夫とうまくいっていない。でも、すぐに別居や離婚やに踏みきるほどじゃない。そんな状態からはじまることの多い家庭内別居。多くの夫婦の離婚や再生を見守ってきた弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の代表弁護士、中里妃沙子先生と、実例を踏まえながら、「家庭内別居」のメリットやデメリットについて考えていきます。

「家庭内別居」って具体的にどういう状態を言うの?

「家庭内別居」とはよく聞くものの、「夫との接点は減っているけど、これは家庭内別居にあてはまるの?」「家庭内別居したいけど、何をどうしたらいいの?」などと、よくわからないことも多いですよね。

「家庭内で別居をしている」という人の様子をみていきましょう。

家庭内別居とは「家は一緒だけど、生活を共にしていない状態」

家庭内別居を実践中という女性に、夫婦がどういう状態かを聞くと、こんな回答が挙がりました。

同じ家に住んでいるけれど……

・夫婦では会話をしない

・食事を一緒にしない

・寝室が別でセックスレス

・家にいても、別々の部屋で過ごす

・顔を合わせない

・自分と子どもの分の家事しかしない

家庭内別居に、明確な定義があるわけではありません。「夫はただの同居人」という人から「旦那の存在は基本無視。いないものとしている」という人までさまざまでした。

家庭内別居=家庭内離婚? 法律の解釈は?

いくつかの辞書を見比べてみると、家庭内別居=家庭内離婚としたうえで「夫婦関係が破綻していても、正式に離婚せずに同居を続けている状態」と説明しています。

中里弁護士 法律的には「家庭内別居」「家庭内離婚」という概念はありません。

家庭内の出来事は外から見えにくいので、「家の中では別々に過ごしていて、ほぼ離婚の状態だった」とどんなに訴えても、ひとつ屋根の下で暮らしている以上、原則として「婚姻関係は破綻していない」と判断します。家庭内別居状態を理由にして「離婚したい」と調停や裁判所に申し立てても、それを離婚事由として認めてもらえることは、ほぼあり得ないんです。

「家庭内別居」を実践してみた女性たちの本音

法的には「婚姻関係の破綻」とみなされなくても、家庭内別居を選ぶ女性たち。どんなきっかけで、なぜ家庭内別居をはじめたのでしょう。

また、いわゆる「家庭内別居」状態になってみて、どんな変化があったのでしょうか。

夫が面倒くさすぎて、家庭内別居に踏みきった

とくに理由はないけど、夫の面倒を見るのが嫌になってきたのがきっかけというユウコさん(仮名、27歳)。

旦那の言うことなすことが、すごく気に障って。でも『だから離婚』っていうのも大人げないような……。そこで家庭内別居に踏みきりました。仕事から帰ってきても各自の部屋で自由に過ごし、休日の予定もバラバラです。 今まで「夫が待ってる」と遠慮があって、残業も会社の飲み会への参加も控えめでした。今は自分のペースで生活できてすごくラク。『旦那が気に障る』という気持ちも、なんとなく倦怠期なのかな?とも思うので、しばらくこの状態を続けて、自分の気持ちの変化を確かめてみます。

顔を合わせれば口喧嘩。現状打破のために家庭内別居

結婚してすぐ性格の不一致を感じたものの、我慢できないほどでもなく3年が過ぎたエミコさん(仮名、30歳)。

夫の考え方に納得がいきません。勝気なわたしはつい言い返してしまい、気がつけば毎日、ささいな言い争いばかり。だから『冷却期間をとりたい』と家庭内別居を提案したんです。夫も口喧嘩には辟易していたようで、ちょうどよかったみたい。

ウチの場合は話し合って「互いの考え方や生活に干渉しない」とルールを決めました。分担してやっていた家事も、非効率を承知で自分の事は自分でやるようにしています。同居している他人だと思えば、考え方が違って当たり前。ムカつきも減りました。

ただ、いつまでもこの状態だったら、結婚している意味がないから、そのうち離婚するだろうなとは思います。

子どものために離婚に踏みきれず、とりあえず家庭内別居中

子どもに関すること以外、会話がないことに気づいたサエさん(仮名、42歳)。

夫はわたしに興味がないんでしょうね。でも夫婦ってそんなものなのかもしれませんよね。ちょっぴりさみしいけれど、子どものことを考えると離婚はねぇ……。

だから、家庭内別居をしています。といっても、もともと、子どもが小学校にあがったころから寝室は別で、セックスレス。夫は食事中もTVを見るなどしていて、会話もなかったから、彼は今も家庭内別居とは認識していないかも。

それまで、モヤモヤした気持ちのまま毎日過ごしていましたが『夫とは別居中』って、自分の中で割り切ったらちょっとだけスッキリしました。このまま関係が冷えきっていったら、離婚も視野に入れるかもしれませんね。

夫の浮気が発覚! 怒りが収まらず家庭内別居に

夫の浮気が発覚! 怒りのままに家庭内別居に突入したトモミさん(仮名、33歳)ですが、夫を愛していて、離婚する気はありません。

夫は浮気相手とは別れたと言っています。怒りも悲しみも収まりませんが、わたしは彼を失いたくない。今、もしわたしが家を出て行ったら、それこそ相手の女がヨリを戻そうとしてくるかも……。そんなのは絶対許せません!

今は寝るのも別、食事中の会話もしません。彼から話しかけてきても、必要最低限の受け答えのみ。……早く元のような生活をしたい反面、今はどうしてもそんな気持ちになれない。そんな複雑な心境から、家庭内別居状態が続いています。

子どもを優先していたら、いつの間にか家庭内別居に

気がついたら家庭内別居状態になっていたというリサコさん(仮名、36歳)。

帰宅は遅く、休日も仕事関係の都合を優先してきた夫。わたしは子どもの生活時間帯に合わせていたので、朝のお見送りくらいしか夫とは顔を合わせません。家庭内別居をしようと思ったわけではないのですが、気が付いたら、この状態になっていたんです。

今はわたしの仕事も子育ても忙しいし、顔を合わせない日があっても、夫とのこの関係には不満はありません。いわゆる「亭主元気で留守がいい」です(笑)。

とくに離婚は考えていませんが、子どもが独立したらどうしようかな……。

家庭内別居。きっかけはステイホーム

夫の在宅勤務がきっかけで「家庭内別居」を決めたマスミさん(仮名、30歳)。

共働きですが、もともと家事のほとんどをわたしが担当していました。そんな矢先に主人の会社がリモートワークを導入。彼の方が家にいる時間が長くなったのにもかかわらず、生活のペースを一切変えません。

わたしの出社日に『簡単でいいから、昼ご飯を用意してから出かけて欲しい』と言われ、堪忍袋の緒が切れました。思わず『自分のことは自分でやって!』と言ってしまい、その流れから家庭内別居に。

離婚するにはいろいろと不安ですが、かといって、こちらから歩み寄るのは納得いきません。相手の出方を見ようと思います。

知っておきたい!家庭内別居のメリットとデメリット

離婚ほど大げさでもなく、言ってしまえば気軽にすぐに始められてしまうのが家庭内別居。メリットとデメリットも確認しておきましょう。

家庭内別居におけるメリット

家庭内別居のメリットは意外にたくさんあるようです。たとえば……

・戸籍上、婚姻関係が続く

・引っ越しをしなくていい

・結婚生活の破綻が周囲にバレない

・経済的な変化が少ない

・(子どもから見た場合)父も母も同じ家に住んでいる

・関係の修復のチャンスが持てる

・夫に縛られず、自分の生活スタイルを作れる

家庭内別居は、家庭での出来事なので周囲に知られにくく、経済面での負担や子どもへの影響も比較的抑えられます。離婚を急ぐ必要がない場合や、夫婦関係の修復に向けての冷却期間としては、かなりメリットがありそうです。

また、あなたがもし結婚以来「夫優先」で、自分の行動を抑制していたのなら、本格的な別居や離婚の前に、自分の本当にやりたかったことに挑戦するなど、自分の生活スタイルを作っていくこともできるでしょう。

家庭内別居におけるデメリット

一方、デメリットを見ていくと……

・夫と顔を合わせる可能性がある

・離婚を申し立てても、婚姻関係の破綻と認められない

・子どもがストレスを感じる場合も……

一見、デメリットとしてあげられるものは多くはありませんが、そもそも「一緒に過ごしたくない」というほどに夫婦の関係が冷えきっているのだとしたら、夫がいつも近くにいるのは最大のデメリット。また両親の不仲を間近に見てしまう子どもへの影響にも注意が必要です。

また、もしかすると「家庭内別居=円満な家庭ではない」という思いが、あなた自身の心やあなたの家庭に暗い影を落としてしまうかもしれません。

「家庭内別居」を法律の観点から見てみよう

法律上、家庭内別居は婚姻関係の破綻とはみなされないのは前述の通り。家庭内別居を続けた場合に気になるあれこれを、もう少し詳しく中里先生に教えてもらいました。

家庭内別居中の夫と離婚できますか?

中里弁護士 夫婦双方の合意があれば、離婚はすぐにできます。逆に言えば、もしあなたが離婚したくても夫が同意しなければ、当然離婚はできません。裁判所に「家庭内別居の状態だったので、離婚を認めて欲しい」と訴えても、共に暮らしている以上は難しいでしょう。

離婚の意思があるならば、家庭内といわずに、一刻も早く家を出て「別居」期間を積み重ねた方が、裁判所から「婚姻生活の破綻」が認められやすくなります。

家庭内別居中の夫から離婚を請求されたのですが……。

中里弁護士 あなたに離婚の意思がなければ、「家庭内別居って、裁判所に訴えても離婚事由には認められないのよ」と突っぱねることが可能です。

ところで、家庭内別居状態になった理由は何でしたか? 民法第752条で「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。夫が家庭生活に非協力的だったなど、この状態になった理由が夫の方にあるのに、それでも夫が離婚請求をしてきた、ということはないでしょうか。

本当にこのままの生活が幸せなのか、一度ご自身でも考えてみてはいかがでしょう。絶対に離婚したくない場合と、金銭面などの条件によっては離婚も視野に入るケースでは、夫への対応もかなり変わってきそうです。

家庭内別居中だからと家計に入れるお金を減らされました。

中里弁護士 ごくまれにですが、家庭内別居を理由に、夫が家に入れるお金を減らすなどの、金銭トラブルが発生しています。

民法760条で「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」とあり、婚姻関係が続いている以上、「婚姻費用」として、収入の少ない側から多い側へ、生活費などとして一定の金額を請求できます。金額は、「夫婦双方の年収」「自営業か、給与所得者か」「子どもは何人いるか」によって、最高裁判所の示す算定表[*1]に従って決まります。

通常は別居している場合に行われることが多い「婚姻費用請求」ですが、同居していても申し立てることはもちろん可能です。家庭内別居をきっかけに金銭トラブルに見舞われたら、ぜひ弁護士に相談してください。

家庭内別居中に夫が浮気!これって仕方ないですよね?

中里弁護士 家庭内別居といっても、あなたたちは法律で認められた立派なご夫婦。民法上、夫婦間には貞操義務がありますから、たとえあなたが家庭内別居を言い出した側だとしても、夫の浮気を「仕方がない」とあきらめたり、ましてや自分を責めたりする必要はありません。

夫の不貞行為(浮気)に明白な証拠があるなら、あなたは夫の同意なく離婚することもできますし、離婚をしなくても、不貞行為を理由に、夫に対して、あるいは浮気相手に対しても、慰謝料を請求することが可能です。

夫の不貞行為を許すか許さないかは、あなたの心次第。夫と別れたいのか、関係を修復したいのか、あなたはどちらですか?

家庭内別居をしたら、離婚の際に不利になりますか?

中里弁護士 通常は、家庭内別居状態だったからと言って離婚の際に不利になることはありません。法律上は、家庭内別居であろうとなかろうと、何も変わらないからです。

ただ、家庭内別居から、本当の「別居」に進む例を、数多く見てきました。そして、「別居」はある程度期間が長くなれば、「離婚」の理由として裁判所に認められやすく、実際に「別居」から「離婚」へと進む例はとても多いです。

あなたがもし、離婚はしたくないのであれば、なるべく家庭内別居中に、夫婦関係の修復に向けて動き出すことをおすすめしたいです。逆に、いずれは離婚したいのであれば、そこに向けての準備期間として使うなど、次の一手を考えておくことは心構えとして必要かもしれませんね。

「家庭内別居」成功の秘訣4つのポイント

些細なきっかけから、あるいは、とくに理由もなく始まることも多い家庭内別居。この先どうしたらいいんだろうと戸惑うこともありますよね。

多くの実例を見てきた中里先生のお話から、「家庭内別居」を成功に導くルールを探し出してみました。5つのポイントをご紹介しましょう。

家庭内別居のゴールを考える

家庭内別居をするのであれば、「ゴール」を明確にしておきましょう。

この別居は「夫婦関係の修復を狙ったもの」なのか「離婚のための最初のステップ」なのか。それによって今後の行動が変わります。

また夫にも「なぜこんな状態になっているのか」を理解してもらわなければ、前向きな解決はありません。

気がついたときにはこの状態だったというなら、あなたが「家庭内別居状態だ」と感じているのはどの点か、一度じっくり考えてみましょう。「夫婦のすれ違い」だと感じる点を明確に夫に伝えられれば、改善点がみつけやすくなるはずです。

離婚へのステップとしての家庭内別居であれば、離婚や別居に踏みきるまでの期間も定めて、準備を進めましょう。時間は有限です。どっちつかずの状態を続けることには、あまりメリットがありません。

子どもへの配慮を相談する

子どもへの影響を考えて、離婚ではなく家庭別居を選んだのなら、夫婦の不仲を子どもに悟らせない、せめて悪影響をなるべく減らすための工夫が必須です。子どもが悲しんだり、ストレスを感じさせたりすることがないように「食事中はこれまでどおりに過ごす」「月に1度は家族で出かける」など、親として最大限できる配慮について夫婦で話し合いましょう。

中里弁護士 夫婦喧嘩は、児童虐待防止法第2条の『児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力』に該当することがあります。身体的な暴力だけでなく、夫婦の激しい口論を見せることも児童虐待ですので、思いあたる人は今すぐ改善しましょう。

相手を干渉しないよう、ルールを設ける

同じ家で暮らしている以上、共通で使うものがどうしてもでてきます。特に家事や家計についてきっちり夫婦で分ける場合、お互いの分担についてルールを決めておきましょう。

また「子どもへの配慮」にもつながることですので、互いの存在を無視し合うのではなく、顔を合わせたら挨拶をするなど、社会生活で普通に行っていることは家庭でもなるべく行いましょう。

決めたことはきちんと守り、お互いに干渉せず適度な距離を保つことが、ストレスなく暮らすコツです。

自分のためのスペースをもつ

「寝室は別」とはよく聞きますが、現実的には片方が夫婦の寝室を占拠してしまい、追い出された方がリビングなどで寝起きするケースも多いとか。リビングはあくまで家族で過ごす場です。部屋数が少なければ寝室を区切るなどして、個人で過ごせるスペースを設けましょう。

ゆっくりとひとりでくつろげるスペースがあると、心の余裕も保てるはず。

【アドバイス】家庭内別居を考えているor家庭内別居中の女性たちへ

中里弁護士 家庭内別居は、男女差による考え方の違いで生じていることが多い印象です。

たとえば、夫が帰宅したら部屋に閉じこもってゲームばかりしているとしましょう。本当に夫側は「ゲームをしたいだけ」だったりするんです。でも、妻は「自分の存在を否定された」と悲観してしまう……。このようなすれ違いの状態を「家庭内別居」と呼んでいることも多いようです。

同じ人間ながら、男性と女性では生物学的に思考回路が違うといわれています。女性のあなた側の尺度で、男性側の行動について「こうに違いない」と決めつけ、悲しんだり怒ったりすると、すれ違うばかりです。深く考えこまず「これは男女の違いだな」と割りきってみることも、ときには大切ですよ。

夫とコミュニケーションがもてないその時間を、「わたし個人の自由な時間なんだ」と明るくとらえて、前向きに過ごしているうちに、いつの間にか家庭内別居状態も解消されていた、なんてこともあります。

ただし、いずれは離婚しようと決意が固いなら、家庭内別居を長く続けるメリットはあまりありません。人生は短いですよ。離婚、あるいはその前段階としての別居に向けて、ロードマップを明確にしていきましょう。

まとめ

「家庭内別居」の成功の秘訣は、「どうしてこうなったのか」という実態をつかむことと「今後どうしたいのか」とゴールを決めることがポイントになりそうです。

むしろ「離婚するよりずっとラク!」と楽観的にとらえていれば、いつかは自然と解消してしまうものなのかもしれません。

それでも、どうしても「家庭内別居」について悩んでしまうなら、弁護士など専門家の力を借りるなどして、ストレスをためこまず、前向きに生きる方法に目を向けていきましょう!

(文:暮らしのチームクレア 川口裕子/監修:中里妃沙子弁護士/漫画:ひらたともみ)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]最高裁判所「養育費・婚姻費用算定表」

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、弁護士に取材、および、その監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものです。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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