2022年4月から育児・介護休業法の改正により、働く男性も育児休業を取りやすくなることが期待されています。それに先立ち、すでに育休を取得して子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」をお送りします。

「パパが育休取らない選択肢はなかった」林家

今回のパパ
林 幸平さん/32歳/編集者(webメディア)

●ご家族
妻:林みなみさん/32歳/臨床心理士(社会福祉法人)
長男:幸太くん/2歳
(※お名前はすべて仮名です)

●林家の育休
第一子誕生(2019年6月)
妻:2019年4〜8月(産休) ⇒ 翌年5月の保育園入園まで(育休)
夫:2019年6月〜1月あたままで(半年間)

林幸平さんのタイムスケジュール

「ワンオペ育児というのは非常に負担が大きいようだ」とうっすら知っていた

リモート会議中に幸太くんがやってくることも

ーーご出産も育休取得も、コロナ禍より前のことだったんですね。立ち会い出産でしたか?

林さん 立ち会い出産でした。妻は陣痛の痛みが三日間続いて壮絶でしたね。当時の日記を見返すと、だいぶ忘れているなあと思いましたが、よく言われますけど、奥さんのあんな顔初めて見たという感じでしたね。つらそうでした。

ーー陣痛中、パートナーとしてどんなことをしてあげましたか?

林さん 定番ですが、体をさすってあげたりとか。とにかく隣にいましたね。あと周期的にやってくる痛みの合間に、一緒にお笑いの動画を見ていました。千鳥の動画を見て笑った瞬間にバチッと破水したんです。

ーー千鳥で破水!(笑)

林さん なかなか出てこなかったので、促進剤を使ったりしてようやく産まれました。陣痛の時間も長かったですし、妻はかなりのダメージを負っていて、産後3ヶ月くらいは下半身の痛みがつらいようでした。分娩の痛みは男には絶対わからないとよく言いますけど、無事に出産が終わってからもこんなにずっとダメージが続くんだって知りました。また、産後はおっぱいの痛みもあるじゃないですか。これは大変だぞと思いましたね。

ーー個人差はあるものの、命の誕生というのは本当に壮絶なものですよね。林さんご自身が出産と同時に育休を取ろうと思ったのは、どういうきっかけがあったのですか?

林さん もともと、ワンオペ育児というのは非常に負担が大きいようだ、ということは、すでに子育てしている人の話を聞いたりTwitterやwebの記事で見たりする中で、知っていて。だから旦那が産後も残業したり普通に働いている場合、奥さんは産後のダメージを負っていてつらすぎるから、里帰り出産なんかもするんだと。ただ、僕ら夫婦はそれぞれの両親が共働きで今も現役なので、里帰りという選択肢はまずなかった。それに、僕も参加したいというか……一番大変な時期に、自分もそこにいたいなと思ったんです。どれほど痛みがひどいとか具体的に何をやるとかは全然わかっていなかったけれど、そこに自分はいたほうがいいんだろうなとなんとなく思っていましたね。

ーー最初から「半年取ろう」と決めていたんですか?

林さん いえ、最初はヒヨっちゃって、職場で育休の相談をするときに「一ヶ月くらいですかね」と言ったんです。そしたら「一ヶ月でいいんですか? 半年くらいとるのかと思ってました」「自分も子ども生まれたら絶対育休取りたいと思ってるんで、その先駆けになってくださいよ!」と逆に人事からプッシュされまして(笑)。それで、半年も仕事を休んで家族との時間に専念できるなら、それはそうしたいなあと思って、「じゃ半年にします!」って申請しました。

ーー職場の雰囲気も良かったんですね。

林さん 社員30人くらいのベンチャーで、男女半々くらいの若い会社だというのも大きかったかもしれません。でも、その時点で女性も含めてまだ一人も育休取得者がいなかったので、僕が初めてになりました。その後、また育休を取った男性社員がいます。

産後の二週間は総力戦で「本当に霧が晴れるのか?」

赤ちゃん時代にお気に入りだった歯固めバナナとラッパ。もうすでに懐かしい記憶に

ーー無事にお子さんが誕生して、夫婦二人での子育てスタート。そのころの記憶はどうですか?

林さん 最初の頃は大変すぎて、記憶から抹消されているようで(笑)。日記を読み直しました。最初の二週間が特にキツかったですねえ。おっぱいの分泌量も、子どもの寝起きも安定しないしで、「本当にこの霧が晴れるんだろうか?」という会話を夫婦で毎日していたという記録が残っています。

ーー霧はいつごろ晴れましたか?

林さん それが二週間〜一ヶ月くらいでちゃんと晴れたんですよね。妻は乳房ケア外来へ行って、母乳がちゃんと分泌されていることを確認し、乳房マッサージのやり方も教えてもらったことで、だいぶ気が楽になったみたいでした。子どもの生活リズムも、だんだん作れていきました。
最初の一ヶ月は僕もイライラしてることが多くて……やっぱりお互い思うように眠れないし、疲れてますよね。でも僕は、妻の方がきっと大変なのだから自分は弱音というか愚痴を吐いてはいけないと思っていて。そのうえで、妻にもっと頼ってほしいと思っていたんです。でもあとから聞いたところによると、妻は妻で「自分もやらなきゃ、全部夫にやってもらったら申し訳ない」という感じだったらしいです。

ーー2人とも、いっぱいいっぱいだったんですね。

林さん そのころは夜中一時間半おきぐらいに子どもが泣いて、夫婦どちらも起きて対応していたんですよね。

ーー交代とかではなく?

林さん そうなんです。おっぱいを赤ちゃんが飲んでいるあいだに、僕は乳房のマッサージをして出をよくする係というか……機械のようにひたすらマッサージをして腱鞘炎にもなったんですけれども。そんなこんなで、最初の一ヶ月は1人じゃ絶対無理だと思いましたね。これ一人でやってる人いるの!? って。

ーー本当にそうですよね。となると林さんは、生まれてすぐの時期に夫婦一緒に育休を取るのがおすすめですか?

林さん はい、最初の二週間は絶対! できたら一ヶ月、いや三ヶ月くらいは。小分けにしてもいいのかもしれませんが、産後すぐの時期は絶対、奥さんにワンオペさせたらダメですね。
僕自身がワンオペで沐浴させていたときに、ヒヤリとしたこともありました。まだ生後数日で、僕も沐浴に慣れていなくてドキドキしながらやっていたんですけど、妻はまだ体のダメージもあるしリビングで休憩してて。そうしたらちょっとお湯の温度が低すぎたのか、急に子どもがぶるぶる震えて肌の色が白くなって……「なんだこれはヤバイヤバイ」とめちゃくちゃ焦りました。
妻も同じ家の中にいましたし、このときは事なきを得たから良かったですが、これ本当にたった一人だったらパニックだっただろうなと。それで、もし自分がワンオペ育児ママだったとして、同じことが起きたらどれだけ不安だったかと思ったんですね。しかも仕事を終えて帰宅した夫に伝えても、この不安な気持ちはたぶん深くは理解してもらえないじゃないですか。

ーー「大変だったね」で終わってしまう。

林さん 僕自身も、そこにいなかったら思いまでは共有できないと思いますし、「大変そうだな」とどこか他人事になってしまうかもしれません。

ーー子育てしていると、自分の子どもの成長とか健康とかが自分事になりますよね。

林さん そうですね。そういえば、タイミング的に保活も夫婦で一緒にできたんです。保育園見学をいっぱい回って、それぞれの園のメリットデメリットを表にしてまとめ、比較しながら「ここを第一志望にすれば受かりやすいかも」等々、戦略を練りました。もし、妻だけ見学して自分が見てなかったら、「僕にはわかんないから決めちゃっていいよ」と任せてしまったかも。だから育休を取ったことで、あらゆる意味で、育児が自分事になりましたね。

ごはんをひっくり返されてつらい

自家製のカブの糠漬け。これは幸太くんも大好きで、切ったそばからパクリと食べてました!

ーー今はお子さんが2歳に。もう「赤ちゃん」ではないですね。

林さん 語彙も増えてきて、コミュニケーションが取れるようになってきてから、すごい楽しいですね。赤ちゃんの頃は一方通行なので、快不快を泣くことでしか表せませんけど、今は「もうこれ要らない」とか言ってくれるので、そこはラクです(笑)。ただ、イヤイヤ期というかイライラすることはありますけど……最近だとごはんを食べてくれないことが一番しんどいです。

ーーありますね、ごはん食べない問題。

林さん 我が家では基本、自分が食事作りの担当なのですが、せっかく作ったごはんを食べてくれないのは一番ショックですね。作ったごはんを食べてもらえないってこんなにつらいんだ、と。挙句、茶碗をひっくり返したり、床にたたきつけられたりしますしね。そのぶん、食べてくれたらすごいうれしいですけど。なので、世の皆さんが工夫を凝らしているように、苦手な食材は細かく切ってハンバーグに入れてみるとか、試行錯誤しています。

ーーお料理はもともとお好きなんですか?

林さん 得意というわけではないですが、苦にならないんです。気分転換にもなります。スーパーの野菜を見ながら献立を考えるのも結構楽しいんですね。図書館でいろんなレシピ本を借りてきて「今日これ作ろう」と楽しんでやったりもしてます。逆に、妻は料理は好きではなくて苦痛らしいんですが、育児は得意。妻は仕事でも毎日子どもたちを相手にしていますが、育児の方が全然苦にならないと言います。

ーー育休中と職場復帰した現在とでは、家事の分担は変わりましたか?

林さん 育休のあいだは全部の家事を自分がやることにしていましたが、今はそんなに厳密に分けてはいないですね。朝は妻のほうが出社時間が早く、僕のほうがゆっくりできるので、洗濯したりお風呂掃除したりしています。そういえば、掃除ではルンバを買ったのですが、子どもがルンバを怖がっていて、動き出すとこの世の終わりかというぐらい泣いて叫びます(苦笑)。

ーールンバ、悪い子じゃないんですけどね。仲良くできるといいですね。ご夫婦とも、残業はほぼないのですか?

林さん 僕のほうは、そんなに厳密に勤務時間を区切らなければいけない職種でもないので、子どもが寝てから作業したり週末に家でPCを開くこともあります。ただ、めちゃくちゃ多いわけではないですし、リモートワークも可能なので、ゆるい方なのかなと思います。
妻は必ず出社しなければならない職種で、毎日8時半から17時半まではきっちり。残業することもありますし、そういうときは僕が寝かしつけまでやりますよ。
そう、最近の課題は寝かしつけなんです。

ーーなかなか寝てくれないですか?

林さん おっぱいさえくわえていれば、寝るんです。でも、おっぱいがないと寝ないんです(苦笑)。

ーーああ〜……。

林さん 背中をトントンしたところで寝ないので、奥さんが夜遅くなる日は、子どもも僕も力尽きて寝る、というか。抱っこ紐で抱いた状態で立って揺らし、子守歌をエンドレスで歌って「ああ今日は32回目で寝てくれた」とかですね。ただ、最近は体も大きくなってきましたし、もう抱っこ紐をイヤがるので、部屋を暗くして眠くなるまでサドンデスです。

ーー親の体力も削られますね。子どもは保育園でお昼寝もしていますし。

林さん 保育園のお迎えで「今日はあんまり寝てないんです」と言われると「やったあ!」と思いますね(笑)。「今日は3時間寝ちゃいました〜」と言われたら、覚悟しますし。おっぱいがある日はともかく。

ーーおっぱいをあげながらママは一緒に寝ちゃいます?

林さん 大体、疲れ果てて寝落ちしちゃいますね。そのあいだに僕が台所やリビングなどの後片付けをします。そうそう、自分が育休を取って良かったことのひとつに、「お互い全部できるようになった」ことがあげられます。家事も育児も全部できるので、どちらかが体調を崩したり、あるいは週末出かけたりしてワンオペになっても大丈夫なんです。緊急事態にも対応できるという自信が持てました。

子育てを2人でやったら、2人ともラクになれる

この日はあいにくの雨。室内でもボールプールを広げて活発に遊んでいました

ーー育休期間を経て、夫婦の関係に変化はありましたか?

林さん もともと仲は良いものの、とはいえこんなに何ヶ月も一日中一緒にいるってことはなかったので、“阿吽の呼吸レベル”が上がった感じはしますね。先ほどの「気持ちの共有」の話とかぶるんですけど、もし育休がなくて普通に半年間仕事に行ってたら、そのあいだに妻が家で感じていた痛みや苦労がわからなかっただろうなと思うんです。表面上は「大丈夫?」と声をかけていたと思いますけど、実感がないので本当のところはわからなかったんじゃないでしょうか。

ーーやっぱり男性の育休って大事だなあと思います。あるとないとで、夫婦関係が違ってきますね。

林さん でも、現状で育休をただ義務化するのも大賛成とは言えなくて。今の状況で育休を取る男性はそもそも育児しようという意識がある人たちなので、いい方向にいくと思うんです。これがもし義務化されたら、「ただ家にいるだけ」の人も出てきて、関係が悪化する可能性もありますよね。ただ一律で義務化するのもちょっとなぁ……と。
また、自分は幸いにして職場で「育休なんて、ただ休んでるだけでしょ」とか嫌なことを言われたり、降格されたりといった目には遭いませんでしたが、仕事を最優先にしないと嫌がらせされるような会社だったら、男性の育休取得は大変ですよね。まずは、職場の中で育休を取りやすい環境を、上の人からつくってくれることが大切だと思います。

ーー職場に戻って居場所がないとか、プロジェクトを外されるとか……出産を経てバリバリ働きたい女性でも、いまだにそういうことがないとは言えません。社会側の課題はまだまだありますね。

林さん それとは別に、男性の育休取得を推進するうえでは、「育児ってこんなに大変だから、ママ一人じゃ無理だよ!」というアプローチだけでなく、「二人でやると負担が軽減されるから、すごく楽しいこともあるよ!」といったポジティブな話もあったほうがいいんじゃないかなと思います。
実際、僕らも育休三ヶ月目あたりからだいぶラクになってきたんですよ。もともと大の旅行好き夫婦なので、首が据わった頃からあちこち子連れで旅をしてみました。

ーーおお、子連れ旅行ですか!

林さん まず僕の実家がある関西に、子どもの顔を見せに行きました。寝返りができるようになった頃で、二泊三日の旅程でしたが、「これは意外とイケるな」と。2019年は新型コロナウイルスの懸念もまだなかったですし、育休が終わるまでに行きたいところに行ってみようと夫婦で意見が一致しました。
それで次に行ったのが、九州です。妻が仕事に関係する心理学の学会が福岡であるので行きたいと言って、「じゃあ一緒に行こう」と、四泊五日で出かけました。妻が学会に出ているあいだ、僕は息子と二人で観光をして。最後に、大分の旅館へも行って、満喫しました。
旅好きな親のワガママ的な要素が強いので、子どもは覚えてないでしょうけど……だいぶリフレッシュできて良かったですね。

ーー繁忙期を避けて、閑散期の平日に行けるのも利点ですよね。

林さん はい。仕上げに、一週間の海外旅行も行きました! 飛行機に10時間は乗るので、フライトで子どもが泣かないかが一番心配でしたけど、ぐっすり眠ってくれました。旅先の国で驚いたのは、道行く人たちが子どもに本当にフレンドリーに接してくれることです。子連れの旅行者というだけで、電車で席をゆずってくれるし、話しかけてヨシヨシしてくれるし、構ってくれるんですよ。
ただ、海外旅行だと子どもの水とか食べ物とかも気を遣うじゃないですか。僕らはギリギリ離乳食を始める前で、完全母乳だったので大丈夫だったのですが、離乳食が始まってからだったらもう行けなかったね、とあとで妻と話しました。

ーーコロナ前の時期に大好きな旅を楽しめて良かったですよね。でも旅行って、精神的な余裕もないと楽しめないと思うんです。生後三〜四ヶ月ぐらいで、すごくラクになった感じなんですか?

林さん 本質的には、育児は二人以上でやったほうがいいってことなんだと思います。これがママもしくはパパ一人でやるとなると、余裕なんて全然なかったんじゃないかなと。僕は育休中、夕方にジムへ行ったり読書したりもできましたが、ママさん一人だったらそんな時間作れない。もちろんパパ一人でも作れない。二人でやってるからこそ、互いの息抜きの一人時間も捻出できるんですよ。

ーー二人でやるからこそ、二人とも少しずつ余裕を持てるんですね。

林さん 子どもが生まれる前は、育児ってとにかく大変で、自分の時間など全く取れないイメージでした。確かにおおむねそうなんですが、大変な時間ばかりかと言うと、そうでもない。なにしろ夫婦そろって育休を取っていれば大人の手がふたつあるわけで、一人でやるよりずっと負担は軽減される。しんどいよりはラクになったほうがずっといいに決まっているじゃないですか。
仕事を休んで育児している以上は大変じゃないといけないとか、遊んでたり楽しかったりしたら会社に申し訳ないという思考になるかもしれないけれど、男性の育休取得意欲を高めるという意味ではポジティブで楽しいイメージももっと広められたらいいなと思いますね。

(取材・文:マイナビ子育て編集部、撮影:尾藤能暢、イラスト:すみれ)