今から34年前の1980年8月1日。プロ野球史に燦然と輝く偉大な記録が生まれた。野村克也(当時西武)による「史上初の3000試合出場」である。戦後初の三冠王や右打者としては歴代1位の657本塁打、通算出場試合数歴代1位など、輝かしい経歴を持つ野村氏。ところが、今季のプロ野球で、これまで保持していた「歴代1位記録」が次々と更新されている。そんな「更新された記録」を振り返ることで、改めて稀代の名捕手・野村克也の偉大さを掘り下げてみたい。

◎更新された記録……通算出場試合3017

 まずは冒頭でも挙げた、史上初の3000試合出場を今一度振り返ってみよう。1980年8月1日、西武球場で行われた西武vs南海で「8番捕手」として先発出場し、3000試合出場を達成。1954年に南海入りし、同年6月17日、大阪球場で行われた対西鉄戦に初出場して以来、27年がかりでこの大記録を成し遂げた。

 野村氏はこの年限りで引退。通算出場試合は3017試合でピリオドが打たれた。NPBにおいて、いまだに3000試合出場を達成した選手がいないことだけでもこの記録の偉大さがわかるというもの。だが、さらにスゴいのは、捕手という過酷なポジションで2921試合に出場したことだろう。

 しかし、今季、海の向こうアメリカでこの「通算3017試合出場」はあっさり更新された。現地時間4月9日(日本時間10日)、ヤンキースのイチローがオリオールズ戦に代走で出場し、日米通算3018試合出場を達成。日本人の記録としてはイチローが歴代1位に躍り出ることになった。

 3017試合出場で歴代1位に並んだ日に発した「出ているだけで数字が伸びる記録に、僕は価値を見いだせない」というイチローのコメントに、野村氏は何を思っただろうか?

 もっとも、NPB記録としてはまだまだ野村氏が歴代1位であることに変わりはない。だが、現在歴代2位は中日の谷繁元信兼任監督で、2956試合(※7月28日現在)。今季中の更新はなくなったものの、ケガなどがなければ来季の早い段階で新記録が生まれることになりそうだ。

◎更新された記録……25年連続本塁打記録

 7月22日、中日の谷繁元信兼任監督が今季第1号となる本塁打を横浜スタジアムの左翼席へ運んだ。これで谷繁は26年(1989年〜2014年)連続本塁打記録を達成。これまで、25年で野村氏(1956年〜1980年)と並んでいた「連続本塁打記録」を塗り替え、単独1位となった。

 またしても「歴代1位」を失った野村氏。ただ、他の本塁打記録でもまだまだ輝かしいものはたくさんある。たとえば、「連続シーズン2ケタ本塁打」は21年連続(1957年〜1977年)。これは王貞治氏の記録(1960年〜1980年)とともにまだ野村氏が歴代1位タイである。また、王氏の影に隠れがちだが、本塁打王9回獲得と8年連続(1961〜1968年)はいずれもパ・リーグ歴代1位の記録である。

 そして、通算本塁打657本は、日本はもちろん、MLBを含めても捕手としての世界記録だ。MLBの捕手で最も本塁打を多く打ったのが野茂とバッテリーを組んだことで日本でも有名なマイク・ピアッツァ(元ドジャースほか)で427本(※捕手以外のポジションでの出場時も含む。以下同)。史上最高の捕手といわれるジョニー・ベンチ(元シンシナティ・レッズ)で389本。野村氏の記録がいかに突出しているかがわかるだろう。

◎更新されそうな記録……捕手最年長出場記録

 配球や洞察力によって、捕手というポジションに革命をもたらしてきた野村氏。捕手としてのベストナイン受賞記録19回は史上最多を誇っている。そんな野村氏が持つ「捕手記録」で、今すぐにでも更新されそうなものがある。それは捕手としての「最年長出場記録」だ。

 野村氏が最後に捕手として試合に出場したのが1980年10月4日のロッテ戦で、正確には「45歳3ヶ月5日」。これに対して、日本ハムの中嶋聡が今季6月27日の楽天戦でマスクをかぶった日は「45歳3ヶ月0日」。今度、捕手として試合に出ることがあれば、NPB史上最年長捕手が誕生することになる。

 座右の銘を「生涯一捕手」とし、現柄引退後も捕手というポジションに並々ならぬ情熱と誇りを持ち続けてきただけに、この記録が更新されたときこそ、一番悔しがるのではないだろうか。


 ただ、選手としてこれだけの数字を残し、監督としても日本一を何度も達成した実績は、王貞治氏や長嶋茂雄氏、衣笠祥雄氏、そして松井秀喜氏にも決して見劣りすることはない。実績的には「国民栄誉賞」にふさわしい人物であることも最後に明記しておきたい。
(文=オグマナオト)


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