なんらかの原因で、自然に妊娠の中断が起こってしまう「自然流産」。自然流産が起こるとき、何か予兆はあるのでしょうか。また流産した場合、次の妊活はいつから始められるのでしょうか。自然流産について大切なことをまとめました。

流産とは

流産とは、妊娠したにもかかわらず早いうちに赤ちゃんが亡くなり、妊娠が中断してしまうことをいいます。赤ちゃんがママのおなかの外でも生きていける可能性が出てくるのは妊娠22週以降とされており、それよりも前、つまり妊娠22週未満で妊娠が終わってしまう場合、流産となります。

自然流産と人工流産

流産には、なんらかの原因があって自然に妊娠の中断に至るものと、母体の保護などを目的に人為的に中断させるものとがあり、前者は自然流産、後者は人工流産と呼ばれます。

今回は自然流産について、その種類や主な症状、原因、兆候などを探っていきます。

自然流産の種類

自然流産は発症した時期や、そのときの流産の進行状況などによって、以下のような種類に分けられます。

発症時期による分類

妊娠22週未満の妊娠の中断=流産であることは先ほども説明した通りですが、発症時期によって流産はさらに2つに分類されます。それが「早期流産」と「後期流産」です。妊娠12週未満に起こる流産を早期流産、12週以降(22週未満)を後期流産といいます。

この2つを比べると圧倒的に早期流産を発症することのほうが多く、自然流産の80%以上が妊娠12週未満におこる早期流産だといわれています[*2]。

流産の進行状況による分類

発症時期のほか、進行状況によっても以下のように分類されます。

稽留流産

稽留流産とは、おなかの中で亡くなってしまった赤ちゃんやその付属物が子宮内にとどまる=稽留(けいりゅう)している状態です。痛みや出血などの自覚症状がほぼなく、医療機関で診察を受けて初めてわかるケースも多いといわれます。

進行流産

文字通り「まさに今、流産が進行している状態」のこと。子宮口が開いていることから多量の出血が見られることが多く、下腹部に陣痛に似た強い痛みを感じることもあります。

不全流産

流産を発症し、子宮内容物の排出が始まっているものの、まだ一部が子宮内に残っている状態です。出血や下腹部痛などの自覚症状も見られます。自然流産の多くがこの不全流産の状況になるといわれています。

完全流産

子宮の内容物が自然に、そして完全に排出された状態のこと。大量出血やけいれんのような子宮収縮(れん縮)、下腹部痛などの症状とともに子宮内容物がすべて排出され、医療機関で診察を受ける時には子宮口がすでに閉じた状態になっています。出血や下腹部痛などの症状は内容物の排出が完了すると、ほとんど感じなくなります。

このほか、流産を発症する危険がある「切迫流産」、妊娠検査薬でいったん陽性反応が出たけれど、超音波検査で胎嚢が確認できる妊娠5週より前に妊娠が中断される「化学流産(専門的には生化学的妊娠と呼ぶ)」もあります。

自然流産の主な原因は?

続いて自然流産の主な原因を確認していきましょう。

自然流産の原因はわからないことも多いのですが、大きくは赤ちゃん(胎児)に原因がある場合と母体にある場合とに分かれます。そして早期に発症する自然流産は胎児側に原因があることが多といわれています。それぞれ詳しく見てみましょう。

胎児側の主な原因

胎児が存在しない(枯死卵)

早期流産の約半分は「受精卵の中に、じつは胎児が存在していない」ことが原因といわれています[*2]。

卵子と精子が受精してできる受精卵は、卵管で受精したあと細胞分裂を繰り返しながら子宮内膜にたどりつきます。受精直後は1つの細胞ですが、分裂を繰り返すことで細胞の数が増えるとともに、のちに胎児となる細胞と胎盤やへその緒などになる細胞とに分かれていきます。

子宮内膜に着床するころの受精卵は、胎児となる細胞が胎盤となる細胞で袋状に包まれており、これは「胎嚢」と呼ばれています。また、胎児となる細胞は、「胎芽」と「卵黄嚢」に分かれていきます。

「胎嚢」は早ければ妊娠4週後半から確認できる場合もあります[*3]。その後、妊娠5週後半〜6週前半になると、正常な妊娠であれば、胎嚢の中に「胎芽」が確認できるようになっていきます[*4]。

しかし中には胎芽が確認できない、いわば空っぽの胎嚢が認められることがあります。この場合、もともと胎児が存在しないため妊娠はそれ以上続かず、結果、流産となります。こうした空っぽの胎嚢は「枯死卵(こしらん)」と呼ばれることもあります。

受精から妊娠するまでについて、よりくわしく知りたい場合は下記の記事も参考にしてみてください。

【医師監修】受精卵の着床と妊娠の関係。妊娠するまでに起こること
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/8168

【医師監修】胎嚢と胎芽が確認できる時期は?見えない時の原因について
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/2128

染色体異常

染色体とはおもに細胞の核にあり、1本に多くて数千の遺伝子を含んでいます。この染色体がうまく複製され、分配されることで、細胞分裂をしても遺伝情報が新しい細胞に伝えられていきます。

通常、ヒトの染色体は22対(22×2本)の常染色体と2本の性染色体の計46本で構成されています。しかし中にはなんらかの原因で、2本で1組のはずの染色体のいずれかが3本や1本になるなど数が異常になったり、染色体に欠け・入れ替わり・重複などの構造異常の起こることがあります。これを染色体異常といいます。

受精卵にこうした染色体異常があるとその多くは正常に育つことができず、とくに妊娠初期に流産してしまいます。ただ、染色体異常があっても、中には元気に赤ちゃんが生まれてくることもあります。例えばダウン症は、21番目の染色体が3本(トリソミー)になっているケースです。

母体側の主な原因

自然流産は、胎児側の問題で引き起こされることに比べてずっと少ないですが、母体側の状態などが原因となる場合もあります。とくに、母体の年齢が35歳を過ぎると急激に流産が増加するといわれています[*5]。年齢以外にも以下のようなものは流産を引き起こす要因になることがあると考えられています。

細菌、ウイルス

ウイルスや細菌の中には流産を引き起こすものもあります。妊娠中にかかると流産を引き起こすためとくに注意が必要な感染症は、梅毒、淋菌感染症、B群溶血性レンサ球菌(GBS)感染症、性器クラミジア感染症、歯周病などです[*5, 6]。

感染症以外の病気

一般的に感染症以外の病気が流産を引き起こすことはまれですが、いくつかの病気については流産の増加率と関係があることがわかっています。

例えば糖尿病。血糖値のコントロールが適切にできていない糖尿病は流産の原因となります。ただし、きちんと血糖管理ができていれば、流産率は減少するといわれています。また甲状腺の機能低下も、流産を増加させる影響があるといわれます。

そのほか、がんでは病気そのものというよりも、治療に使用される放射線により流産のリスクが増加すると言われています。

栄養状態

無理なダイエットなどによる深刻な栄養不足、もしくは栄養を摂取し過ぎることによる過度の肥満といった極端な栄養状態は流産を増加させるといわれています。

食事の質も重要で、毎日新鮮な果物や野菜を摂取している女性は、流産のリスクが低下するという報告があります。バランス良く適切に栄養を摂取することは、意外にも流産のリスク低下にとっても重要な役割を果たすようです。

大量のアルコール、喫煙、過剰なカフェイン

アルコールについては少量であれば飲酒をしても流産につながることはないですが、定期的もしくは大量の飲酒の場合、流産のリスクは明らかに増加します。

また、はっきりとはわかっていませんが、喫煙や過剰な量のカフェイン摂取についても早期流産を引き起こす可能性があると言われています。

子宮奇形

先天的、後天的にかかわらず子宮奇形は流産の原因、とくに何度も流産を繰り返す反復流産を引き起こすことがあります。3回以上流産を繰り返している女性の15%に先天的、もしくは後天的子宮奇形があるという報告もあります[*7]。

父親の影響は?

胎児や母親に流産を発症させる原因があることはわかりました。ところで、父親についてはどうなのでしょう。父親には流産を増加させるリスクはないのでしょうか?

じつを言うと父親については、流産に与える影響がまだはっきりとわかっていません。しかし男性も女性同様、年齢が上がると流産のリスクが上がるといわれています。25歳以下の男性についてはそうしたリスクが低いものの、その後は5歳年齢が上がるごとに、流産のリスクも高まっていきます[*7]。

兆候はわかる? 自然流産のおもな症状

せっかく妊娠したのですから、できることなら自然流産は避けたいですよね。その兆候を知り、流産を予防することは可能なのでしょうか?

流産の始まり方は? 予防はできる?

流産の主な自覚症状といえるのは、下腹部の痛みと出血です。例えば、いま現在流産が起こっている「進行流産」では、大量の出血とともに陣痛に似た下腹部痛が見られます。流産がある程度進んでいるものの子宮内容物が完全には排出されていない「不全流産」では、出血や下腹部痛が続きます。

ただし、「稽留流産」ではこれらの症状はほぼないまま、赤ちゃんはお腹の中で亡くなってしまっています。また、とくに妊娠初期に起こる流産では、稽留流産でなくても、出血などが起こり、子宮の内容物の排出が始まる前に胎芽や胎児は死亡してしまっていることがほとんどです。したがって流産の兆候をとらえ、予防することは難しいでしょう。

なお、流産の危険はあるが赤ちゃんはまだ生きている「切迫流産」でも、少量の出血や軽い腹痛などの症状が出ます。切迫流産であれば、流産にいたるのを防げる場合もありますが、現在のところ、流産への移行を確実に防ぐ治療法はありません。安静にして経過をみたり、状態に応じて薬による治療を受けることもあります。切迫流産について詳しくは下記の記事も参考にしてください。

【医師監修】切迫流産とは | 流産の可能性や違いについて
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/3502

少量の出血のみならあまり慌てないで

なお、出血は流産の症状のひとつではありますが、出血があった=流産しているというわけでもありません。

妊娠初期に、少量の不正出血が起こることは決して少なくありません。妊娠8週ころまでの妊婦さんのうち、約30%には不正出血が見られるといわれています[*8]。

医療機関で、超音波検査を受け、子宮の中に胎嚢がある(=異所性妊娠ではない)ことが確認されており、痛みや出血がひどくないようであれば、慌てずに少し様子を見てから受診してもよいでしょう。なお、この時期の出血の有無が流産の確率に影響することはないとされています。

ただ、妊娠しているのがわかっていて出血があったら、いろいろなことが不安になりますよね。

妊娠中、とくに初期のうちに出血があり、さらにそれが夜間など診療時間外だった場合は、まずは下記のポイントをチェックしましょう。

●出血の量が、生理で量が多いとき(生理2日目など)よりも多い

●下腹部に生理痛よりも強い痛みがある

●胎嚢が子宮内にあるかどうかまだ確認されていない

上記のうち、2つ以上に当てはまる場合は緊急を要する可能性があります。時間外であってもすぐに医療機関に相談しましょう。流産のほか、異所性妊娠(子宮外妊娠)や卵巣茎捻転などの可能性も考えられます。

流産後、妊活はいつから再開できる?

もしも流産してしまった場合、次の妊娠はいつから可能なのでしょう。

生理の再開が確認できたら

流産後、医師の診察で子宮内容の排出完了が確認されており、特別な指示がない場合はすぐに妊活を再開しても構わないでしょう。流産後に生理が一度くれば、妊娠できる体に戻っていると考えられます。

医師からの指示がとくにないのであれば、流産後であっても長期間、妊活をあきらめる必要はありません。流産から次回妊娠までの期間の長さと次回妊娠の成功率とは関連していないので、流産後の診察が問題ない場合には早めに妊活を再開した方が良いでしょう。

ちなみに「流産後は妊娠しにくい」ということも、とくにありません。「流産すると次の妊娠までに時間がかかる」「流産した後は妊娠の成功率が下がる」といった話題には科学的根拠がないとされています。

まとめ

妊娠初期の自然流産は胎児の染色体異常によるものが多く、残念ながら日常生活で何かに注意したからといって、防ぐことはほとんどできません。

流産という経験は身体に、そして心に大きなダメージを与えますが、誰かのせいで流産になったわけでは決してないのです。まずは身体のケアを第一に考えましょう。しっかりと身体を回復し、妊娠できる状態に戻していけば、また妊活を再開することができます。身体とともに心も、自然と回復してくるはずです。自分を責めず、希望を持って次のステップに進んでください。

この記事の監修ドクター 窪 麻由美先生
Fika Ladies‘ Clinic フィーカレディースクリニック(東京都中央区日本橋)副院長。順天堂大学医学部附属浦安病院非常勤助教。東京女子医科大学卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院、順天堂大学医学部附属静岡病院などを経て、2009年に順天堂大学大学院医学研究科を卒業、博士号を取得。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医、女性のヘルスケアアドバイザー

(文:山本尚恵/監修:窪 麻由美先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]メディックメディア「病気がみえる Vlol.10 産科」(第4版)p.90
[*2]南山堂「ウィリアムス産科学」(原著24版)p.419
[*3]篠塚憲男(胎児医学研究所)日獨医報57巻1号, 2012「妊婦健康診断−超音波診断の役割―」
https://radiology.bayer.jp/static/pdf/publications/nichidoku_iho/2012_57_01/57_01_02.pdf
[*4]日本産婦人科医会 産婦人科ゼミナール〜産科一般超音波検査・初期編〜
http://www.jaog.or.jp/lecture/5-%EF%BC%9C産科一般超音波検査・初期編%EF%BC%9E/
[*5]南山堂「ウィリアムス産科学」(原著24版)p.420
[*6]病気が見えるvol.10 産科 第4版, p.224-225, メディックメディア, 2018.
[*7]南山堂「ウィリアムス産科学」(原著24版)p.428
[*8]東京医学社「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
https://nms-obgyn-nagayama.jp/manual_site/sign1_1_2.html

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます