小学校教諭として働くかたわら教員経験を描いた漫画がSNS上で話題になり、2022年からは妊娠と出産、子育ての日常を漫画にしてSNSに投稿してきたusaoさん。2023年10月にはその作品をまとめた『はじめましてあかちゃん 赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記』(幻冬舎コミックス)が出版され、ますます注目を集めています。

インタビュー連載(全3回)の初回となる本記事では、usaoさんに「漫画を描くことの意味」についてお伺いしました。

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お話をしてくださった方
usaoさん(漫画家)

「好きな絵で人を喜ばせたい」という思いがusaoとしての始まり

――まず最初に、漫画についてお聞かせください。

usaoさんが漫画を描き始めたきっかけは何でしょうか?

usaoさん(以下、usao) 元々小さい頃から絵を描くのが好きでした。お母さんに絵を褒めてもらったり、友だちへの手紙に絵を添えて喜んでもらったりするうちに、自分が描いたものを人に喜んでもらえるんだ、嬉しいな、と心の奥底でずっと感じていました。

『はじめましてあかちゃん 赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記』より

――usaoさんとして活動を始められたのはいつ頃ですか?

usao usaoとして活動を始めたのは大学生のときですね。当時、落ち込んでる友だちになんて声をかけていいかわからず、自分で描いた絵をLINEで送ったんです。そうしたらその友だちが絵を見て「元気が出た」って返事をくれて。

それで「あ、言葉をかけられなくても、自分の好きな絵で人を喜ばせることができるんだ」とわかって、誰かに絵を贈るっていいなと思ったんです。

それ以来、いろんな人に届くといいな、誰かの役に立てたら嬉しいな、という想いで、usaoとしてTwitter(現X)やFacebookに絵を載せるようになりました。

赤ちゃんとの日々、周りの空気、景色を忘れたくないから残す

――昨年(2023年)2月に出産されて、今は特に育児で忙しい毎日だと思いますが、漫画はどんなタイミングで描かれていますか?

usao 赤ちゃんが寝たり、ちょっと落ち着いてる時にパッて描いてます。たまに動き回ってる横で描くこともあります(笑)。

赤ちゃんが何かできるようになって「わ、嬉しい!」と思っても、今残しとかないと消え去ってしまう、忘れてしまうと思うんです。

だからすぐ描けない時も、その時に感じた自分の気持ち、周りの空気、景色とかをずっと頭の中で「これは絶対残しとかないと、残しとかないと」ってずっと覚えておいて、真夜中に描いたりしてます。

『はじめましてあかちゃん 赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記』より

描くことは爪を切ること。過去を思い出にして成長していくためのステップ

――長く漫画を描き続けてきて、usaoさんにとって「漫画を描くこと」はどういうことですか?

usao 爪を切ること、ですね。伸びた部分である“過去”を切って、思い出として取っておく……いや、本当に切った爪を取っておいたりはしないんだけど(笑)。自分が成長していくために必要なことだと思っています。

それと、起きたできごとや過去の自分を、自分の中に落ち着けるために描くっていう部分もあります。そして、時には「誰かのために、ちょっとはがんばれたかもな」と、自分で自分に心の中でパチパチと拍手したり。

私が描いてるのって、面白いできごとじゃなくて当たり前のことばっかりなんですよ。

でも、当たり前のことだからこそ、誰かに相談できなかったり自分だけどうしてこうなんだって塞ぎ込んでしまう人はいっぱいいる。たとえば、子どものことでつい自分を責めてしまったり。

私もそういう人の1人なんですが、それを絵にして発信するたびに同じような人から「1人じゃないって思いました」って声をもらえる。そうすると「自分のくだらない普通の経験が誰かの役に立ててるんだ」ってとてもありがたくなります。

SNS上で知り合った、実際には会ったことも顔を見たこともない人が、どこかで元気づけられてるんだと思うとほんと、嬉しいなって。

『はじめましてあかちゃん 赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記』より

――色々な人がusaoさんの漫画から元気をもらっているんですね。

usao 例えば、子どもが大学生になってなかなか会話がなくなったという人から「自分もこうやって大切に産んで育ててきたんだ、出産や子育ての頃のことを思い出させてくれてありがとう」ってコメントをもらったことがあります。写真に残ってない、忘れていた過去のことやその時の自分のことを、私の漫画を読んでまた思い出せてよかった、って言われるのは結構嬉しいです。

また、妊娠中の人から「出産するのが楽しみになった」って言われたり、「生まれました」って知らせてくれて、産後も1人じゃない気持ちで読んでいてくれるのもありがたいです。

――現在は赤ちゃんのことを多く描かれていますが、この先、漫画やそのほかのことで目標にしてることや思いはありますか?

usao 「もう描かなくてもいいな」って思える自分になりたいなと思います。最終目標は「描かない」。

誰かの役に立ってる自分が好きだし、SNSという限られた場で自分が活躍するのは結構好きです。でも、ちょっとそれは“逃げ”だって自分の中で感じていて。

というのも、SNSに投稿していると「がんばって」とか「それでいいんだよ」「大丈夫だよ」といったような“いい言葉”を返してもらえます。そうやって皆さんに優しくされてるけれど、本当はそれに頼らず、自分の足で歩かなくちゃいけないんじゃないか、と最近は思ってます。

(話:usao、取材・文:大崎典子)

✅ 『はじめましてあかちゃん 赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記』の漫画を5話分まとめ読みはこちらから

次回(2024/02/14 7:07配信)は妊娠中に思ったことや、パートナーについてお聞きします。

©usao/幻冬舎コミックス

コミックエッセイ『はじめましてあかちゃん 赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記』

『はじめましてあかちゃん 赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記』(幻冬舎コミックス) 定価1,430円(本体 1,300円+税)

『はじめましてあかちゃん 赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記』について詳しくはこちら
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usao
1991年大分県生まれ。福岡県在住の小学校教員をしながらX(旧Twitter)に不思議な生き物「うさお」が登場する「usao漫画」や日常生活を描いた「なんでもない絵日記」を掲載し大きな話題に。著書に『usaoの先生日記』 (東洋館出版社)、『usao漫画』『usao漫画2』『なんでもない絵日記』(扶桑社)、『今のわたしになるまで うつと向き合った1年間の記録』(大和書房)などがある。2023年10月『はじめましてあかちゃん 赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記』(幻冬舎コミックス)を刊行。
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大崎典子
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