赤ちゃんが加わった新しい生活では、楽しいことが増える一方、新しい悩みも生まれるかもしれません。食事や、食生活で産後のママによくみられる悩みと、食の不安を軽減する食べ方についてまとめます。

産後のママは食事で悩む?

産後、食事・食生活に悩むママは少なくないようです。松峯先生がママたちから相談を受けることが多いのは次のようなお悩みです。

悩み①「自分のことが後回しになって、食事が適当に」

最も多く相談があるのは「余裕がなくて、食事がいい加減になってしまう」ということです。

ある調査では、産後のママの半数が「理想的な食生活を実践できていない/どちらかといえば実践できていない」と答えました。その理由としては「時間の余裕がないから(40.0%)」や「面倒だから(19.4%)」など [*1]。赤ちゃんが加わった生活は忙しく、以前と比べ余裕がなくなるのはやむを得ないかもしれませんね。

しかし、特に産後すぐは体が回復するために十分な休養と栄養をとらなければならない時期。工夫して休む時間を確保し、手軽に理想的な栄養がとれる方法で、しっかり食べていきたいものです。

松峯先生:
「赤ちゃんのいる生活を軌道に乗せるために、まずママが余裕をもち、体力・気力を回復させましょう。
赤ちゃんや上のお子さんが寝ている時間の使い方を見直してみてください。そのタイミングで家事や仕事をこなそうなどとは思わず、産後、子供が寝ている時間は『自分をメンテナンスする時間』と考えてみましょう。一緒に睡眠をとったり、食事やお茶をとってゆっくりしたり、自分のために使ってください。
特に産褥期は利用できるサポートを活用して、思い切って『休む・食べる』を意識していましょう。
パパたちも赤ちゃんとの暮らしをハッピーに、楽しく過ごすために、ママのコンディションにも注意を向けてくださいね。
ママと相談の上、できる家事を引き受けたり、適当な公的サービスや有償サービスを段取ることも子育ての一部。父親の大事な働きです!」

悩み②「お菓子ばかりをついつい過食してしまう!」

スナック菓子や菓子パンだけでお腹を満たしてしまうなど「高カロリー・低栄養・ファットリッチ(脂質多め)」の食生活に偏ることを悩む人もいます。

松峯先生:
「赤ちゃんのお世話で忙しく、手軽に空腹を満たしてしまうケースが多いものの、中には『妊娠中のがまんの反動』や『生活のリズムが変わったストレスの影響』といった自己分析を聞くこともあります。
いずれにせよ、偏った食事が続くと、体調の回復に時間がかかるだけでなく、健康上のトラブル(次項で紹介)の原因になることもあるので、なるべく食事が偏らないように気をつけていきましょう。
産褥期明けにはなるべく早く妊娠前の体型にシェイプアップしたいと考えるママも多いと思いますが、それならなおのこと偏食はNGです」

悩み③「授乳中の食事についていろんな情報! 何を信じたらいいの?」

授乳中のママの食事が母乳や赤ちゃんに及ぼす影響については諸説あります。

「授乳中に○○を食べると乳腺炎になる」「母乳の質を良くするために◇◇を食べた方がいい」「アレルギーが心配だから授乳中は△△を食べなかった」などいう情報が目に入るかもしれません。

しかし、特定の食べ物で乳腺炎になることはなく、また母乳の成分は概ね一定に保たれます。

そのため「授乳中だから」と特別な食事制限をする必要はなく、極端に偏った食生活でなければ、食事が授乳に影響することはないと考えられています。

また、授乳中のママが「赤ちゃんのアレルギー予防」として特定の食べ物を食べないようにしても、予防の効果はないとされています[*2]。

松峯先生:
「ママ自身と赤ちゃんの健康のために食べることに気を遣うのはいいことでずが、母乳がよく出るようにと何かにこだわって食べる物が偏らないようにしたいものです。
産後に限らないことですが、栄養が偏ると、それは場合によっては健康問題になります。リスク回避という意味でも、食事はバラエティ豊かに楽しんでください」

産後ママの食事で大切なこと

出産という一大事を果たしたママの体にとってどのような食事が必要なのでしょうか。基本的なことをおさらいしておきましょう。

産後の体の回復に欠かせないバランスのよい食事

大仕事である出産を乗り越えたママの体。その回復を促すためには、十分な休養の他に「バランスのよい食事」をとることが大切です。とはいえ、“バランス”と言われても具体的にどうしたらいいのか、いちいち考えるのもしんどいものです。そんなときは、いろんな食材やいろんな料理などバラエティ豊かに食べるようにすると、自然とバランスが整いやすくなりますよ。

なお、授乳中は普段より350kcal多くエネルギーをとることが推奨されています[*3]。350kcalというのは軽食を1回加える程度の分量です。

松峯先生:
「母乳の約9割は水分なので、授乳中は普段以上に水分補給にも気をつけてください。
マスクをしていると口のうるおいが保たれるため、喉の渇きに気づきにくく、水分不足になる場合もあるので、特に気にして飲みましょう。
喉が渇く前に水分補給をしたいので、『1時間に1回、水や麦茶を飲む』などと決めて飲むとよく、食事からも水分がとれるので、食事の回数を減らさないでください。授乳中のエネルギー付加分も考えると日に3.5回と考えておくといいでしょう。
また、水分が不足すると、便が硬くなり、便秘にもなりやすいです。便秘から肌荒れや痔、痔の悪化などトラブルの連鎖も起こりやすいので、こまめに水分補給するのを忘れずに!」

食生活が偏ると病気やトラブルのリスクに!

産後のママには貧血、便秘、肌荒れ、抜け毛、むし歯のトラブルなどを訴える人も多くみられます。

中でも鉄欠乏性貧血(鉄分が不足して起こる)は、産後回復傾向になるものの、もともと貧血だったり、出産時に出血が多かった場合には注意が必要です。

貧血を防ぐには、食事でしっかり鉄分をとるだけでなく

・ 鉄の吸収を助けるビタミンC(緑黄色野菜や果物に多い)
・ 鉄と結びついてはたらくタンパク質(肉や魚、大豆製品に多い)
・ 赤血球が作られるときに必要な葉酸(レバーや緑の濃い野菜に多い)やビタミンB12(レバーや魚介類、チーズに多い)

などをしっかりとる必要もあるので、結局は「バランスよく、多彩に食べる」を心がけるのが基本です[*4]。

産後に起こる生理的な現象で、避けにくいこともありますが、便秘、肌荒れ、抜け毛なども食生活と関係が深いので、これらのトラブルを予防・改善するためにも「食事はトータルでバランスよく」と言えるでしょう。

松峯先生:
「貧血のとき、自分でも気づかないこともありますが、症状としてはめまい、動悸、息切れ、倦怠感、頭痛などがあります。産褥期にこうした症状で日常生活に支障があるときは産科の主治医に連絡をして、指示をもらいましょう。
また、歯がグラグラするなど歯科系のトラブルがあると食べられる物が限られ、食事が偏ることがあるので、早めに歯科で治療を受けてください」

悩みを増やさないバランスのいい食べ方とは?

「バランスよく食べる」とはよく言われることですが、どうやったら手軽にバランスがとれるでしょうか。

手づくりにこだわらない

誰かつくってくれる人がいたら頼りにして、いなかったらお惣菜や宅配、調理キット、冷凍・レトルト食品、缶詰などを活用。バラエティ豊かに食べることが大事なので、手づくりにこだわらず、食事の準備を負担にしないで、食べていきましょう。

“ヘルシーな和食”などにも限らず、いろんな料理、いろんな食材、味付けを食べると、食事を楽しみながら自然に幅広く栄養をとることができます。

大鍋でつくりおき

手軽にバランスよく食べられる物として松峯先生がママたちによく勧めているのは「具だくさんの味噌汁」。

たっぷりの野菜や肉、厚揚げなどをざくざく切って、大鍋で煮込んでおきます。1度に食べる分だけ小鍋に分け、味噌を加えて食べ、次回は別の味付けで食べるのも飽きない工夫になるでしょう。

松峯先生:
「材料を切って、煮るだけなので、赤ちゃんのお世話の合間にもつくれます。旬の野菜を使えば自然においしいスープになってくれますよ。粗熱をとって小分けにし、冷凍しておくのも便利です。
『食事の準備が負担にならないように工夫する』は産後ママだけでなく、みんなの課題ですよね。いい意味で“手抜きワザ”を編み出すことも楽しみましょう」

お菓子も楽しんでOK

お菓子やジャンクフードをおやつに食べるのはOK。ただし、そればかり食べて食事をおろそかにするのはNGです! おやつではおよそ200kca程度 [*5]を上限の目安にするとよいでしょう。

バランスが心配になったらチェック

バランスよく食べられている? 疑問に思ったら、母子手帳の「妊産婦のための食事バランスガイド」(厚生労働省)のページを開いてチェックしてみましょう。

最近の自分の食事と照らし合わせて、食べていない物があったら加えます。「妊産婦のための食事バランスガイド」はウェブサイトでも確認できます。

妊産婦のための食事バランスガイド

松峯先生:
「昨今、ドラッグストアの店舗で管理栄養士が勤務している店が増えています。買い物で利用する店にも栄養のプロがいるかもしれません。管理栄養士は『食べ方』についても知識が豊富ですから、相談してみると食生活改善のヒントがもらえるでしょう」

まとめ

産後は時間的な余裕がないといった理由から食事がおろそかになるなど、食事・食生活の悩みをもつママが少なくないようですが、利用できるサポートや、手軽な調理品などを活用しながら、食事の準備を負担にしないように工夫して、バランスのよい食事をしっかりとっていきましょう。

授乳中のママも含め、産後に特別な食事制限は必要ありませんが、栄養や食べ方について心配なことがあったり、極端に食欲が低下しているなどの場合は、主治医か助産師、管理栄養士に相談してみましょう。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

この記事の監修ドクター 松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、東峯ラウンジクリニック副所長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(いずれも東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします! どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
http://www.toho-clinic.or.jp/

参考文献
[*1] 平成 29 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 妊産婦等への食育推進に関する調査
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000520475.pdf
[*2] 厚労省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html
日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2016年ダイジェスト版」
https://www.jspaci.jp/allergy_2016/chap04.html
[*3] 「日本人の食事摂取基準 2020年版」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
[*4] 厚生労働省 「e-ヘルスネット 貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-008.html
[*5] 厚生労働省 「e-ヘルスネット 間食のエネルギー(カロリー)」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-013.html#:~:text=

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます