「病院を受診したのに子どもの具合がよくならない。あの先生の言っていることは正しいのだろうかーー」そんなふうに医療者側へ不信感を抱いたことはありませんか?医療者側と患者側(保護者)の間には誤解が生じやすく、トラブルもしばしば起こるようです。なぜそうなってしまうのか、どう解消したらいいのかを小児科医の森戸先生に聞きました。

過度の期待が誤解のもとに……

(※写真はイメージです)

インターネットでもリアルでも、医療に関する保護者の方々の経験談を見たり聞いたりしていて思うのが、ときに誤解が生じているということです。そこで、今回はよくある誤解について解説していこうと思います。

まずもっとも多いのは、医療に対する期待が大きすぎる例です。

「小児科で診てもらって、薬を飲んだのにすぐよくならない」

これは本当によく聞く声です。症状を抑える「対症療法」しかない病気も多く、その場合は自然に治癒するのを待つしかありません。小児科にかかっただけではよくなりませんし、薬を飲んだからといってすぐには治らないのです。薬には副作用のリスクもあるので、本当に必要な時に必要な分だけ処方されるのが基本だと知っておいてください。

たとえば、風邪をひいて咳や下痢の症状があるとします。鎮咳薬や整腸剤はありますが、飲んだらすぐに症状がなくなる、というわけではありません。また咳や下痢はウイルスや細菌を体外へ出すために起こるので、安易に止めるのはよくないのです。

子どもの口の周囲によだれかぶれがある場合、薬を塗るだけはよくなりません。よだれでかぶれているわけですから、濡れたタオルなどでこまめに拭いたうえでケアする必要があります。これは、おむつかぶれも同じことですね。

いずれにしても、すぐに劇的に効く診察や治療や薬はないと思っておきましょう。解熱剤なども急激に熱が上がっている時(病気の初期)にはさほど効かないことがありますし、たとえ効いたとしても時間が経てば再び熱が上がることもあります。

「ほしい薬がもらえない / 少量しかもらえない」

たまに患者さんの保護者の方から「〇〇という薬を2週間分ください」などと薬の種類と量の希望を言われることがあります。でも、ドラッグストアの市販薬ではなく処方薬なので、希望通りにお渡しすることはできません。適切な処方でないと危険な上、保険適用にならないためです。

量についても、初診の場合は様子をみるために少量しか出せないこともありますし、子どもの場合は成長によって体重が増えれば処方量が変わるため、長期処方をすることはあまりないでしょう。ただし、てんかんなどの持病の薬の場合は、医師と相談の上で長期処方が可能な場合もあります。

「検査をしてもらえないのはなぜ?」の誤解

(※写真はイメージです)

この他にも、よく誤解されることとしては、以下のような例があります。医療者としては意地悪でやっているわけではないので、ぜひ知っておいていただけたら助かります。

<検査をしてほしいのにしてくれない>

あらゆる検査は、医師が必要だと判断したときだけに行うことができます。なぜかというと、①あらゆる検査には過剰診断、痛みなどの害があるから、②保険適用なので条件をクリアしていないといけないから、③必ずしも必要ではないから、です。

たとえば、対症療法しかない風邪の場合、原因がライノウイルスでもエンテロウイルスでも対応は同じなので、特定する必要はありません。ですから、検査の希望を伝えるのは問題ありませんが、その通りにできないこともご承知おきください。

<登校登園許可証 / 治癒証明を出してくれない>

本来、学校保健安全法で出席停止期間が決まっている病気で、判断が難しい場合以外は、登園・登校許可証は本来は必要ありません。許可証のためだけに再受診するのも大変ですし、再受診による感染リスクもあるためです。

急性期の症状が治まっていて本人が元気で、出席停止期間も終わっていれば、登園・登校すればいいのです。園や学校が保護者に登校登園許可証や治癒証明書を求めないよう医師会を通して取り決めをしている市区町村もありますが、提出の必要がある場合は遠慮なく医師に相談してください。

ただ、いずれにしても便などからは2〜3週間ほどウイルスが出る病気は少なくなく、絶対にうつさないとは言い切れません。病気の完治までには非常に時間がかかることを知っておいてください。「治癒証明」はなかなかできないでしょう。

<夜間外来や救急外来を気軽に利用できない>

夜間外来や救急外来のキャパシティには限りがあります。本来、本当に猶予のない緊急の患者さんを診るためにあるので、症状が軽い場合は、翌朝や日中の受診をお願いします。休日や夜間に診療を行っているからといって、いつもの診療の休日版・夜版ではないのです。「いつもよそでもらっている軟膏を100gください」などというのは、日中にかかりつけで相談しましょう。

判断に迷う場合は、救急相談ダイヤルに連絡してみてください(※救急安心センター「♯7119」または地域ごとに定められた電話番号)。なお、救急外来は急場をしのぐためなので、薬も1〜2日分しか出ません。その後、日中に再受診したり、かかりつけ医を受診したりすることになるでしょう。

<マスク、予約時間指定など守るべきことが多い>

医療機関には、基本的に体調の悪い方がたくさん来られます。月齢が小さかったり基礎疾患を持っていたりするお子さんもいます。様々な感染症が広がる恐れがありますから、マスクをつけるようお願いします。また、予約時間を守っていただきたいのも、スムーズな診察のためであると同時に、できるだけ混雑を緩和し感染の拡大を防ぐためという側面があります。

「処方された薬を飲ませたくない」と思ったら伝えてほしい

(※写真はイメージです)

こうした医療者側と患者側との隔たりは、どうやって埋めたらいいのでしょうか。私は小児科医として、お子さんのために保護者の方々にも小児医療について知ってもらえると大変助かると思いますが、保護者の方々も仕事や家事、子育てに忙しいわけですから、そうもいかないですよね。

ですから、わからないことがあったら、ぜひ医師や看護師に率直に聞いてみてください。「どうして薬は数日分だけなんですか?」「水いぼの治癒証明ができないのはなぜですか?」など、思ったことを聞いてくださってかまいません。

たとえば、お子さんがインフルエンザにかかって受診したときに、「なんとなくよくわからないから抗インフルエンザ薬は飲ませたくない」と思ったけれど伝えずに処方を受け、やはり飲ませなかったとします。そして後日、「熱がなかなか下がらないから、どうにかしてほしい」と再受診されることがあります。

最初の受診時に「よくわからないから飲ませたくない」と不安を言ってもらえたら、抗インフルエンザ薬が発熱期間を1日弱短縮することをご説明でき、安心してもらえたかもしれません。抗インフルエンザ薬を服用する場合、発症後48時間以降になってしまうと、効果が乏しいのです。

同じように、お子さんの肌荒れに対してステロイドを処方された保護者が、疑問を感じて塗布せず「全然よくならないんです」と再受診したとしましょう。前回処方された薬を使っていないことを医療者側に伝えないと、この薬のままでは効果が薄いと判断され、前回より少し強いステロイドを処方されることになるかもしれません。これでは、なんのために受診しているのかわかりませんね。ぜひ疑問を口にして、コミュニケーションをとり、信頼関係を築いていきましょう。

ただ、医療者の中には、患者さんや保護者に対して上から目線だったり、特に非がないのに注意したり、自分の考えを押し付けたり、すぐ怒るので質問しづらかったりする人もいるでしょう。その場合は、かかりつけ医を変えてもいいと思います。

最後に、かかりつけ医はとても大事です。もしお子さんが急に大きな病気にかかったとします。大病院で治療を受け、あとは近くのかかりつけへ……となった場合、生育歴や病歴、家族歴をしっかり把握している医師がいることはとても心強いものです。特に6歳以下は1年に4回以上を目安に、同じ小児科で診察や健診・ワクチンを受けておきましょう。

森戸やすみ 先生
この記事の監修者
小児科医
森戸やすみ 先生

小児科専門医/どうかん山こどもクリニック院長。
一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都谷中のどうかん山こどもクリニック院長。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本の発表に意欲的に取り組んでいる。『子育てはだいたいで大丈夫 小児科医ママが今伝えたいこと! 』(内外出版社)、『祖父母手帳』(日本文芸社)など著書、監修多数。

連載
◆PRESIDENT Online/小児科医と考える「日本を子育てしやすい国にする方法」
◆東京すくすく/森戸やすみのメディカルトーク
◆月刊誌・母の友(福音館書店)/子どもの健康Q&A

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大西まお
この記事の執筆者
編集者・ライター
大西まお
出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な担当書に、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。
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