産後ママによくみられるトラブルの1つが肌荒れ。それは分娩に関係する体の変化や、赤ちゃんを迎えて生活のリズムが変わることなど、いくつかの原因が重なって起こります。忙しい中でもなるべく負担にならない肌ケアについてまとめます。

産後は肌が荒れやすい?

産後のママの肌荒れは次の3つの原因が影響して起きていることが多いです。

原因は3つとも多くの産後ママに起こりやすい身近なことなので、3つが複合的に影響していることもあります。

原因に合ったケアを生活に取り入れて、肌のコンディションを改善するために、まず原因を知っておきましょう。

エストロゲンの減少

出産すると、急激にホルモンバランスが変化します。特に女性ホルモンのエストロゲンが大きく減少することは、肌のコンディションに影響します。

エストロゲンは肌細胞の生成・成熟・代謝すべての段階で重要なはたらきをするホルモンなので、それが激減すると肌の代謝(ターンオーバー)機能が低下して、肌荒れしやすくなるのです[*1]。

女性ホルモンの急激な低下は、一方で授乳のために必要なプロラクチンという下垂体ホルモンがはたらくために欠かせない変化なので、産後のママにとっては生理的な、自然な変化です[*2]。

エストロゲンの分泌が大幅に減少するのは産後1週間程度ですが[*3]、ホルモンバランスの完全な回復まではさらに時間がかかります[*4]。

松峯先生:
「産後は女性ホルモンの急激な低下で閉経後の女性にみられる更年期障害のような症状が出ることがあり、その一環で肌トラブルも起こりやすいです。
ホルモンバランスの回復にかかる時間は人によってまちまちで、一概にどれくらいとは言えません。妊娠前の状態に回復しても、肌トラブルの改善とはいくらかタイムラグがあり、しばらくの間、肌荒れに悩まされる人もいるでしょう。ホルモン関連以外にも、ライフスタイルなどほかの原因が重なって、トラブルが長引いてしまう場合もあります」

睡眠不足などのストレス

2つ目の原因は、赤ちゃんを迎えた新生活では、ママは十分な睡眠がとれない場合も少なくないこと。睡眠不足というのは、心と体の司令塔である脳の唯一の休養が十分ではないので、大きなストレスになります。

また、出産を経て体が回復する過程で、体調が万全ではない中、不慣れな育児や、生活のリズムの変化などがストレスになっていることもあるでしょう。

ママ自身が思う以上に、ストレスは大きく、十分な休養が必要なのにままならない時期と言えます。

ストレスは大人ニキビを

睡眠不足を含むストレスは俗に「大人のにきび」と呼ばれる思春期後痤瘡(ししゅんきござそう:毛穴の炎症と発疹)の悪化因子とされています[*5]。

また、ストレスは皮膚の色に影響するほか、肌の老化現象の1つ「メラノジェネシス」を起こしやすくし、皮膚のバリア機能を低下させる可能性なども報告されています。

食生活の乱れと便秘

産後には余裕がなく、自分のことは後回しになって、食事もままならない場合もあるでしょう。

ある調査では、時間の余裕がないから理想的な食事ができないとする産後のママが全体の4割もいることが分かりました[*6]。

また、菓子や菓子パンで食事を終えてしまうなど手軽に空腹を満たしてしまうことが続くと「高カロリー・低栄養・ファットリッチ(脂質多め)」の食生活に偏ってしまう場合もあります。

すると肌の健康を保つための栄養が不足する上、便秘にもなりやすく、便秘になると、大腸のバリア機能が低下します。

大腸のバリア機能とは、便の中の腐敗物質や細菌などが体内に侵入するのを防ぐ機能で、そのコンディションが悪化すると肌荒れにつながると考えられています[*7]。

産後の肌荒れ、対策6つ

洗顔や肌のうるおいを保つための美容的ケアは自分に合っている方法を続けましょう。

そして無理のない範囲で、産後の肌トラブルの原因であることが多い「睡眠不足などのストレス」「食生活の乱れと便秘」の対処となるセルフケアも行ってみましょう。

松峯先生:
「いつものスキンケアも赤ちゃんのお世話などで忙しく、おろそかになってしまいがちなのはやむを得ません。けれど、赤ちゃんや上のお子さんが寝ている時間の使い方をちょっと見直して、時間を捻出してみませんか。
そのタイミングで家事や仕事をこなそうとせず。子供が寝ている時間は『自由な時間』と考えて、自分のためにも使いましょう」

最優先で睡眠を確保!

夜間にできるだけ連続した睡眠を確保したいところですが、赤ちゃんの生活リズムが整うまで理想的な連続した睡眠時間(25〜45歳の場合、夜間に約7時間[*8])をとるのは難しいかもしれません。

しばらくの間は、昼夜の区別なく寝られるときに睡眠の確保をしましょう。

栄養を十分にとる

ビタミン、ミネラルも肌の健康には重要。特に、肌のコラーゲンの合成に欠かせないビタミンで、ストレスがあるとき大量に消費されてしまうビタミンCが不足しないように気をつけましょう。そのほかにもB2、B6などのビタミンB群やビタミンA、Eなどが肌荒れ改善に関係するので、バランスのよい食事を心がけてください。

水分を十分にとる

水分が不足すると、便が硬くなり、便秘になりやすくなります。喉が渇く前に水分補給を心がけましょう。

松峯先生:
「母乳の約9割は水分なので、特に授乳中はとても喉が渇きます。普段以上に水分補給をしてください。
感染症予防対策でマスクをしていると口のうるおいが保たれるので、水分不足に気づきにくいことがあります。『1時間に1回、水や麦茶などで水分補給する』など、マイルールをつくって飲むといいですね。
また水分は食事からも結構な量をとっています。忙しくても、食事の回数を減らさないようにしましょう」

食物繊維をとる

腸内細菌のエサとなって腸内環境改善に役立ち、便のカサを増す食物繊維を毎食とりましょう。日本人の多くが現在、食物繊維が不足気味とされていて、1日あたりプラス3〜4gをとることが推奨されています[*9]。

食物繊維はよく「レタス●個分」などと表現されますが、レタスの食物繊維が特別多いわけではありません。食品では玄米や全粒小麦などの穀物や、大豆やひよこ豆などの豆類、きのこ、根菜などが効率よく食物繊維をとることができます。

決まった時間にトイレで座る

寝起きや朝食後など、概ね同じ時間にトイレに行き、ちょっとゆっくり座っていましょう。排便リズムをつくるのです。また、便意を感じたら我慢せず、すぐにトイレに行くことも便秘予防で大切です。

便秘に悩んだら主治医に相談

便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています[*10]。一般的に目安とされるのは「3日以上、便が出ていない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」。つまり自分自身が「快便」という実感をもてなければ、便秘なので、主治医に相談して治療を受けられます。

松峯先生:
「産後のママが便秘になると、停滞した便が子宮や骨盤底筋、膀胱を圧迫し、間接的に子宮復古や骨盤底筋の回復を妨げることがあります。
一般的な便秘の治療は内科で行われますが、産後で、体が回復過程にあるママは産科の主治医に相談するのがベターでしょう。便秘が痔の原因にもなることもあるので、悪化させる前に治療しましょう。便を軟らかくする緩下薬などの服用で治療できます」

まとめ

産後の肌荒れは、分娩によって変わるホルモンバランスが関係しているので、しばらくの間、いつもより肌のコンディションが悪いのは仕方がない面もあります。しかし睡眠不足や食生活などの影響が原因として重なっていることもあるので、生活の中でできるセルフケアを試し、なるべくコンディションのいい状態を保ちたいですね。

肌荒れがひどく心配ななときや、寝ようとしても眠れないとき、便秘などの場合は、主治医に相談して必要な医療的なケアを受けることもできます。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]神戸女学院大学機関リポジトリ「女性ホルモンが皮膚のターンオーバーに及ぼす影響の検討 —表皮細胞の生成・成熟・剥離過程に及ぼすエストラジオールの効果—」萩原康子,西田昌司,2013
[*2] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p369
[*3] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p366
[*4] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p370
[*5] 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 大人のにきびとは?
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa3/q05.html
[*6] 平成 29 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 妊産婦等への食育推進に関する調査 p.17
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000520475.pdf
[*7] 日本臨床内科医会「わかりやすい病気の話シリーズ49 便秘」
https://www.japha.jp/doc/byoki/049.pdf
[*8] 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
[*9] 厚生労働省 「e-ヘルスネット 食物繊維の必要性と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
[*10] 慢性便秘症診療ガイドライン2017

この記事の監修ドクター 松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、東峯ラウンジクリニック副所長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(いずれも東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします! どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
http://www.toho-clinic.or.jp/

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

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