ただでさえ手間もかかれば気力も削られる離婚問題。さらに専業主婦という立場だと、お金の問題がより大きな障害になってきます。とくに子どもがいれば、なおさら将来は不安。女性の離婚相談を多く受けている、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の代表弁護士、中里妃沙子先生に、専業主婦が離婚を考えるときのポイントを教えていただきました。

経済力のない専業主婦でも離婚はできる?

専業主婦が離婚を考えても「お金は渡さない」などと言われてためらうことは多いもの。でも、親権や養育費が支払われるか、離婚が認められるかに、「専業主婦」という立場はあまり関係ないんです。

専業主婦が離婚したいと思ったときに、さまざまな不安が立ちはだかってきます。

・経済的にやっていけるか

・住居をどうするか

・子どもの親権が取れるか

・仕事が見つかるか

といった不安です。

考えただけでも「ムリ!」となってしまいそうですが、本当にそうでしょうか? 「ムリ」を少しでも「アリ」に転じるために、できることをひとつずつ見ていきましょう。

専業主婦だと離婚が認められにくい可能性はある?

専業主婦であっても、正当な離婚理由があれば、離婚が認められにくいということはありません。

裁判所は、一般的に、専業主婦を経済的弱者と考えます。その経済的弱者が、自ら不利になる離婚を求めてくるのであれば、それを保護する必要はないと考えるためです。

離婚したら子どもを引き取りたいけど、専業主婦では無理?

未成年の子どもがいる場合、どちらが引き取って育てるかを決めなければ離婚はできません。これがよく耳にする「親権問題」です。

専業主婦の場合、収入がないことを理由に子どもの親権を取れないと思う人もいるかもしれませんが、そうとばかりはいえません。親権を取れる可能性はあります。とくに、子どもが小さいうちは、母親が親権を取るケースが多くあります。

そもそも「親権」ってなに?

親権とは、子どもに対する権利というよりは、親として果たす義務と言えるものです。具体的に、親権をもった親が担う仕事は2つあります。

・子どもの身のまわりの世話、しつけ、教育をする(身上監護権)

・預貯金など子ども名義の財産を管理する(財産管理権)

民法には、親権について次のように定められています。

民法818条 成年に達しない子は、父母の親権に服する
民法819条 母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない 2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める

結婚している夫婦の場合、子どもの親権は父母共同でもっていますが、離婚の際は、父母のどちらかしか親権者になることはできません。

専業主婦の離婚が認められるまでの流れ 

専業主婦に限らず、離婚の種類には、協議離婚、調停離婚、判決離婚(裁判離婚)の3つがあります。

協議離婚の場合は家庭裁判所の手続きが必要ありませんが、調停離婚、判決離婚(裁判離婚)の場合は家庭裁判所とのやりとりが必要になるので、弁護士を入れたほうがスムーズです。最近は、協議離婚、調停離婚でも、法的な権利を守るため、弁護士に依頼する人が増えてきています。

2人で話し合って決める協議離婚 

日本ではもっとも多い離婚の方法です。夫婦双方に離婚の意思があり、話し合って離婚届を役所に提出します。

慰謝料、財産分与、親権、養育費などを取り決め、「協議離婚合意書」を、できれば公正証書として作成します。公正証書がなくても離婚はできますが、後々トラブルにならないように作っておくのが賢明です。

合意できなければ調停離婚

話し合いで合意をみられないときは、調停に進みます。家庭裁判所に離婚調停を申し立て、裁判所の調停委員を通して離婚や条件について話し合い、互いに合意できれば、調停離婚が成立します。

調停のメリットとしては、裁判官や調停委員が介入することで、話し合いがスムーズになったり、冷静になれたりすること。

調停のデメリットは、互いに納得できず調停が不成立になってしまうと、離婚裁判を申し立てる必要があること。また、調停は平日昼間に行われることが多く、何度も裁判所に足を運ばなければなりません。

それでもまとまらなければ判決離婚(裁判離婚)

調停離婚が成立しなかった場合は離婚訴訟を起こし、裁判所に離婚を認めてもらいます。

離婚するか否かだけでなく、慰謝料、親権、養育費、財産分与、面会交流についても話し合います。

裁判のメリットとしては、強制的に結論が出せること。

裁判のデメリットとしては、時間がかかることがあげられます。一般的に、期間は短くて1~2年程度、裁判費用やその間の弁護士費用などもかかります。

離婚したいけど……専業主婦の離婚をはばむ4つの理由とその対処法

専業主婦が離婚したいのに離婚できない理由として、多いのは、次の4つです。

それらの障害をある意味一掃してくれるのが「別居」という対処法です。離婚訴訟を起こした時、裁判所は別居期間を「婚姻関係が破綻している証」として重要視するからです。

離婚に必要とされる別居期間は、めやすとしては、20〜40代夫婦であれば3年、熟年離婚の場合は6〜7年。ただし、期間が法律で明文化されているわけではないので、ケースバイケースです。

では、具体的に離婚の4つの壁と、その対処法をみてみましょう。

1 収入がない

夫の収入だけに頼っているから、離婚したら生活できないと思っているなら、まず別居してみるのはどうでしょう。別居したら夫がお金をくれるわけないと思うかもしれませんが、民法上の決まりとして、別居期間中でも結婚していれば、夫から「婚姻費用」をもらうことができます。

婚姻費用とは、生活費と子どもの養育費のことで、収入の少ない側から多い側に請求することができます。金額は、配偶者の年収や子の年齢、人数によって決まります[*1]。

婚姻費用をもらいながら職探しをしたり、資格取得のための勉強をしたりして離婚準備を進めることができます。

2 配偶者が同意しない

専業主婦の場合に限りませんが、配偶者が離婚に同意しない場合は、法律上の離婚原因がなければ、原則として離婚することはできません。

法律上の離婚原因とは、

・不貞

・悪意の遺棄

・3年以上の生死不明

・回復しがたい精神病

・その他婚姻関係を継続し難い重大な事由

の5つです。ここに当てはまることを証明できれば、夫の同意がなくても離婚は可能です。

これ以外の理由で離婚したい場合、離婚原因に当てはまるけれども証拠がない場合には、別居が有効です。法律上の離婚原因がなくても、別居期間が長くなることで、離婚原因と認められるケースがあるからです。

3 子どもが小さい

これも専業主婦の場合に限りませんが、子どもが小さいことを理由に、離婚をためらうケースは多いようです。しかし、離婚のタイミングが子どもにどう影響するかはケースバイケースで、子どもが大きくなってからのほうがいいともいいきれません。

たとえば、小学校に入る前のタイミングで離婚してしまったほうが、子どもも新しい生活への順応が早く、就学中に子どもの名前が変わることも避けられるというメリットがあると、あえて早めの離婚に踏みきるケースもあります。

また、子どもが幼いほど、母親が親権をとれる可能性が高くなるのが一般的です。これは、小さな子どもには母親が必要であるとする考え方があるからです。

親権を得るためには、子どもに対する愛情の有無や面倒をみる比重、過ごす時間の長さなども見きわめのポイントとなります。子どもを連れて別居した場合は、その間の面倒を主にみていたことになるので、親権取得に有利になります。

ただし、別居前に夫が主に子どもの面倒を見ていたケースでは、別居中の子どもの「監護権」が夫に設定されることもあるので、注意が必要です。

4 自分が有責配偶者である場合

「有責配偶者」とは、不貞行為や暴力など、離婚の原因を作った側をいいます。

これも専業主婦の場合に限りませんが、有責配偶者からの離婚請求は、原則的には認められません。落ち度のない配偶者を守るためです。

ただし、別居期間が相当期間に及んでいる場合や、夫婦の間に未成年の子どもがいない場合、離婚によって相手が精神的、社会的、経済的に窮地に陥らない場合はその限りではありません。

自分が有責配偶者の場合、婚姻費用の請求は信義則上認められませんので注意しましょう。ただし、養育費は支払ってもらえます。

離婚後の不安を小さくするために専業主婦がとるべき8つの行動

専業主婦が離婚に踏みきれない理由として、もっとも多いのは、経済基盤がないこと。子どものことも、住居のことも、生活のことも、すべてこの経済基盤がなければ立ち行かないからです。

離婚を決意したとき、離婚後の生活に向けて、今すぐできることが8つあります。

1 夫婦の財産を把握する

まず、夫の年収を正確に把握します。それから夫婦共有の財産を明確にしましょう。結婚後、夫婦で形成した財産は、1/2ずつの持ち分があります。離婚したら半分は、あなたのものになるわけです。

専業主婦の場合、夫名義で預貯金をしていることが多いので、通帳などはコピーを取っておきます。そのほか、証券、不動産、車、リゾートやゴルフなどの会員権なども、あれば忘れずにリストアップしておきます。

2 仕事を確保する

以前従事していた仕事があれば、そのスキルがいかせないか、リサーチしてみましょう。経験者であれば、正社員への近道になる可能性もあります。

また、一生ものの資格を取る勉強を始めてもよいでしょう。アルバイトやパート、契約社員から始めて正社員を目指すのも堅実な方法です。

子どもが幼い場合は、預け先を決めてから仕事探しにかかるのが理想ですが、保育園の空きが少ない地域では、働いていない状態での保活はむずかしいというケースもあります。保育園事情には地域差も大きいので、市区町村の窓口にまずは相談してみましょう。

3 離婚にかかる金額を把握する

離婚後の生活にもお金が必要ですが、離婚そのものにもお金がかかります。リストアップしてみましょう。

たとえば、弁護士費用は、協議離婚で40~60万円、調停離婚で60~80万円、判決離婚で100万円ほどに加えて、離婚によってもらった金額の10%を支払うのが相場です。

無料で法律相談ができたり、弁護士費用を分割できたりする、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所「法テラス」[*2]を利用する方法もあります。

また、浮気調査の費用として探偵事務所への支払いが発生したり、各種手続きのための印紙代などの雑費もかかります。

このほか、引っ越しや新しく部屋を借りるための費用といった当座の費用も必要となります。

4 別居準備をする

何度もお話ししてきましたように、離婚に際して別居は有効な手段です。相手が離婚に同意しない場合も、こちらに離婚原因がある場合も、別居期間がある程度あれば離婚が認められるからです。

具体的に物件探しをするまではいかなくても、住もうと思っている場所の家賃相場を知ることから始めましょう。また、実家に帰れる可能性があるか、探ってみるのもいいでしょう。

5 請求できる金額を把握する

離婚前の別居期間中には、夫から「婚姻費用」を受けとれるほか、有責配偶者に対しては、慰謝料が請求できます。また、未成年の子どもがいる場合は、養育費も請求できます。

婚姻費用、養育費は、両親の収入や子どもの人数などを考慮して決められます。裁判所による算定表[*1]が公表されているので、確認しておきましょう。

また、上でも述べたように、夫婦共有の財産については、その1/2は受け取る権利があります。これを「財産分与」といいます。共有財産の金額を調べ、1/2を計算しておきましょう。

これらの金額を合算して、受け取れる金額を知っておきましょう。自分がどれだけ働いて稼がなければならないのかを考える根拠にもなります。

6 慰謝料を請求するための証拠をそろえる

夫に離婚原因となる浮気やDVなどがあるなら、その証拠を集めておきます。

浮気(不貞行為)の場合、決定的な証拠をつかむためには探偵事務所に依頼したほうが確実です。信頼できる探偵事務所は、弁護士事務所に紹介してもらうと安心です。

7 子どものことを考える

未成年の子どもがいる場合に重要になるのは、夫か妻のどちらが親権をもつか、です。親権者を決めなければ離婚することはできません。

親権をとるためには、子どもの面倒をみていることが重要視されます。たとえば、日ごろから子どもの保育園の連絡帳を主に書いていることなどもポイントとなります。

このほか、5でも説明しましたが、あらかじめ養育費の目算をつけておくことも、子どもの将来のためには大切です。

8 公的援助がどれだけ受けられるか確認しておく

子どもを連れて離婚し、ひとり親になる場合は、国や自治体から公的扶助が受けられます。

児童扶養手当、児童手当のほか、自治体によっては児童育成手当、ひとり親家庭医療助成制度、住宅手当などの援助を行っている場合もあります。

また、ひとり親に対してだけではありませんが、生活保護もあります。条件などについては、自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。

【まとめ】専業主婦でも周到な準備さえあれば離婚はこわくない! 

逆上したり、取り乱したりせず、あくまでも淡々と、ことを進めましょう。

離婚の話し合いは、「感情を対立させる」ことではなく、「離婚後の生活をどうするかのファイナンシャルプランを立てる」こと。感情にまかせて突っ走るのは賢くありません。

万全なリサーチと準備で、上手に離婚を乗りきりましょう。

この記事の監修者 中里妃沙子 弁護士
丸の内ソレイユ法律事務所 所長。東京弁護士会 所属。 離婚、相続、会社法務、労務管理、債務整理、交通事故、債権回収、賃貸借契約など幅広い分野に取り組むとともに、新聞、雑誌、テレビ、WEBメディアでも活躍。とくに離婚・男女問題については年間300件以上を法律事務所として受任し、豊富な実績を誇る。
◆丸の内ソレイユ法律事務所:http://maru-soleil.jp/
◆女性のための離婚相談:https://www.rikon-soleil.jp/

(文:暮らしのチームクレア 楠本知子/監修:中里妃沙子/漫画:まちこ)

参考文献
[*1] 最高裁判所「養育費・婚姻費用算定表」 https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html
[*2] 法テラス https://www.houterasu.or.jp/

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、弁護士に取材、および、その監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものです。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます