現在発売中の『野球太郎No.009 夏の高校野球大特集号』、そして7月18日に発売される『野球太郎No.010 高校野球監督名鑑号』では、全国の名将・知将はもちろん、地元なら誰もが知っているご当地の名監督や、将来有望な若手監督など、さまざまな視点から高校野球の監督にスポットを当てている。

 中でも今年注目なのは、個性的な球歴を持った「ルーキー監督」が多いことだ。その中から3人をピックアップし、これまでの足跡と今大会での展望を探ってみたい。


◎金沢学院東高(石川県) 金森栄治監督

 学生野球資格回復の新制度によって、今春から金沢学院東高の監督に就任したのが西武、阪神、ヤクルトで活躍した金森栄治氏だ。

 現役時代はデッドボールが多いことで知られ、後年は代打の切り札として、またベンチでのムードメーカーとしてファンに親しまれてきた金森監督。現役引退後は古巣であるヤクルト、西武、阪神のほか、ソフトバンク、ロッテと計5球団で打撃コーチなどを歴任するなど、卓越した打撃理論の持ち主として球界では評価が高い。

 金森監督といえば、中学校からPL学園に通い、高校時代には甲子園出場を果たすなど「PL出身」のイメージが強いが、実は生まれてから小学校を卒業するまでは石川県金沢市で過ごした。2007年からは地元石川に誕生した独立リーグ・BCリーグの石川ミリオンスターズの初代監督に就任するなど、実はかなりの郷土愛の持ち主だ。それだけに、今回の監督就任にも期するものがあるだろう。

 金沢学院東高野球部は2007年夏のベスト4が最高成績で、甲子園出場はまだない。これまで培ってきた打撃理論とムードメークを高校球界でいかに発揮できるのか、多いに注目される。

◎明桜高(秋田県) 八木茂監督

 金森監督同様、学生野球資格回復の新制度によって今年1月20日付で高校野球指導者の認定を受けたのが阪急、阪神で活躍した八木茂氏だ。

 興國高(大阪府)時代に甲子園出場は果たせなかったが、早稲田大進学後は主将を務めるなど東京六大学リーグで活躍。社会人野球の東芝を経て1980(昭和55)年に阪急入団、1984(昭和59)年に阪神でプレーしたあと引退した。

 現役引退後は目黒西シニアや大正大で監督を、昨年までは母校の早稲田大でコーチを務めていた。指導者としての実績は豊富なだけに洞察力が鋭く、選手の力の引き出し方を知っている。

 明桜高という校名は聞き慣れないかもしれないが、秋田経法大付高といえば、甲子園出場13回を誇る秋田県の野球強豪校だ。しかし、最後に甲子園に出場したのは2009(平成21)年の夏。その後は、よくても県大会準々決勝までしか進めていない。それだけに“名門復活”に向けて八木監督にかかる期待は大きい。守備と走塁に重点をおいたスキのない野球で、阪神時代以来となる“甲子園への帰還”を果たすつもりだ。

◎秀岳館高校(熊本) 鍛治舍巧監督

 アマチュア球界きっての名伯楽・鍛治舍巧氏が「生涯の夢であった」高校野球の監督に就任した。

  松下電器野球部監督(現パナソニック)、全日本コーチなどを歴任。中学野球の枚方ボーイズの監督も務め、主要大会5冠を独占するなど、数々の実績を残してきた鍛治舍監督。高校野球ファンであれば、NHK甲子園中継の名物解説者として覚えている方も多いだろう。

 選手としても県岐阜商高のエースとして1969(昭和44)年のセンバツで8強入り。早稲田大を経て、社会人野球の名門・松下電器に入社した。1975(昭和50)年には阪神からドラフト2位指名を受けたが入団を断るという、アマチュア野球にこだわり続けた男だ。

 また、野球以外でもパナソニックのブランドコミュニケーション本部長・宣伝担当を務めた後、専務役員待遇で企業スポーツ推進を担当。オリンピック関連の業務やガンバ大阪の取締役を務めるなど、知名度、交友関係、経験値で右に出る者はいない、と言われていたほどだ。

 松下電器では潮崎哲也(元西武)や小池秀郎(元近鉄ほか)らを育て、枚方ボーイズでも国吉佑樹(DeNA)らを指導するなど、プロ野球界に教え子も多い。これまでの経験値と理論が高校球界でどのように発揮されるのか。アマチュア球界全体が注視するのは間違いない。


 今回取り上げた「ルーキー監督」3人に共通するのは、いずれも早稲田大出身である。仰ぐ理想の光の先に輝く未来はあるのか? 今夏の結果や采配にも期待したいが、高校野球はこの先もずっと続いていく。単年だけにとどまらない、腰の据わった指導力にも期待したい。

 雨天順延がなければ秀岳館高は7月11日(金)、金沢学院東高、明桜高は12日(土)に夏の大会、初戦を迎える。
(文=オグマナオト)


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