ふるさと納税って「納税」という言葉は使っていますが、実際は「寄付」じゃないですか。寄付なのに、リターンを求めるのはおかしいですよね。もちろん、誰しも「寄付をしていいことをした」という、「自己満足」というリターンは求めているかもしれません。でも、寄付したお礼に、高級和牛やフルーツなど、品物の見返りを求めるのは本当におかしなことです。

高山:自治体によっては、明確な意思のある寄付金の使い方をしているところもありますよね。例えば、北海道のある自治体では返礼品代わりに寄付金を「原発を再稼働させない」ことに使ったり、熊本地震のときも、寄付金が災害支援に使われたりしました。ヤクルトレディーによる高齢者の「見守り活動」を返礼品とした栃木県小山市の取り組みも話題になりましたよね。

中野:僕もこういう例で、ふるさと納税が使われるのは意義があると思います。

損得で行動せず、社会への貢献を考えてみよう

中野:そもそも日本人はケチで、純粋に寄付する風習がないんですよね。日本人が年間どれくらい寄付しているか知っていますか?

高山:それ、調べたことあります。総務省の寄付に関するデータによると、日本人の1世帯当たりの平均寄付額は2000円〜3000円くらいだそうですね。

中野:そうですよ。1年間にたった2000円〜3000円ですよ。アメリカのある団体が調べたところによると、アメリカ人の1世帯当たりの平均寄付額は19万円だそうですよ。

高山:規模が全然違いますね。

中野:マイクロソフトの創業者・ビル・ゲイツやアメリカの一流のビジネスマンを見ると、ものすごい金額を寄付していますよ。寄付という行為は、社会に対する感謝やお礼です。日本人は、権利ばかりを主張して、社会に対するお礼や感謝の気持ちが少ないんですよ。

高山:確かに、自分にとって損か得かに敏感な人は多いけど、社会全体のことを考えて行動する人は少ない気がします。

中野:多くの日本人は、自分に与えてもらうことばかりを考えて、社会に対しての貢献や感謝の気持ちが薄いんですね。専業主婦の回でも話しましたけど、「Give」ではなく「Take」ばかりを求めるのは、みっともないことです。

物事を「お得」の軸だけで判断すると危険

高山:アメリカ人と日本人の社会に対する姿勢の違いが、寄付金額の違いに表れているんですね。

中野:寄付もそうですが、アメリカ人と日本人の資産構成にも違いが大きく出ていますよね。多くのアメリカ人は、長期で積立投資とかをやっているんですよ。それに、資産の半分以上は、投資商品で運用しています。一方、日本人はどうですか? あれだけ税制上のメリットをうたっているのに、iDeCo(個人型確定拠出年金)にもなかなか加入しない人が多い。

高山:確かにそうですね。

中野:アメリカ人がなぜ、投資をしているか。もちろん、お金を増やしたいということもあるでしょうけど、投資をすることで、経済が循環し、結果的に社会貢献につながることが分かっているからなんですよ。日本人はどうかというと、資産のほとんどは、預貯金じゃないですか。これは、自分の手元にただ抱え込んでいるだけで、経済の発展にもつながらないし、社会貢献にもなりませんよ。

高山:自分のお得ばかりを追求すると、視野が狭くなりますね。

中野:物事を判断するときに「お得」基準を持ち続けると、本質を見失います。そもそも寄付するのにお得じゃないとダメなんて、考え方として下品過ぎます。

制度の本質を見極めて、真の社会的責任を果たそう

高山:まとめると、寄付にはリターンを求めず、純粋に社会貢献として行うことが大切ということですね。

中野:そうですね。投資にお金を投じる場合には、ファイナンシャルリターンをしっかり得るべきだと思います。でも、寄付は先ほどもお話したように、自己満足的な、エモーショナルなリターンは求めてもよいですが、ファイナンシャルリターンを求めるべきではありません。ふるさと納税もみんなが返礼品を求めることで、過熱してしまい、結果的にせっかく集まった寄付金の多くが返礼品に使われることになってしまった。

高山:世の中でお得といわれている制度の仕組みを自分自身でよく理解して、その上で活用の仕方を判断することが大切ということですね。

中野:そうですね。仕組みがきちんと理解できれば、ふるさと納税に限らず、どの制度も正しい使い方ができるはず。本質をしっかり見極めて、大人の人間として、社会的使命をしっかり果たしてほしいですね。

文/高山一恵 写真/PIXTA