「5万人を子育て支援して見つけた しない育児」の著者で、12人のママでもある助産師HISKAKOさんにママが笑顔になれる考え方をうかがうインタビュー最終回です。今回は仕事と育児の両立の考え方をうかがいました。

Hisakomini

お話をしてくださった方
HISAKOさん
(助産師・12人の母)

仕事と育児は両立を目指さない

――仕事と子育てで忙しい働くママにも、アドバイスをお願いします。

HISAKO やっぱりね、育児もすごく大事だし、仕事も社会人として大事だし、ってみなさん思いますよね。それで、どっちも中途半端になって……って悩まれるんですけど、私は中途半端でいいと思う。どっちも中途半端でいいんです。これが子どもに全部やってあげられる状況だと、子どもに「こうして、ああして」「こうしないと」となって、子どもを追い詰めて自分も追い詰められるんだけど。仕事があると、子どものことでしんどくなったときに、仕事に逃げられるんですね。で、仕事でしんどくなったときに、家に帰ったら子どもに逃げられるんです。仕事が終わって子どもに会って、「あんたはほんまにかわいいなー、ママ元気になったわ!」ってなったり。そうやって逃げ道を作っておくという意味では、家庭人である自分と社会人である自分の2つの側面があった方がいいですね。だから、そもそも両立を目指すな、ということ。「どっちも中途半端でもう無理!」と思っても、気がついたら5年、10年経ちますから。

大事なのは「長さ」ではなく「密度」

――中途半端も誰もが経験することですし、気にしないということですね。

HISAKO あとはもうバランスで、専業主婦とはちがって子どもとふれあう時間は短くなるんですけど、子育てで大事なのは時間の長さじゃなくて密度なので。短い時間なんだけど、その短い時間をいかに使うか、なんです。だから無言で難しい顔して、早くご飯食べてお風呂入って早く出て……はやめましょう。

例えばお風呂の中で、「今日保育園でどんなことしたん? 歌うたったん? どんな歌? あ! お母さんもそれ知ってる。一緒に歌お! せーのっ!」といって、一緒に大熱唱するお風呂の時間。めっちゃ楽しいじゃないですか。帰りも無言でガーっと自転車こぐんじゃなくて、「今日保育園で誰と遊んだん?」って会話をしながら帰ってきたり。短くても使える時間をコミュニケーションの時間にかえる。それは5分でも10分でも、全身全霊で子供に向かう時間さえあれば、何も問題ないです。24時間子どもと一緒に同じ空間にいても、お互い全然別のことをやって気持ちがここにない状況だったら、別々の場所にいる方がいいくらいです。

仕事して保育園迎えに行って、「ママ〜!!」って子どもが走ってきたときの顔、かわいいですよね。母子分離の時間があるからこそ、子どもがかわいいって思えたり、限られた時間を大事に使えたりする。だから、働いていることって全然悪いことじゃないと思う。いかに限られた時間を子どもとの密度の濃い時間にするか、っていうところに尽きるので。

――親が働いていた方が、子育てにプラスになることがあるんですね。

HISAKO そうなんですよ。がんばらんでええ!「仕事で忙しかったから、今日は料理できひん、掃除できひん、ごめん!」これでいいんちゃうかなって。

仕事と育児、両立なんかせんでええよ。全部中途半端でいいって! 何かに一生懸命になっているお母さんの姿は子供たちも見てますし、それはそれで素敵なことやと思うしね。

新米ママは不安をさらけ出せる場所を作って

『5万組を子育て支援して見つけた しない育児』より

――書籍『しない育児』は大胆なタイトルですが、どんな思いを込めて書かれたのでしょうか。

HISAKO 育児書を見ると、「しなければならない」を書いている本はたくさんありますよね。例えばトイレトレーニングはこうしましょう、断乳はこうしましょう、離乳食はこうしましょう、などなど。育児書は「しましょう」という本ばかり。でもそれができないから苦しい思いをしたり、そこに子どもが当てはまらなくて辛くなったりするから。逆に「これはしなくてもいい」という100項目を作って、それを本にまとめたらどうか、ということで書きました。するべき100項目ではなく、しなくてもいい100項目の本です。「本当にこれやらないといけないのかな?」と迷ったら本をめくってもらえれば、だいたい悩んだことが載っていると思うので、気持ちが楽になると思います。

本に書いたことは私のYouTubeでも検索で出てくるんですが、動画はいろいろお話ししているので、時間が長いんですね。子育てをしながら、ずっとは見ていられないと思うんです。本はすごくコンパクトにまとまっているので、忙しいときにまず本で確認して「あ、いいんだ」と落ち着いてもらって、そのあと時間ができたときにYouTubeで詳細を見てもらうのがいいのかと。本はとにかくすぐ手にとって情報にアクセスできるので、お守りみたいにリビングとかに置いといてもらえるといいと思います。

――心強いお守りになりそうです!

世界が見えてくれば、不安は軽減される

――助産師としての今後の目標なども教えていただけますか?

HISAKO わたしが開設した「助産院ばぶばぶ」のミッションが、世界中の悩めるママを笑顔にすることなんです。コロナ禍になってオンラインで子育て相談を始めたら、毎日のように海外在住の日本人ママさんからも相談を受けるようになりました。そこで話してわかったことは、世界のどこにいっても、やっぱり日本人のママたちがかかえている悩みは共通、ということです。そこに国際結婚や国の文化のちがいが加わって、もっと孤独で必死になって子育てをしているママさんたちがいて。それを、ただ話すだけでなく、経験もしなくては解らないと思いました。そこで1カ月ほど前、ニューヨークに行って100人くらいの前で講演会をやってきました。そういうことを、別の国でもやっていって、そこで抱えているママたちの苦悩であったり、日本にいる自分がいかに恵まれているかの再確認であったりを、自分の目で実際に触れにいくことでやっていきたい。そうすれば、視野が広がって伝えられることも増えてくるので。聞きかじりの話でなく、自分が経験して伝えていきたいな、と思っています。

――世界中のママを笑顔にする、すばらしいミッションですね。最後に、読者に向けて一言お願いします。

HISAKO はじめての育児は、みんな不安です。やったことがないことは、わからないから。でも経験を積んでいくことで、その世界が見えるようになって、不安は軽減されていくから。知らないことを不安に思い続けるのが普通だから、不安にならない自分になろう、と思わないで。子育てが不安だ、嫌だ、疑問がいっぱい、わからない……そういう自分を、認めてしまうこと。

そして、しんどい自分をさらけ出せる場所を作ってほしいです。先輩ママとか、いろんな経験を積んでいる人がたくさんいらっしゃるわけだから。そういう人たちといっぱいつながって、自分がしんどいことを、「そんなん言ったら恥ずかしいかな?」じゃなくて、言ってほしい。みんなそこを通り越して年配者になったわけだから、理解してくれるし聞いてくれるはず。迷惑をかけることも気にしすぎないで。子どもでも大人でも、迷惑をかけないで生きている人なんていないんです。その分、何かしてもらったとき、ありがとうっていえる人になってもらいたいですね。「ごめんなさい」じゃなくて「ありがとう」が良いですね。ありがとうは魔法の言葉です。

――不安になるのは、当たり前。ダメな自分も認めてオープンになることで、新しい発見がありそうです。たくさんの勇気づけられる言葉をいただき、本当にありがとうございました。

(解説:HISAKO、取材・文:佐藤華奈子)

※画像はイメージです

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HISAKO
HISAKO
1974年生まれ。看護師・助産師資格取得後、総合病院、産婦人科クリニック勤務を経て2006年大阪市阿倍野に「助産院ばぶばぶ」開設。同院での母乳育児支援・育児相談を中心に、大阪市育児支援訪問・妊婦教室を15年にわたり担当。政府や自治体依頼による講演活動や、日本全国の幼小中高校、大学、各発達段階に合わせた教育現場における出張授業「いのちの授業(性教育授業)」を展開。毎日更新のブログは子育てバイブルとして1日5万人以上が愛読。プライベートでは1998年から2020年の間に12児を出産。2020年沖縄県うるま市に移住、助産院移転。 YouTube『【12人産んだ】助産師HISAKOの子育てチャンネル』を配信中(登録者数約53.2万人/2023年12月現在)。
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