あなたの周りにはいないでしょうか。仕事の能力もある。周りへの気遣いもできる。有能な人材なはずなのに、いつも損な役回りばかり押し付けられている人が。そういった人たちを「いい人」と名付け、「いい人」から「デキる人」になる後押しをする連載、スタートです。

あなたは応援される価値がある

 はじめまして。今回から、この連載を担当させていただくキャサリン門田です。

 ほんの少し「モノの見方」を変えるだけで、自分を取り巻く世界は、今までよりずっと居心地よく快適な世界へと変わっていく。職場でのストレスは減り、仕事の効率が高まり、何より心楽しく仕事ができるようになる。そんな方法や考え方を、毎回お伝えしていきます。

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 あなたの周りには、いないでしょうか。仕事の能力が高く、誠実。小さなことにもよく気が付いて、周囲の人をフォローすることも忘れない。でも、そんな自分自身の有能さをうまく表現できずに、つい損な役回りばかりを押し付けられてしまう「いい人」が。

 片や、次から次へと舞い込んだ仕事を仕上げ、上司や同僚からも一目置かれ、長時間の残業もせず華麗に定時で退社するような「デキる人」はいませんか?

 前者と後者、その違いは何でしょうか。もしかしたら、あなたは前者のタイプになっていたりしませんか? この連載では、そんな「いい人」から「デキる人」へとステップアップするためのノウハウをお伝えしていきます。

 第1回は、職場にいる人たちを分類してみることから始めましょう。

 縦軸は自己アピール力。自分のことが好きで、自分の能力や魅力を周囲の人にアピールすることが得意かどうかを表します。

 横軸は業務スキル。その職場で期待される仕事を、正確にキッチリやり遂げる力です。この能力が高いほど、周囲の人の期待に応えることができるので、お役立ち度ともいえます。

 この2軸で分けると、およそ4つのタイプに分けることができます。それでは一つずつ見ていきましょう。

(1)困ったちゃん

 大して仕事ができるわけではないのに、「自分は有能だ」「自分はスゴい人だ」と思い込み、根拠のない自信という勘違いをしているタイプです。

 このタイプは、とにかく目立ちたい。できもしないことを「やります!」「できます!」と言って、勝手に仕事を引き受けてくる。周囲の迷惑など顧みることなく、スタンドプレーに走ってしまいます。

 そして、いざ仕事を始めると、思慮が足りないため、たちまちトラブルとなってしまう。彼らの辞書に「地道にコツコツ」「真面目に責任を持って」などという言葉はなく、面倒臭くなると、すぐに放り出してしまいます。

 彼らに加害者意識はなく、迷惑をかけているという自覚はありません。ですから、性懲りもなく、またトラブルを生み出すことも。

(2)デキる人

 頼まれた仕事を短期間で鮮やかに仕上げ、次々に成果を出していく人たち。本人は自己アピールしようというつもりはなく、「できました」と報告するだけ。それなのに、その報告内容が確たる実績なので、上司や同僚から「スゴい!」と高く評価されています。

 そのため、次から次へ「オイシイ仕事」を引き寄せる。職場の花形、スター社員です。どんな企業にも一定数いるのではないでしょうか。

(3)発展途上人

 新入社員や新しい部署に移ったばかりの大半は、ここから始ります。仕事の要領や周囲との関係がまだ十分に築けていないので、先輩や同僚を頼りにしながら仕事を進める人たちを指します。

 本人に「まだ慣れていない」「十分なパフォーマンスを出せていない」という引け目があるので、謙虚に振る舞うことが多いでしょう。

(4)いい人

 上司から指示されたことは、真面目に何が何でもやり遂げる。そのため、上司からは完全に当てにされている貴重な戦力です。

 さらに、小さなことにもよく気が付くので、同僚や後輩で困った人を見ると、ついつい手助けしてしまう。それなのに、自分が困っていても、他の人に助けは求められない。責任感や正義感の強さゆえ、なぜか面倒臭い仕事を拾いがちです。

 当然、担当する仕事量は増えていきます。いつの間にか、「どうして、私が?」と思うようなことまで引き受けています。疲れは蓄積され、ストレスも募る……。

 前ページ(1)の困ったちゃんが放り出した仕事を拾い、顧客のため、会社のために尽くすのはこの「いい人」たちです。ただでさえ仕事を大量に抱え込んでいる「いい人」たちに負担がかかり、ストレスはさらに増えていきます。

 さて、あなたはどのタイプに分類されましたか?

日本は「いい人」だらけ

 実は、典型的な日本企業の職場には「いい人」が多いのです。日本企業の多くは、このタイプの頑張りのおかげでなんとかなっていて、いわば日本経済を支えている貴重な人材と言えるでしょう。

 ですから私は、職場の「いい人」が大好きです。応援したい。「いい人」である人たちには、応援される価値があることを知ってほしいのです。

 ただ、一つ問題があります。それは、「いい人」たちが抱えるストレス。

 あなたも、職場でこんなふうに思ったことはないでしょうか?「どうして私が?」「なぜ、そんなことまでしなきゃいけないの?」と。

 本来、職場のマネジメントが正しく機能していれば、特定の個人にしわ寄せがいくような事態にはなりません。定時を過ぎてもなお仕事が終わらないという状況そのものがおかしいのです。

 それなのに「いい人」たちは、責任感の強さから「何とかしなきゃ」と思って頑張ってしまう。頑張ったところで、給料は大して上がらない。これでは疲れや消耗感、虚無感、怒り、ストレスがたまらないわけがありません。

 現在、働く人々をサポートするキャリア支援をしている私も、かつて会社員だった頃、この「いい人」の典型だったことがありました。

朝から晩まで死ぬことばかり考えた

 顧客はわがままを言い放題。NOが言えず、赤字を承知で仕事を引き受けてくる情けない営業。日和見主義で信用ならぬパワハラ上司。先輩たちは長期出張でいつも不在。頼りになる人はいない……。

 そんな状況で案件を処理しているうちに、体力と忍耐力が限界を超え、ついにドクターストップが出てしまいました。長期病欠の間は、朝から晩まで死ぬことばかり考える日々。涙は枯れ果て希望の光は見えず、暗闇の生き地獄をさまよいました。

 しかし、そんなある日、地獄の底で宝を拾うことになります。心理学とリーダーシップ理論の本を参考に、自分で自分をカウンセリングしてみたら、心身共にきれいに治ってしまったのです。

 そして職場復帰した瞬間から、リベンジが始まりました。

 役員あてに提出した1通の企画書がきっかけで、新しい部署へ異動。そこでは休職期間中に学んだコツを用いて、上司を説得し、関連部署を巻き込んでプロジェクトを発足しました。私はプロジェクトリーダーとして、今までに我慢していたことを存分に試してみたのです。

 そして、わずか半年で、社長賞と功績賞をダブル受賞。最短期間で管理職に昇進し、いつの間にか私は、「いい人」から「デキる人」にポジション替えしていました。まさにキャリアのV字回復を果たしたのです。

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 この経験から、学んだことがあります。

 人は誰でも、「強く望むなら、短期間のうちに自分を変えることができる」と。こうして私は、働く人々をサポートするキャリア支援の仕事を始めることに至ったわけです。

 「頑張っている割に、ちっとも報われない」「なんだか損をしている気がする」と感じている、そこのあなた! 「いい人」を脱却して「デキる人」に変身してみませんか?

 あなたが強く望むなら、それは実現可能です。自分を変えることに、魔法も奇跡もいらない。特別な才能ですら、不要なんです。

 何をどうやったらいいかって? それを次回から、一つずつお伝えしていきましょう。

文/キャサリン門田 イラスト/六角橋ミカ

Profileキャサリン門田
キャリア・イノベーション協会代表理事、経営コンサルタント・キャリアカウンセラー。本業である経営コンサルタント業務のかたわら、多くの人のお悩み相談に乗っている。心理学、経営戦略理論を駆使したアドバイスは、キャリア、お金、人間関係、恋愛・結婚・離婚、天職など幅広い分野をカバーする。今秋から魂が輝く生き方を指南する「薔薇色仕事塾」「天命IDEA塾」を主催。