妊娠中、めまいやふらつきを感じることはよくありますが、もしかしたら「貧血のせい?」と心配している女性もいるかもしれません。ここでは「妊娠後期の貧血」の症状と診断された場合の治療法、赤ちゃんへの影響、鉄の摂取推奨量や鉄分豊富な食材などについて解説します。

「妊娠後期」は「貧血」になりやすい

妊娠すると、赤ちゃんや胎盤の成長・維持に必要なので妊婦さんの血液量は増えます。ただし、液体成分(血しょう)に比べて、赤血球の増加する量が少ないので「血液が薄く」なります。これは「水血症」といって、妊娠すると起こる正常な変化です。

妊婦さんの血液量は、妊娠中期から急増し、妊娠36週(妊娠10ヶ月)ごろがピークとなります。つまり、「妊娠後期(妊娠28週〜出産予定日前まで)は、妊娠期間中でもっとも妊婦さんの血液量が増加している」時期なのです。このころの血液量は、妊娠していない時のおよそ1.5倍にもなります[*1]。

「貧血」とは「血液中に赤血球が不足することで、体の組織に十分な酸素を届けられない」状態のことです。ここまでで説明したとおり、妊婦さんは血が薄まりやすく貧血になりやすいのですが、妊娠後期はその傾向がさらに強まるでしょう。

貧血の症状

「貧血」になるとどんな症状が現れるのでしょうか。

「貧血」でよくある症状

☑ めまい、立ちくらみ

☑ 動悸、息切れ

ただし、貧血が徐々に進行するとこうした症状が出なかったり、気づかなかったりすることがあります。実際、妊婦さんの貧血は無症状なことも普通で、重い貧血になってようやくこうした症状が現れることも多いようです。

貧血の基準

妊娠中の貧血(妊娠性貧血)の多くは、赤血球を作るのに必要な鉄分が不足することで起こる「鉄欠乏性貧血」で、血液検査で下記の数値となったときに診断されます[*2]。

☑ ヘモグロビン(Hb)値:11g/dL未満

または

☑ ヘマトクリット(Ht)値:33%未満

妊婦健診では、一般的に妊娠初期、中期、後期の計3回、血液検査でこれらの数値などを計測し、貧血でないか確認しています。なお、まれに鉄欠乏性貧血が原因ではない場合では、別の検査が必要なこともあります。

貧血と治療

妊婦健診などで貧血と診断されたら、処方された鉄剤を内服するか、食事からできるだけ多くの鉄分を摂取するための栄養指導を受け、治療することになります。

普段から鉄分を十分に摂って貧血予防を

ほぼ毎月のように生理で血液が失われる女性は、男性に比べて貧血になりやすいことがよく知られています。妊娠するとさらに貧血になりやすくなるので、女性はとくに普段から鉄分を意識して摂取しておくことが大切です。

「妊娠後期の貧血」で「赤ちゃんに影響」はあるの?

妊娠後期に貧血になった場合、お腹の赤ちゃんには何か影響はあるのでしょうか。

貧血の程度により影響のある場合も

「貧血」は「血液中の赤血球が不足し、体の組織に十分な酸素を届けられない状態」と説明しましたが、妊婦さんが貧血になればお腹の赤ちゃんにも酸素を十分に届けられなくなってしまうということです。

急速に重症の妊婦貧血(Hb≦6.0 g/dL)になると、胎児が死亡することがあります。また、中等度(Hb値8.0〜10g/dL程度)の場合も、胎児死亡や低出生体重児・未熟児の頻度が高いと報告されています。

一方で、妊娠中期以降のHb値10 g/dL台の軽度貧血では出生児体重が重く、低出生体重児の頻度が最も少なかったという報告もあるようです[*2]。

貧血と診断されたら、主治医の指示に従いきちんと治療することが大切です。

妊娠後期の貧血に関する悩みQ&A

ここからは、「妊娠後期の貧血」に関する悩みと回答を解説します。

鉄分豊富な食べ物って何があるの?

妊娠中の鉄の摂取推奨量は?

妊娠初期は9mg/日、中期・後期は16mg/日の鉄分を摂取することが推奨されています(非妊娠時の成人女性の推奨量は6.5mg/日)[*3]。

鉄分豊富な食べ物リスト[*5, 6]

・ヘム鉄を含む食品

豚レバー(※)(生50g):6.5mg

牛ヒレ肉(100g):2.6mg

あさり水煮缶詰(むき身20g):5.9mg

かつお(生50g):1.0mg

・非ヘム鉄を含む食品

調整豆乳(200g):2.4mg

木綿豆腐(100g):1.4mg

小松菜(ゆで75g):1.6mg

春菊(ゆで75g):0.9mg

ほうれん草(ゆで75g):0.7mg

※ただし、レバー類は食べ過ぎに注意が必要です。妊娠中のレバー摂取については下記の記事も参照してください。

【医師監修】妊婦はレバーを食べちゃダメ? 貧血対策はどうする?
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/7936

鉄分の摂取量や吸収を高めるテクニック

鉄分の摂取量を増やしたり、吸収率を高めるために、下記の点にも気を付けてみましょう。

☑ 非ヘム鉄は「動物性たんぱく質」や「ビタミンC」とともに摂取すると吸収が高まる

☑ 鉄鍋を使って調理すると料理に鉄分が溶け出して摂取できる

☑ 濃い緑茶、紅茶、コーヒー等は鉄の吸収を阻害する「タンニン」を含むので、食事中や食事の前後は控える

貧血予防で妊娠中に市販のサプリメントを飲んでもいいの?

もし妊婦健診で貧血と診断されているなら、かかりつけの産院に処方してもらった治療薬を医師の指示に従って服用しましょう。

サプリメントは薬と違い、厳密な品質管理が義務付けられていません。貧血予防でサプリメントを利用する場合は、信頼できるメーカーのものを選びましょう。また、サプリメントには複数の栄養素が含まれていることも多いので、鉄分含め、含有する栄養素の量をきちんと理解したうえで適切に利用しましょう。

まとめ

妊娠後期の貧血について解説しました。妊娠中は初期から貧血が起こりやすいものですが、中期・後期以降はとくに貧血に悩まされる妊婦さんが増えるでしょう。赤ちゃんをお腹の中で育てるのに、妊娠中期・後期には非妊娠時の倍以上の鉄分が必要です。女性は妊娠していなくても鉄分が不足しがちなので、妊娠を期に鉄分を十分に摂る生活を心がけておくと産後も役立ちます。日頃から鉄分豊富な食品を意識して摂り、貧血の予防に努めましょう。

この記事の監修ドクター 産婦人科医・医学博士 宋美玄先生
大阪大学医学部医学科卒業。丸の内の森レディースクリニックの院長として周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。主な著書に、ベストセラーとなった「女医が教える本当に気持ちいいセックス」がある。一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事

(文:マイナビウーマン子育て編集部/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気が見える産科, p41, メディックメディア, 2018.
[*2]日本産婦人科・新生児血液学会:Q&A産科編 Q1-4. 妊婦貧血とはどんな病気ですか?
http://www.jsognh.jp/qa/
[*3]日本人の食事摂取基準(2020年版) p366
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
[*4]厚生労働省 統合医療情報発信サイト「鉄」 https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/07.html
[*5]厚生労働省e-ヘルスネット 貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-008.html
[*6]日本成人病予防協会 貧血 −クスリになる食材あれこれ−
https://www.japa.org/tips/kkj_0210/

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます