出産が目の前に迫ってきた妊娠後期。お腹が大きくなり、日常生活のちょっとした動作もだんだん負担に感じてくる時期です。このころ、「キリキリ」「チクチク」とした腹痛があったら何が原因なのでしょうか。対処法とともに解説します。

「妊娠後期の腹痛」にはどんな原因があるの?

妊娠8ヶ月(28週)〜出産予定日前までの期間である「妊娠後期」。まずはこのころの妊婦さんに腹痛を起こす可能性がある要因をいくつか紹介します。

あまり心配のないもの

・前駆陣痛

出産予定日が近づいてくると起こる、不規則な子宮の収縮。多くはいったん止まり、後日、出産のときに起こる真の陣痛が始まります。

・子宮などが伸びることによる痛み

妊娠後期には赤ちゃんはぐんぐん大きくなっていきます。それに伴って子宮や子宮を支える靭帯などが引き延ばされ、腹痛を感じることがあります。この場合は、横になって休んだり、ガードルを使用することで痛みは軽くなります。

・便秘

妊娠中は便秘になりやすいものですが、子宮が大きくなり腸を圧迫する妊娠後期はさらに便秘がちになります。便秘の場合は無理にいきんで出そうとせず、出そうなタイミングを逃さないようにしたり、受診して便を柔らかくするタイプの下剤を処方してもらいましょう。

・鉄剤など飲んでいる薬の影響

貧血の治療で鉄剤を処方されている妊婦さんは、薬の副作用で下痢や腹痛が現れることがあります。この場合、しばらく服用していると不調を感じにくくなるようですが、辛いときは主治医に相談しましょう。

自己判断での下痢止めの服用はストップ!

なお、腹痛とともに下痢もある場合、自己判断で薬を飲むのは止めましょう。市販の下痢止めには妊娠中に注意が必要な成分が含まれていることもあります。薬の服用の前には、かならず医師や薬剤師に妊娠中であることを伝え、相談してください。

妊娠後期の腹痛、こんな場合はすぐに受診!

妊娠後期の腹痛では、「切迫早産・早産」「常位胎盤早期剥離(分娩の前に胎盤が子宮からはがれてしまうこと)」「ウイルス性胃腸炎などの感染症」なども心配されます。

痛みの感じ方は人それぞれなので、痛みだけから体の状態を推測するのは困難です。下記のような症状がみられたときはできるだけ早くかかりつけ医療機関を受診し、診断と治療を受けてください。

できるだけ早く受診したほうが良い場合

☑ 初めて経験するような激しい腹痛。痛みがひどく休んでも治まらない

☑ 便に血や膿のようなものが混じっている

☑ 発熱、下痢、吐き気・おう吐などほかの症状もある

☑ 脱水の症状がある(※)

※脱水による症状の例:尿が少ない/出ない/濃い色をしている、口や舌が異常に乾く、皮膚の弾力がない、めまいやふらつきを感じる など

☑ 腹痛や下痢がずっと続いている/悪化してきた/体重が減ってきた

☑ 食中毒の疑いがある(同じものを食べた人も症状が出ている)

腹痛とともに次のような症状がある場合も、できるだけ早くかかりつけ産科医にまずは電話で相談し指示を受けてください。

☑ 下腹部の痛みが規則的(※)にある(陣痛が始まった)

※1時間に6回(約10分間隔)以上の間隔で下腹部が痛む

☑ 性器から出血している

☑ お腹の張りが続いている

☑ 胎動がそれまでより減った/なくなった

妊娠後期に「キリキリ」「チクチク」する腹痛の原因は何?

さて、ここからは妊娠後期にお腹が「キリキリ」「チクチク」する場合、どんな原因が考えられるのか、みていきましょう。

<1>お腹が「キリキリ」するとき

「キリキリ」とは、「鋭い痛みが走る」ような症状についてよく用いられる言葉です。

痛みの間隔が不規則なら「前駆陣痛」かも!?

妊娠後期に「キリキリ」とした痛みを下腹部に感じたら、「前駆陣痛」の可能性もあります。「前駆陣痛」は最初に説明したとおり、分娩のときに起こる「陣痛(本陣痛とも)」と違って、痛みの間隔が不規則な子宮の収縮です。

この場合、しばらくすると痛みやお腹の張りは治まることが多いのですが、痛みが続いたり強くなる時はかかりつけ医療機関に相談しましょう

<2>お腹が「チクチク」するとき

「チクチク」痛むというときは、軽い痛みや違和感をあらわしていることが多いのではないでしょうか。

赤ちゃんに子宮や靭帯などが引っ張られている感覚かも!?

妊娠8ヶ月末には赤ちゃんの体重はおよそ1.5kg、身長40cmほどになります。これがひと月後にはなんと体重2.0kg、身長45cmくらいにまで成長します[*1]。妊娠後期にお腹が「チクチク」痛むのは、毎日少しづつ、でも確実に大きくなる赤ちゃんを包む子宮、子宮を支える靭帯が引き延ばされているからかもしれません。

いずれにしても、痛みの感じ方は人それぞれなので言葉で「キリキリ」「チクチク」と言い表していたとしても同じ状態とは限りません。「こんな場合はすぐ受診!」で紹介した内容を目安に、おかしいと思ったらためらわず産科を受診しましょう。

まとめ

妊娠後期はもうすぐ来る分娩に、心も体も緊張してくるころ。そんなときにお腹が痛むと、ちょっと慌ててしまいますね。ここで紹介したとおり、腹痛の原因にはさまざまなものがあります。痛みの程度、間隔、ほかにも何か症状があるかどうかなどに注目して、いつもと違うと思ったらためらわずにかかりつけ医療機関に相談しましょう。

この記事の監修ドクター 産婦人科医・医学博士 宋美玄先生
大阪大学医学部医学科卒業。丸の内の森レディースクリニックの院長として周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。主な著書に、ベストセラーとなった「女医が教える本当に気持ちいいセックス」がある。一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事

(文:マイナビウーマン子育て編集部/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気が見えるvol.10 産科, p.10, メディックメディア, 2018.

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます