自身の楽曲制作やコンサートなどの活動をはじめ、テレビ朝日系報道番組「サタデーステーション」「サンデーステーション」のオープニングテーマ提供、アーティストへの楽曲提供など、多岐に渡る活動をしているジャズピアニストの桑原あい。4歳からエレクトーンを始め、常に音楽と共に生きてきたミュージシャンとしての人生についてインタビューを実施した。

 

―ピアノを始めたキッカケを教えてください。
 私はピアノの前にエレクトーンから入っていて、始めた時のことは覚えてないんですけど、4歳の時だったと思います。姉が2人いて今は2人とも作曲家なんですけど、姉が音楽教室に通っていたので、私も通い始めた感じですかね。小学4年生の時には初めて出たコンクールで日本一になったんですけど、その時に演奏した曲のベースに感動して「こういう音楽をずっとやりたい」と思って。その時から「自分には音楽しかない」とわかっていたんだと思います。コンクール前とかは朝の9時から夜中の1時とかまで練習していたんですけど、 “やめたい”と思ったことはなかったんです。物心がついた時には音楽があったので、やめ方がわからないというよりかはやめる意味がわからないって感じでしたね。

―そこからどのようにピアノに転身されたのですか?
 中学2年生までエレクトーンをやっていたんですけど、すでにジャズには出会っていたので「いつかピアニストになるんだ」とは思っていたんです。それで中学2年生になったくらいの時に「そろそろピアノにいかないとまずいんじゃないか」という焦りが出てきて、エレクトーンをやめて。どうしようかなと思っている時に、一番上のお姉ちゃんのピアノの先生が声を掛けてくださって。その先生は私のエレクトーンの演奏もずっと見てくれていて、私の演奏にすごく感動したと言ってくださる先生で、その先生のご自宅でクラシックのピアノのレッスンを始めました。エレクトーンとピアノって全く違う楽器なので最初は全然うまくいかなくて。でもその先生が常に私に自信をつけてくれたんです。中学3年生になって、進路に迷っている時には「ジャズコースがある音楽学校があるよ」って洗足学園高等学校のパンフレットを持ってきてくれて。そこの学校に入学してさらにピアノの幅を広げていった感じです。

―ピアノで初めて賞をもらったのはいつ頃だったのですか?
 それは遅いですよ。2015年とかだったと思います。スイスで行うモントルー・ジャズ・フェスティバルの日本人代表を決めるコンクールがあって、それで選ばれたのが最初だと思います。小さい頃はエレクトーンのコンクールにずっと出ていて、例えば全日本だと全国から集まった出場者が10人くらいいるんですけど、私が1位をとったらそれ以外の人たちはボロ泣きするわけですよ。そういうのを小学4年生〜6年生までずっと見ていて、「何で音楽をやってこんなに泣かないといけないんだろう」って思うようになってしまって。私が習っていた先生も音楽をできる喜びよりかは、勝ち抜くための音楽みたいな感じだったので、コンクールに出る意味があるのかなと思ったんです。そこからコンクールはしばらく離れてしまいましたね。だけど今思えばあの3年間で培ったものもあって、その一つは集中力かなと思います。音楽が楽しかったかどうかは正直覚えてないけど、コンクールって4分間とか5分間で観客に伝えないといけないんです。それで1位が決まっちゃうんですよ。だからそれまでにどれだけ練習したって、本番で演奏が止まっちゃったら終わりだし。そういう時にどれだけ集中力が出せるかが大事なので、そういう意味では集中力はコンクールを通じて身につけた部分も大きかったです。あとはお客さんへ伝えるという経験ですね。ホールとかで弾くにはやっぱりお客さんとの距離感って結構あって。どこまで表現すれば伝わるだろうってことを考えたりするんですけど、そういうことを小学校高学年でできたということが財産だと思うし、その時に浴びていたスポットライトがやみつきになって今があるっていうのもありますね。だから今はエレクトーンをやっていてよかったと思っているかな。でも24歳くらいまではそうは思えなくて。エレクトーンからピアノに行く時の挫折の方が大きく自分にのしかかってしまったので、何で最初からピアノをやらなかったんだろうってずっと思っていました。だけど、そんな風に思っていてもピアノが嬉しくないよなって今は思います。今自分が曲を作る時も実際にピアノを弾いて作ったりはしなくて、頭の中で音を鳴らして譜面に書いていくんです。それもエレクトーンが一人でオーケストラができる楽器だったからできるようになったわけで。そういうのは絶対にエレクトーンのおかげだと思っています。

―桑原さんが思う音楽の魅力を教えてください。
 ありすぎますよね。 “人だな”って思うところかな。音楽には人が出るんですよ。その人が一音出すだけでも出るんです。だから人を感じられるところが素晴らしいと思います。あとはやっぱり純粋に楽しいものだと思います。“音を楽しむ”と書いて“音楽”なので当たり前なんですけど、めちゃくちゃ練習しないといけない時とかって、音楽は楽しいものだということを見失うことがあると思うんです。以前私が超大御所のドラマー、スティーヴ・ガッドと共演した時に「自分が一番気持ちよくないとお客さんは何も楽しくないんだよ」って言われて。多分私がいろいろなことを考えすぎて楽しめていないっていうことを彼は察したんでしょうけど、それを言われてから肩の力が抜けてすごく楽になったんです。やっぱり言葉では伝えられない何かが伝わることもあるし、音楽は素晴らしいツールだと思っています。

―楽器が上達するコツを教えてください。
 耳で盗むことですかね。例えばピアニストだったら、好きなピアニストの曲を聴いて、その曲を流しながら自分も一緒に弾いてみたりすると、ニュアンスが全く違うことに気づいたりするんです。あとは視野を広げること。人と一緒にやることはすごくタメになると思います。例えば吹奏楽部の子だったら自分の楽器の譜面だけを見るのではなくて、フルスコアの楽譜を見てみること。そうすると、「ここにも私と同じフレーズを弾いている子がいた」とか「この楽器は私の楽器のこのフレーズに対してこういうフレーズを弾くのか」とか、音楽に対して愛着が湧いてくるんですよ。他のところに目を向けるだけで世界が変わって見えたりするんです。それがすごく楽しいし、やっぱり人と繋がっていると思えることって、絶対ポジティブな影響を与えると思うので、それはやってみてほしいですね。

―今後、どういったミュージシャンになっていきたいですか?
 私のミュージシャンとしての夢は、60歳になった時に一番良いピアノを弾くということです。映画音楽を作ってみたいとかもあるんですけど、一番は60歳までピアノを弾いていたいかな。続けることって一番大変だと思うので。それまでの人生をしっかりと歩んでいれば、その時にすごい音が出せるんじゃないかなと思います。

 

■REREASE

『My First Disney Jazz』
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【インタビュー】ジャズピアニスト・桑原あいが、音楽と共に生きてきたミュージシャン人生について語る

 

桑原あいのピアノを中心に、ゲストミュージシャン、ヴォーカリストを迎え、ディズニーの名曲をジャズ・アレンジ。『アラジン』『美女と野獣』『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』『塔の上のラプンツェル』『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』など数々の名作の楽曲がジャズ・アレンジになって新たな魅力を引き出されている。

UWCD-1047 ¥3,200(tax in)

 

■profile

桑原あい

1991年生まれ。洗足学園高等学校音楽科ジャズピアノ専攻を卒業。これまでに9枚のアルバムをリリースし、JAZZ JAPAN AWARD2013アルバム・オブ・ザ・イヤー、第26回ミュージック・ペンクラブ音楽賞、JAPAN TIMES上半期ベスト・アルバム(ジャズ部門)など受賞多数。またモントルー・ジャズ・フェスティバルや東京JAZZ、アメリカ西海岸ツアーなど国内外を問わずライブ活動を精力的に行う。2019年8月18日に全編ディズニー楽曲のカバー・アルバム「My First Disney Jazz」をディズニー・オフィシャルとしてWalt Disney Recordsよりリリース。