妊娠が確定する前の、いわゆる妊娠超初期と呼ばれる期間には、人によってはさまざまな妊娠の兆候が現れることがあります。生理痛のような症状から食欲の変化、においの感じ方の違いまで、妊娠超初期に起こりうる10の兆候をまとめました。

この記事の監修ドクター 産婦人科専門医 齊藤英和先生
梅ヶ丘産婦人科勤務、国立成育医療研究センター臨床研究員、神戸元町夢クリニック顧問、浅田レディースクリニック顧問、近畿大学先端技術総合研究所客員教授、1 more baby 応援団理事、ウイメンズヘルスリテラシー協会理事。山形大学医学部卒業後、同大学、国立成育医療研究センターを経て現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖専門医、医学博士

妊娠超初期とは

妊娠初期になる前の「超初期」とは、具体的にどんな時期なのでしょう。

妊娠しているかもしれないけれど、妊娠検査薬でもまだ調べられない時期

「妊娠超初期」とは、医学的な定義があるわけではありませんが、一般的に、妊娠初期より前の期間、具体的には前回の生理終了〜生理予定日前までを指します。

妊娠週数でいうと妊娠4週未満ごろのことで、排卵から受精を経て、受精卵が着床するころにあたります。

妊娠超初期では、妊娠したことを示すホルモンであるhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)の分泌量がまだ少なく、妊娠検査薬を使っても妊娠しているのに反応が出なかったり、赤ちゃんを包む袋である「胎嚢」もまだ小さすぎて超音波検査では確認できないので、産婦人科で検査をしても妊娠を確定できなかったりします。

人によっては妊娠初期の症状が現れることも

妊娠による体の変化の中でもよく知られている「つわり」の症状は、妊娠5〜6週ごろに現れ始めることが多いといわれます[*1]。

しかしその時期は個人差が大きく、妊娠超初期と呼ばれるころに妊娠初期に現れる変化を感じる人も中にはいるかもしれません。

つわりは、主に胃腸の不快な症状を指しますが、妊娠により感じる可能性がある症状はほかにもあります。

妊娠超初期に現れても不思議ではない症状にはどんなものがあるのか、詳しく見ていきましょう。

妊娠超初期に現れるかもしれない10の兆候

妊娠超初期に生じる可能性のある症状や兆候をまとめて解説します。

生理の遅れ以外に現れるかもしれない症状

妊娠の最大のサインは生理の遅れですが、そのほかに以下のような症状が現れることもあります。

1.眠気

眠気は妊娠初期症状のひとつです。「日中、眠くて仕方ないと思っていたら、その後、妊娠が分かった」という体験もよく聞きます。

妊娠初期に眠気を感じるのは、妊娠によって増加する女性ホルモンの一つ、プロゲステロン(黄体ホルモン)が関係しているといわれます。プロゲステロンには妊娠の維持、例えばおなかの中を赤ちゃんが育つのに適した環境に整えたり、母乳を作る準備をしたりといった働きがあります。

このプロゲステロンは妊娠中、分泌量がどんどん増えていきますが、このホルモンによる影響のひとつに眠気を感じやすくなることがあるのだろうと考えられています。ただ、正確なところはわかっていません。ちなみに生理(月経)前に眠気が強くなるのも、同様のメカニズムと考えられています。

2.全身の倦怠感(だるさ)

プロゲステロンには基礎体温を上げる働きもあります。その影響で妊娠初期は体温の高い状態が続くことから、ボーッとしたり倦怠感(だるさ)を感じたりすることがしばしばあります。人によってはまだ妊娠が確定していない、超初期からこうした症状が現れることもあるでしょう。

また妊娠すると寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりする人も多いようです。その影響で睡眠不足になった結果、日中にだるさを感じるケースがあるかもしれません。

3.食欲の増大または食欲不振

妊娠によって食欲に変化が生じることも多々あります。食欲が減退し「食欲不振」に陥る、気分が悪くなる「悪心」が起こる、食べたものや胃液を吐く「嘔吐」を繰り返すこともあります。これが「つわり」の症状です。

そう多くはありませんが、ひどくなると治療が必要な「妊娠悪阻」に発展する場合も。またその逆に、食欲が旺盛になる人もいます。

妊娠によってなぜこのように食欲が変化するのか、その原因は、はっきりとわかっていません。ただ、妊娠12〜16週ごろにはだいたい落ち着き、以降は自然と症状がなくなることが多いといわれています[*1]。

つわりによって、食べたい気持ちが減り、食事の量が少なくなっても心配ない場合がほとんどです。ただ、体重がどんどん減っていくときやだるくて仕方がない時は、かかりつけの医療機関で相談するようにしましょう。

4.気分が沈む・イライラする

気分の落ち込みやイライラといった気持ちの変化を、妊娠超初期に感じる人もいるようです。なぜこうした気持ちの変化が生じるのか、そこにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロンの、分泌量やバランスの変化が関わっている可能性があるといわれていますが、はっきりとした原因はわかっていません。

そのため対応も難しいのですが、できるだけストレスをためないように努め、睡眠や休息を意識してとるようにすると、少しは気分の落ち込みやイライラが解消できるかもしれません。

5.頭痛

妊娠前から生理の際に頭痛が起きやすかった人は、妊娠超初期や初期症状でも頭痛の症状が出やすいかもしれません。また、食欲不振の症状がある人は、食事が十分にとれないことから低血糖を起こしており、その症状として頭痛が生じる場合もあります。

妊娠の可能性があり、日常生活に支障をきたすような痛みがある場合は、自己判断で市販の鎮痛薬などを利用せず、産科や頭痛外来を受診し、相談しましょう。その際、妊娠の可能性が高いことを忘れずに伝えてください。必要に応じて妊娠中でも服用可能な薬が処方されます。

6.吐き気

「3.食欲の増大または食欲不振」でも紹介したとおり、吐き気や嘔吐(おうと)もいわゆる「つわり」に含まれます。「つわり」は、50〜80%[*1]の妊婦さんが経験するとされ、妊娠超初期・初期症状の中でも一般的な症状です。

少しずつ食べる、口に入れやすい食べ物を常備する、吐き気防止に役立つ可能性があるビタミンB6の多い食事を意識するなどすると、吐き気の軽減につながることがあります。

7.唾液の増加

妊娠超初期や初期に唾液の増加を感じる人もいるかもしれません。

これは俗に「よだれつわり」と呼ばれることもあるようで、あふれ出る唾液をしょっちゅう吐き出さないといけなかったり、飲み込むと吐き気が出てしまう、といった症状に悩まされる妊婦さんもいるといいます。

これも、つわりが落ち着く妊娠12〜16週ごろには落ち着いたという人もいれば、出産直前まで続いた人もいるようです。

8.便秘

妊娠超初期症状のひとつとして、便秘に悩む人もいるかもしれません。

妊娠するとホルモン分泌に変化がある影響で腸の蠕動(ぜんどう)運動が妨げられ、動きが悪くなるため、腸内に便が停滞しやすくなります。

便秘がちなときは水分や食物繊維をたっぷり摂って、改善に努めましょう。それでも改善しない場合には受診した際に相談し、必要に応じて便秘薬などを処方してもらうとよいでしょう。

9.においに敏感になる

つわりの時期に「においに敏感になる」「においが気になる」といった変化を感じる人もいます。現われる時期や内容には個人差があるため、妊娠超初期にそうした変化を感じる人もいるでしょう。

「においに敏感になる」といっても、コーヒーやごはんの炊けるにおいなど特定のにおいが苦手になる人もいれば、いろいろなもののにおい全般が苦手になることもあり、人によってさまざまです。

10.頻尿・尿漏れ

妊娠すると体内の水分量が増加します。それに伴い、おしっこの量や回数も増加します。頻尿の症状は妊娠3ヶ月ごろになり、子宮が急に大きくなると顕著に現われてくることが多いようです。

また、尿漏れについてはどちらかというと、おなかが大きくなって膀胱が圧迫される妊娠中期以降に起こることが多いでしょう。

妊娠超初期症状? 生理痛? まぎらわしい症状

妊娠超初期の症状にはPMSや生理痛と混同しやすいものもあります。そうしたまぎらわしい症状や注意が必要な症状について解説します。

おなかの張りや下腹部の違和感を覚える人も

妊娠超初期に、おなかの張りや下腹部のチクチクした痛みなど、生理痛のような症状を覚える人がいるかもしれません。こうしたおなかの違和感は、子宮が大きくなることによって起こる可能性があります。

妊娠していない時の子宮の大きさは鶏の卵くらいですが、妊娠するとこれが急激に大きくなっていきます。そして妊娠3ヶ月末になるころには握りこぶしくらいの大きさにまで成長します[*1]。

その時、子宮では血流が増えて筋肉が伸びるという変化が生じ、子宮を支える靱帯(じんたい)や広間膜(こうかんまく)といった周辺組織も子宮の成長に伴って引っ張られていきます。こうした子宮やその周辺組織の変化が、生理痛のようなおなかの張りや違和感となって現れることがあるのです。

安静にしていたらすぐにおさまるようであれば、基本的に心配する必要はありません。

出血がある場合は医療機関へ

妊娠初期の下腹部痛には、流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)が原因で起こるものもあります。

妊娠の可能性があって、まだ医療機関で確認を受けていない女性がとくに注意したいのが、異所性妊娠です。頻度は自然妊娠の1〜2%[*1]と言われ、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまうことで起こります。異所性妊娠では、少量の性器出血や下腹部痛が起こることもあれば、大出血を起こして命にかかわる事態となることもあります。

出血に気付いたら、まずは落ち着いてナプキンなどをあて、できるだけ安静にしてください。横になれればよいですが、難しい場合は座って休むなど可能な範囲で身体を休めましょう。それでも痛みがひどくなったり、大量の出血があったりする場合は、医療機関に連絡し、その指示に従いましょう。

まとめ

妊娠した人全員が、妊娠超初期にこうした身体の変化を感じるわけではありません。妊娠超初期は、今感じている症状が妊娠によるものなのか、それとも生理によるものなのか、判断が難しい微妙な時期です。ちょっとした変化に一喜一憂するよりも、正確に判定できる時期を待って、妊娠検査薬を使って妊娠の可能性が高いかどうか、確かめてみましょう。

(文:山本尚恵/監修:齊藤英和先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]メディックメディア「病気が見えるvol.10産科編」(第4版)p.6, 39, 86, 94, 2018.

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます