産後、授乳している時期に、貧血がなかなか治らず困っているママもいることと思います。授乳と貧血は関係しているのでしょうか? 今回は授乳期の貧血の原因や、貧血を改善するためにできること、赤ちゃんの貧血についてもお話します。

貧血とは

貧血とは「赤血球に含まれている血色素、ヘモグロビンの濃度が低い状態」のことです。

赤血球に含まれるヘモグロビンは、血液の流れに乗って全身に酸素を運ぶ役割をしています。そのため、ヘモグロビンが減ってしまうと体の隅々まで十分な酸素が運べなくなり、疲れやすくなったり、頭痛や息切れを起こしやすくなったりします。

貧血にはいくつかの種類がありますが、一番多いのは鉄分が不足して起きる「鉄欠乏性貧血」です。

ヘモグロビンは、「鉄を含むヘムという色素」と「タンパク質」が結合してできています。そのため、鉄分が不足してしまうと、ヘモグロビンも減ってしまうのです。

貧血を防ぐためには、普段から十分な量の鉄分を摂取しておくことが大切です。

授乳期の貧血の原因って?

さて、授乳期にはさまざまな栄養素を含む母乳を出さなければなりません。母乳には鉄分も含まれますが、授乳することで貧血になることもあるのでしょうか?

結論から言うと、授乳だけが原因で貧血を起こすことはないでしょう。ただし、このあと解説する2つの要因があると、授乳期の貧血は起こりやすくなります。

出産時の出血量が多かった

出産の時には、経腟分娩の場合は平均300mL程度出血します。

500mL以上の出血をする場合は「分娩時異常出血」と言い、出血とともに呼吸や脈が速くなったり、血圧が低下したりします[*1]。

また、分娩時の出血が多いと、授乳期の貧血を引き起こすことがあります。

なお、出産に時間がかかると産後1ヶ月間の貧血に繫がる、という研究結果もあります[*2]。

もともと貧血だった

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」の結果によると、成人女性のうち約14%に貧血の疑いがあるとわかっています[*3]。

女性はもともと生理でほぼ毎月、血液とともに鉄分が失われます。さらに、ダイエットや偏食の女性は珍しくありませんが、ダイエットや貧血を続けていると貧血を引き起こしやすくなります。

産前から貧血だったのが、妊娠・出産でさらに重い貧血になり、産後になっても食生活が改善されないと、授乳期になっても貧血が続くことに。元気なママでいるためにも、貧血は改善していきたいですね。

ママの貧血を予防・改善するには

意識して鉄分を摂ろう!

ママが貧血のまま授乳を続けていると、赤ちゃんも鉄が不足して貧血になりやすくなります。

でも、意識して鉄分を摂るようにしていると、授乳期でもだんだんと鉄不足が解消されて貧血が改善していくことがわかっています。

育児で忙しい毎日だからこそ、できるだけ鉄分補給にも気をつけて元気な体を取り戻していきたいですね。

なお、妊娠していない18〜49歳の女性は、生理があるなら10.5mg、生理がないなら6.5mg程度の鉄分を毎日摂ることが推奨されています。さらに、授乳中は上記に2.5mg/日プラスして鉄分を摂ることが推奨されています [*4]。

鉄分多めの食事を心がけよう

胃腸への負担を考えると、鉄分は食事から摂るのがおすすめです。ただし、食事に含まれる鉄分は食べたとしても、すべてが体に摂り込まれるわけではありません。口にした鉄分のうち、体に吸収されるのは15%くらいだと言われています[*5]。

食品に含まれている鉄は、「ヘム鉄」「非ヘム鉄」に分けられます。比較的、体に吸収されやすいのは「ヘム鉄」の方です。なお、「非ヘム鉄」は動物性たんぱく質やビタミンCとともに摂取すると吸収率が高まります。

鉄分を多く含む食品

<ヘム鉄の多い食品>

豚レバー(生50g) 6.5mg 鶏レバー(生50g) 4.5mg 牛レバー(生50g) 2.0mg あさり水煮缶詰(むき身20g) 5.9mg かつお・きはだまぐろ(生50g) 1.0mg table { border-collapse: collapse; margin: 0 auto; } th { border: solid 1px; padding: 0.5em; text-align: center; } td { border: solid 1px; padding: 0.5em; }

<非ヘム鉄の多い食品>

調整豆乳(200g) 2.4mg 糸引き納豆(50g) 1.7mg 小松菜(ゆで75g) 1.6mg ひじき(鉄釜製、ゆで50g) 1.4mg table { border-collapse: collapse; margin: 0 auto; } th { border: solid 1px; padding: 0.5em; text-align: center; } td { border: solid 1px; padding: 0.5em; } 以下より抜粋 [*5]「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-008.html

貧血改善におすすめのメニューとしては、「レバニラ炒め」「あさりとほうれん草のパスタ」「かつおのたたき」「ひじき(鉄釜ゆで)と大豆の煮物」があります。自分で作ったりお惣菜を買う時などに、どんなメニューなら貧血改善にいいか考えて工夫してみてくださいね。

サプリメントや処方薬は医師に相談を

貧血が続くと、疲れが取れにくかったり、立ちくらみや息切れ、頭痛などに悩まされたりとつらいものです。

食べ物を工夫しても貧血が改善しない場合は、医療機関で診てもらったうえで、鉄剤を処方してもらったりサプリメントを取り入れるのもいいですね。食生活以外の原因で貧血が起こることもあるので、長引く貧血は放置しないでかかりつけの医師に相談しておきましょう。

生後6ヶ月からは貧血になる子も

ママは妊娠中から貧血になりやすいものですが、実は赤ちゃんの中にも貧血になる子がいます。どういった赤ちゃんが貧血になりやすいのか、確認しておきましょう。

貧血になりやすいのは母乳の子

貧血の赤ちゃんを調べると、ミルクの子よりも母乳の子の方が多いと知られています。

生後6ヶ月の赤ちゃんでミルクの子のうち、鉄が不足して貧血になっている子はほぼいませんでしたが、母乳の子は8.8%も貧血だと判明した研究結果もあります。

また海外の研究でも、生後6ヶ月を越えて母乳だけあげ続けていると約60%の赤ちゃんが鉄が不足して貧血になった、と報告されています。

母乳にはたくさんの栄養分が含まれていますが、母乳100ml中に入っている鉄分は0.04mgしかありません。

一方、粉ミルク100mlの中には、0.78〜0.99mgもの鉄分が含まれています[*6]。

赤ちゃんの体内では、生後5ヶ月ごろまではママのお腹の中で受け取った鉄分が必要量を満たしていますが、それ以降は徐々にそれだけでは足りなくなっていきます。そのため、母乳だけで育ってきた赤ちゃんは、だいたい生後6ヶ月以降になると貧血になりやすくなるのです。

離乳食から鉄分を摂ろう!

生後6ヶ月を過ぎても離乳食をなかなか始めずに母乳だけ飲ませていると、エネルギーも鉄分も足りなくなる可能性があります。

赤ちゃんの貧血を防ぐためには、生後6ヶ月頃からは離乳食で鉄分を補ってあげることが大切です。

鉄分を補える食材としては、レバーやほうれん草、納豆など、下の表のようなものがおすすめです。離乳食の進み具合に合わせて、食べやすく料理して貧血を防いであげてくださいね。

<食材10gあたりの鉄分>

木綿豆腐 0.1mg きなこ 0.8mg 小松菜の葉(ゆで) 0.2mg ほうれん草(ゆで) 0.1mg ひきわり納豆 0.2mg 若鶏皮なしもも肉(ゆで) 0.1mg 鶏レバー 0.9mg 豚もも肉(ゆで) 0.09mg ツナ缶(水煮) 0.06mg table { border-collapse: collapse; margin: 0 auto; } th { border: solid 1px; padding: 0.5em; text-align: center; } td { border: solid 1px; padding: 0.5em; }

まとめ

授乳中は妊娠前よりも体に鉄分が必要です。そのため、もともと貧血だったり、出産時の出血が多いと、産後も貧血が続きやすくなります。1日3食を心がけて、鉄分やビタミンC、たんぱく質を含む食事をしっかりと摂って貧血を改善してくださいね。貧血がなかなか治らない時には、かかりつけの医師に相談してサプリメントや鉄剤を取り入れるのもいいですね。なお、母乳の赤ちゃんも生後6ケ月頃から貧血になりやすいことが知られています。赤ちゃんが貧血にならないように、離乳食で鉄分などを補ってあげてくださいね。

この記事の監修ドクター 浅野仁覚先生
アルテミスウィメンズホスピタル(東京都東久留米市)院長。福島県立医科大学、同大学院卒業後、社会保険二本松病院、南相馬市立総合病院産婦人科医長、福島県立医科大学附属病院総合周産期センター(母体・胎児部門)助教、東府中病院副院長を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、医学博士、J-MELSベーシックコースインストラクター

(文:大崎典子/監修:浅野仁覚先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]分娩時出血例の管理, 日産婦誌59巻き9号, 2007.
[*2]「産褥1か月の貧血改善を妨げる影響要因」小檜山 敦子 鈴木英子 髙山裕子 「日本看護研究学会雑誌」Vol. 39 No. 1 2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/39/1/39_20151026003/_pdf/-char/ja
[*3]「国民健康・栄養調査」(厚生労働省,2018)
[*4]「日本人の食事摂取基準(2020年版) 妊婦・授乳婦」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586574.pdf
[*5]「e-ヘルスネット 貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-008.html
[*6]「授乳・離乳の支援」堤ちはる 「小児保健研究」77(6):598-603 2018
https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2018/007706/029/0598-0603.pdf

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

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