妊娠をきっかけに太ったり、産後、体重は戻ってもお腹周りなどがすっきりしないのが悩みのタネになることがあります。体型を戻すために、産後の今、やってはいけないことはなんでしょうか。産婦人科医のアドバイスをまとめます。

お腹が凹まないのはなぜ?

出産でおよそ3kgの赤ちゃんと胎盤や羊水などが出るので、産後にはお腹が“ぺたんこ”になることをイメージするのもやむを得ないかもしれません。

しかし実際には思った以上に腹部の“たるみ”や“ぽっこり”が残り、唖然とすることも少なくないようです。

この“たるみ”や“ぽっこり”はなんでしょうか?

“たるみ”はお腹の表面の皮や筋肉

妊娠中、子宮が大きくなっていくに従ってお腹の表面の皮や筋肉が伸びていきました。出産したとはいえ、伸びた皮や筋肉が縮むには時間がかかります。

また、妊娠中は脂肪(皮下脂肪)が蓄えられ、赤ちゃんが急速に育つために使われますが、腹部の皮下脂肪が産後に残ることもあります。それが厚ければ、皮も縮みにくくなります。なお、妊娠中に蓄えられる脂肪は約3kgと言われています[*1]。

一般的には、ママの体は産褥期(出産後約6〜8週間)に回復していき、体重も2〜4ケ月で約4kg低下します(分娩時に約5.5kg低下)[*2]。

しかし、体重が減る以上に、伸びた皮や筋肉が縮むのに時間がかかることもあるのです。

松峯先生:
「体重の変化や、皮や筋肉が縮むのにかかる時間は個人差が大きいことです。妊娠前の体型や皮下脂肪のつき具合、食生活、ライフスタイルなどによって左右されるので、一概にどれくらいと言えません。ママから目安を尋ねられたら、『半年以上はかかると考えて』と答えています。
そして、産後残った脂肪のエネルギーは育児や授乳に役立てられます。赤ちゃんとのママの生活は思う以上に体力を必要とするので、残っている皮下脂肪はエネルギー源となるのです。この『半年以上の期間』は体力の回復や維持に必要な期間と割り切って、体型や美容の課題はその後で取り組みましょう」

“ぽっこり”の多くは内臓下垂

子宮が大きくなる過程で伸び、薄く、弱った腹筋では内臓を支えきれず、内臓が本来の位置より下がる「内臓下垂」が起きやすくなり、するとお腹がぽっこり出てしまいます。

松峯先生:
「妊娠中や出産時には、内臓を下支えしている骨盤底筋群にも負担がかかり弱っているので、内臓が下がっていた場合は腹筋や骨盤底筋群の回復も必要で、それだけ時間がかかります。
こうした状態では尿もれなどのトラブルも起こりやすいので、1日も早く筋力を取り戻したいところですが、一般的な運動を産後すぐに行うのはNGです。場合によっては負荷が強すぎて、筋肉の回復を妨げたり、傷めるリスクがあります」

シェイプアップ、食事……産後の体型対策でNGなのは?

体を引き締める運動などはいつ再開するのがよいのでしょうか? 運動以外にもボディメイクに通じることは? 松峯先生のお話をまとめます。

NGその①「筋トレ」 一般的な筋トレは時期尚早

赤ちゃん連れではなかなか思うように外出できない中、家で気軽にできるシェイプアップとして思いつくのが腹筋運動ですよね。しかし、産後すぐのママの腹筋は特徴的な状態になっている場合が多いです。

それは「腹直筋離開(ふくちょくきんりかい)」というもの。妊娠中に分泌されるホルモンの影響で左右の腹筋をつないでいる組織(白線)が広がっている状態です。

【医師監修】産後の腹筋の状態は?産後の体操や運動はいつから?
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/7680

また、骨盤底筋も妊娠・出産で負担がかかっています。

これらの筋肉の回復を促すため、なるべく腹圧をかけないように注意して過ごしたい時期。一般的な腹筋運動などの筋トレは腹圧がかかる方法が多いので、回復を遅らせたり、伸びが悪化するリスクがあるため、しばらくおあずけです。

再開の目安は分娩スタイルによって以下を参考にしてください。

自然分娩の場合

1ヶ月健診で主治医から順調に回復しているとお墨付きをもらったら、軽めの運動から始め、運動強度を徐々にアップしていく。

帝王切開の場合

傷が完全に治ってから運動を再開。1ヶ月健診で主治医に状態を確認してもらい、運動を始める時期についても相談を。

産褥体操はいつでもOK!

出産直後から始められるプログラムがあります。子宮の回復(子宮復古)や、周囲の筋肉のダメージの回復を促し、体力をつける体操で、体を引き締めるための運動を再開する前のウォーミングアップになります!

NGその②「食事制限」 食事を控えるのはダメ!

「運動できないなら、せめて食事制限を」と考えるのはNGです。場合によっては“逆効果”になってしまうこともあると覚えておきましょう。

なるべく早く体力を回復させるには、「バランスのよい食事」を欠食せずに食べることが大切。産後だからといって食べてはいけないものは特になく、「偏らない」ようにするには、いろんな食材や料理をバラエティ豊かに食べ、食事を楽しむことが近道です。

特に授乳中は消費カロリーを補うため普段より350kcal多くエネルギーをとることが推奨されています[*3]。

350kcalというのは軽食を1回加える程度の分量です。

食事に良質な脂質を加えよう

脂肪の代謝を促す食生活で体の引き締めをフォローしましょう。

動物性の脂質に多い「飽和脂肪酸」は血中のコレステロールや中性脂肪を増やし、皮下脂肪を増やしやすいので、とり過ぎに注意を。

そして意識して「n-3系多価不飽和脂肪酸」(エゴマ油やなたね油など植物油や魚油に多い)を積極的にとりましょう。「n-3系多価不飽和脂肪酸」はコレステロールや中性脂肪を低下させる作用がある脂質です。

NGその③「無理のしすぎ」 体型改善のためにも休養

赤ちゃんが加わった生活では十分な睡眠がとれないことや、育児への戸惑い、不安などがストレスになることがあるでしょう。

しかしストレスが強いと脳の中でストレスホルモンが出て、何かあったとき命を守れるように脂肪を蓄積するスイッチが入ります。ヒトの原始的な仕組みですが、現代生活では太りやすくなるので要注意[*4]。

無理しすぎないことが、シェイプアップにも大切なのです。まず寝られる時に寝て、睡眠を確保! 十分に休養をとり、ストレスを減らしましょう。

松峯先生:
「子供が寝ている時間は自分のために使って! 産後しばらくは利用できるサポートはすべて活用して、思い切って休息を。
パパはぜひ、赤ちゃんのことや家事を引き受けたり、公的サービスや有償サービスを段取って、ママの休息をサポートしてください!」

まとめ

産後、体型が戻るには、思う以上に時間がかかることもあるようです。プロポーションを戻すためにも、まず体が回復することが先決で、それには「バランスのいい食事」「睡眠や休養」といった基本的な健康づくりが大切です。そして産後に適度な運動として、また、体を引き締める運動を再開するウォーミングアップとして、無理のない範囲で「産褥体操」を続けることも役立ちます。産後しばらくは回復を優先し、十分に滋養した後、体型や美容の課題に取り組みましょう!

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 千葉大学予防医学センター「ちばエコチルつうしん」
https://cpms.chiba-u.jp/kodomo/newsletter/file/5.pdf
[*2] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p366
[*3] 「日本人の食事摂取基準 2020年版」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
[*4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレスと食生活」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-001.html

この記事の監修ドクター 松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、東峯ラウンジクリニック副所長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(いずれも東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします! どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
http://www.toho-clinic.or.jp/

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

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