出産が近づいたら、出産後のスケジュールや赤ちゃんと一緒の新生活の段取りについても、本格的に考え始めるでしょう。入院するときはママ1人ですが、退院するときは赤ちゃんと2人。服装は? タクシーに乗れる? など具体的な疑問も浮かぶものです。出産から退院直後の生活で特に心に止めておきたいポイントをまとめます。

この記事の執筆・監修ドクター 松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(ともに東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします!どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
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退院するまでの日数は?

出産の時の入院日数は施設によって違うものの、日本では3日以上の入院が一般的です。目安としては次の通りです。

 経腟分娩 5〜7日

 帝王切開 8〜12日[*1]

退院診察と血液検査などの結果次第で退院日が決まりますが、診察でママの貧血、産褥熱(さんじょくねつ)、膀胱炎・腎盂腎炎といった感染症の兆候などが見られた時や、お産の状況などで母体の状態がよくない場合、また黄疸など赤ちゃんの健康状態が原因で長引くこともあります(状況によってママだけ先に退院の場合も)。また、経産婦で産後の経過が良好な場合などは、入院期間が短縮されることもあります。

「産院によって入院中や退院のスケジュールは異なります。東峯クリニックの場合は3日目に採血検査をし、その結果を確かめて4日目に退院するケースが多いです。中には疲労度が大きく、延泊を希望するママもいます。入院日数はあくまで目安として考え、延泊が必要になることもあるので、退院後の予定を組むなら余裕を見ておくのがベターです。出産はゴールではなくむしろ長い育児の始まりで、退院から新しい生活のスタートになります。いいスタートを切ってほしいと思うので、十分なケアを受けて元気に退院していただきたいと思います」(松峯先生)

産後、退院までのママのミッションは?

ニュースなどで欧米の著名人が産後すぐに退院しているのを見たことがあるかもしれません。なぜ日本では数日も入院するのでしょう。実は、入院中のママには大切なミッションが2つあります!

体を休める

出産をした女性の体は急速に回復し始めますが、回復を促すには十分な休養が必要です。退院から始まる赤ちゃんとの多忙な生活の前に、十分に体を休めて心身をいやすための数日間の入院です。赤ちゃん誕生の幸せを噛みしめながら、ゆっくり休みましょう。

不安の解消

赤ちゃんと対面して、大きな喜びの反面、育児についての不安を具体的に感じることもあります。入院中は、母乳・ミルクを含め赤ちゃんのケアに精通した助産師がサポートに入り、直接指導を受けることができますから、この機になるべく不安を払拭しておきましょう。

「退院後の悩みとしては、母乳の出が悪い、飲ませ方がわからない、うまく飲んでくれない、など、授乳に関することが多いようです。

不安解消のためにも、入院しているうちに助産師の指導を受け、十分に納得してから自宅に戻ることが大切です。乳房ケア、搾乳器の使い方、ミルクの場合は調乳指導など、不安なことは何でも具体的に聞いてみましょう」(松峯先生)

退院時のママ・赤ちゃんの「服装・移動手段・準備品」は?

赤ちゃんと2人での退院に向けて、あらかじめ準備しておくポイントを紹介します。

ママの服装

赤ちゃんを産んだ後、体は回復し始めるものの、すぐに妊娠前の体型には戻りません。産後1週間を過ぎるころの子宮の大きさは握りこぶし大(非妊娠時は鶏卵大)とされて [*2]、皮下脂肪も蓄えられているので、お腹周りが思うより凹んでいないのは自然なことです。

退院の際に着る服としては、体を締め付けないデザインのものを用意しておきましょう。すぐに帰宅できるにしても、トップスは授乳しやすい服(前開きや授乳口のついたもの)にしておくと、帰宅後も慌ただしくないでしょう。

赤ちゃんの服装

赤ちゃん、とくに新生児は体温調節機能が未熟で、外気温の影響を受けやすいので、季節・気候に合わせて肌着やロンパース、ベビードレスを用意しておきましょう。暑さ・寒さに対応するために季節に合った素材のおくるみ(布)を備えておくとより安心です。

マイカーで退院するなら

チャイルドシート使用義務の対象は6歳未満の子供となっていますから、マイカーで病院から退院する場合には新生児もチャイルドシートを使用しなければなりません。乳児用のチャイルドシートが必要になります。

なお、道路交通法でタクシー等に乗る場合はチャイルドシートの使用義務が免除されています。しかしながら、事故に遭うリスクは自家用車と格段に異なるわけではありません。タクシー会社によっては、事前に手続きすることでチャイルドシートを用意してくれますので、調べておくといいでしょう。

退院後の過ごし方は?

産褥期(さんじょくき)と呼ばれる期間は産後6〜8週[*3]です。

妊娠によって大きくなった子宮が回復していくことを「子宮復古(しきゅうふっこ)」と言います。

人によって差があるものの、子宮復古には6週間程度かかります。そして妊娠・出産には子宮など生殖器以外にもさまざまな臓器とその機能が関係しているので、それらの中には回復にもう少し時間がかかるものもあります。

たとえば分かりやすい変化の一つである体重も、分娩で大きく減少した後、さらに2〜4ヶ月かけて非妊娠時の状態にもどっていくのが一般的です[*4]。

ですから、なるべく3ヶ月、せめて産褥期の間は心身の回復を第一に考えた生活を心がけましょう。具体的には、

◆産後2週間経つまでは、できるだけ家事はせず、赤ちゃんの世話のみに専念

◆産後3週間経ったら、体の様子を見ながら負担の少ない家事から少しずつ始める

といったペースで体調の回復をいちばんに考えてください。

体力・気力に自信がある人も、過信は禁物です。1ヶ月健診で大丈夫と診断されるまでは万全な体調とは言いきれないと考えて、疲れたらすぐに休むようにし、無理のない範囲で体を慣らしていきましょう。

「産褥期は赤ちゃんと知り合う時間。お母さんたちには『一緒にゴロゴロ過ごしましょう!』とアドバイスしています。大切なことは育児や生活が大変なときは“誰かに頼る”こと。夫婦で助け合うのは大前提として、退院するママには、『親など身近に頼れる人がいるなら、娘に戻って思い切り甘えて』と伝えています。身近にはいない場合は、ぜひ産後ケアやファミリーサポートなど公的支援を活用しましょう。

そして、出産後の回復には個人差があり、治療が必要になる場合もあることを覚えておいてください。発熱、下腹部痛、頻尿、腟から鮮血のような出血などの具体的なトラブルがあったときはもちろん、心身の健康に不安があるときは産院に連絡をし、主治医に状況を伝えて指示をもらいましょう」(松峯先生)

出産前に準備しておくといいこと・ものは?

退院後の生活のために、事前に準備しておくとよいことや、リサーチしておきたいことをまとめます。

自分が住んでいる自治体の「産後ケア」や「ファミリーサポート(子育て支援や家事支援)」の取り組みを調べておく

自治体から案内がない場合は、住んでいる自治体に問い合わせておきましょう。

「当院がある東京都江東区の場合は、母子手帳を受け取るタイミングで産後ケア等についての案内や面談がありますが、そうした対応は市区町村で異なる可能性があります。区の産後ケア事業対象施設となっている「産前産後ケアセンター東峯サライ」で参加者が多いプログラムは『乳房ケア』『骨盤ケア』『産後ヨガ』『離乳食のつくり方講座』など。赤ちゃんを連れての外食が困難なことが多いため、赤ちゃんと一緒のデイサービスのランチ会も人気があるようです。こういった産後の情報やサービスは、どこでどのように受けられるのかを、できれば出産前に調べておくといいですね」(松峯先生)

ネットスーパー、民間家事代行、宅配、デリバリーなどのサービスを調べておく

使いやすい地域資源を探しておくと安心です。サービスによっては赤ちゃんがいる家庭を対象とした優待を設けており、産前から優待を受けられるものもあります。複数のサービスを検討し、必要に応じて使い分けるとより便利に活用できますね。

マタニティーブルーズを知っておく

産後3〜10日に起こる心の変化をマタニティーブルーズと言います[*5]。ホルモンの急激な低下などが主な原因とされる、とても一般的なものです。涙もろい、気分が沈む、不安感などの症状がありますが、10日ほどで自然回復するケースがほとんどなため、特に治療は必要ないとされています。この時期に情緒が不安定になったら、「マタニティーブルーズのせい」と考えて、こころと体を休めましょう。

「突然、涙が出たり、ちょっとしたハプニングでひどく落ち込んだり、この時期に感情の起伏が激しいなどは誰にでも起こりやすいことだと知っていると、割り切ってブルーな時期がやり過ごしやすいでしょう」(松峯先生)

なお、マタニティーブルーズのように産後の精神不調が出るものとして、「産後うつ症」があります。マタニティーブルーズとは異なり、産後うつ症は症状が2週間以上続く、治療が必要な病気です。このことも併せて知っておいてください。

各種手続のめどをつけておく

赤ちゃんが日本国内で生まれた場合、出生の日を含め14日以内に出生届が必要です。特に里帰り出産をしている場合など、誰が、いつどこに届け出るのか、めどをつけておきましょう。出生届の「届出人」や「持参人」に対する自治体の対応はどのようになっているのか、自治体ホームページに記載がないことは直接聞いておく必要もあります。

ほかにも、児童手当金(市区町村役場・役所へ)、健康保険(市区町村役場・役所もしくは健康保険組合へ)、マル乳医療証(市区町村役場・役所へ)などは速やかな手続きが必要になりますので、あらかじめ調べておくと安心です。

まとめ

出産時の入院は、これから始まる赤ちゃんとの生活への準備期間としても重要です。体を休めつつも、不安を少しでも解消できるよう、医師や助産師に疑問などをなげかけ、知識を得ておきましょう。退院後はこれまでとは違う忙しさも感じるかもしれませんが、特に産褥期と呼ばれる期間(産後6〜8週間)は体調回復をいちばんに考え、体を休めることが大切です。あらかじめ準備できることは入院前にしておくと安心でしょう。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 病気がみえるVol.10産科 第4版, p371, メディックメディア, 2018.
[*2] 病気がみえるVol.10産科 第4版, p367, メディックメディア, 2018.
[*3] 日本産科婦人科学会:産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版, p103, 2018.
[*4] 病気がみえるVol.10産科 第4版, p366-7, メディックメディア, 2018.
[*5] 日産婦学監修 Babyプラス p91,2017

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます