なぜ糖質を制限すると痩せるのかを知ろう


ダイエット中は糖質が少なめの食品を食べることが基本ですが、糖質も人にとってとても重要な栄養素です。極端に減らせば、体調不良やリバウンドなど、さまざまな弊害に見舞われるリスクが高まります。ここで、失敗のない正しい糖質制限の方法を管理栄養士の篠原絵里佳さんに教えていただきました。

糖質制限ダイエットとは?

糖質制限とは、糖質が含まれる食品や食材の摂取量を減らすことで体重を落としていくダイエット法です。ここ数年、ダイエット法の主流となっています。この糖質制限は本来はダイエットのためのものではなく、糖尿病患者の血糖値コントロールのために考案された方法です。医学的なエビデンスに基づいたものなので、たしかに糖質の摂取を制限すれば体重はラクに落とすことができます。ただし、糖質制限はあくまでも糖尿病患者もしくは、糖尿病予備軍のための栄養摂取法になので、血糖値に不安のないような健常者が糖尿病患者と同等の糖質制限をすると、健康面で問題が生じることもあるので注意しましょう。

糖質制限するとなぜ痩せられる?

少し前までは脂質制限がダイエットの主流でしたが、それにとってかわり、ここ数年は糖質制限が主流となっています。なぜこの糖質制限にそれほどまでに注目が集まっているのでしょうか?その理由は、体脂肪がつく最大の原因が「糖質」ということがわかってきたからです。

ご飯などの炭水化物や砂糖が体内に取り入れられると、ブドウ糖(血糖)に変わり、血液中に放出されます。この血糖の量を数値化したものが「血糖値」です。通常、糖はすい臓から分泌されるインスリンというホルモンと結合し、グリコーゲンという物質に変換されて肝臓と筋肉に貯蔵されます。しかし、それらが肝臓と筋肉に貯蔵できるグリコーゲン量には限りがあり、貯蔵しきれなかった糖はすべて体脂肪として貯蔵されることになります。

さらに、インスリンが一度に処理できる血糖の量には限りがあり、糖質を含んだ食品を一度に大量に食べると、インスリンは糖を処理しきれず、血中には大量の糖が漂った状態に。これが高血糖と呼ばれる状態です。そして、最終的には処理しきれなかった血糖はすべて体脂肪に変わってしまいます。つまり、糖質の摂取量を減らせば、使いきれず、貯蔵しきれない糖が大量発生することはありませんし、高血糖状態になることもありません。その結果、体脂肪が増えにくくなるというしくみです。

さらに、糖質は体を動かす時の主要エネルギーのため、その糖質が不足すれば体は不足分を補うために、体脂肪を分解してエネルギーとして使用します。こういったメカニズムゆえ、糖質の摂取を制限して体内の糖を枯渇させれば、体脂肪が減らせるということになります。糖質制限はこうしたしくみを利用したダイエットなのです。

糖質制限ダイエット成功のコツは「必要最低限の糖質は摂取する」


糖質を抑えるダイエットはたしかに短期的に効果を得られるダイエットです。ただし、「必要最低限の糖質は摂取する」が正しい方法です。糖質制限を行う場合は、ご飯やパンなどの主食は抜いてもOKです。ただし、おかずのなかで糖質を含む食材を食べ、糖質もある程度は摂取しましょう。また、食物繊維が豊富な野菜は毎食たっぷりと食べましょう。

正しい糖質制限のポイント

【必要最低限の糖質は摂取しましょう】
1日で摂取すべき糖質量の目安は、体重1kgあたり約5gです。体重50kgの人であれば、1日の糖質摂取量の目安は、50kg×5g=250gになります。食品のパッケージなどに表示されている糖質(炭水化物)量をチェックする習慣をつけて、うまくコントロールしていきましょう。

【肉・魚・大豆製品を欠かさず食べましょう】
筋肉を減らすとますますやせにくくなります。筋肉の材料であるタンパク質はしっかり摂りましょう。

【野菜や海藻、キノコをたっぷり食べる】
野菜に含まれる食物繊維は糖の吸収をおだやかにして高血糖になるのを防いでくれます。

糖質制限ダイエットの基本は、OKな糖とNGな糖を知ること


糖は3つに大別されます。一つは「単糖」。これは、それ以上分解することができない糖です。単糖が2〜10個程度の単糖が鎖のようにつながったものが「少糖類」、単糖が11〜数百万個の単糖が鎖のようにつながったものが「多糖類」に分類されます。鎖が短いほど体内に入ってから吸収されるまでの時間が短くなります。鎖が長い糖ほど鎖を切り離すことに時間を要するため、吸収スピードは遅くなります。このしくみを理解しておけば、シチュエーションに応じた糖の使い分けができるようになります。

吸収スピードが速い糖と血糖値の上昇は比例するため、糖質制限ダイエット中にはできるだけ吸収スピードが遅い多糖類を含む食材を食べるようにしましょう。ちなみに、フルーツに含まれる果糖は吸収スピードが速い糖なので、糖質制限ダイエット中に食べる場合は、昼間のみとし、夜に食べることは控えてください。

糖の種類

<単糖類>
果糖(フルクトース)、ブドウ糖など

果物、ハチミツ、スポーツジェル、あめなどに豊富に含まれる糖質です。非常に吸収スピードが速いため、スポーツ中の栄養補給などに使用されることが多い糖です。血糖値が急上昇しやすいため、とりすぎに注意しましょう。

<少糖類(オリゴ糖)>
しょ糖(砂糖)、麦芽糖(水あめ)、乳糖(牛乳)など

単糖よりは吸収スピードは遅いものの、単糖同様に血糖値を急上昇させやすい糖です。ケーキなど、甘いお菓子などはこの糖を使ったものがほとんどです。日常生活では食物繊維の豊富な食品と一緒に摂る、あまり遅い時間帯には摂らないなどの工夫を。

<多糖類>
穀類、イモ類など

ご飯などの穀類、イモ類などの炭水化物に含まれる糖は単糖が鎖のようにつながってできているため、単糖や少糖よりも消化時間が長くなります。そのため、血糖値の上昇がおだやかになります。白米などの精白されたものより、玄米のような精白されていないもののほうが消化時間は長くなるため、糖質制限中は白い穀類より茶色の穀類をおすすめします。

種類の食物繊維が糖質制限ダイエットを成功に導く

糖質制限ダイエット中に食べるべき食品のトップは野菜や海藻、キノコなどの食物繊維豊富な食品です。食物繊維は胃では消化されることなく腸へと移動し、腸壁にバリアを作って腸内に入ってきた糖を腸壁から過度に吸収されるのをシャットアウトし、血糖値の急上昇を防いでくれるからです。

食物繊維には、不溶性と水溶性の2つのタイプがあります。不溶性は老廃物をほうきで掃くように掃き出して体外へと排泄させる働きをもちます。水溶性は、余分な糖質や脂質を包み込むように吸着して排泄する働きをもちます。食物繊維の豊富な食材を使った食品は糖質だけではなく、カロリーをコントロールしたい人にとっても必須です。毎食、主食やメインディッシュ(主菜)を食べる前に食べるようにしましょう。

食物繊維の種類と、多く含まれる食材

不溶性食物繊維

水に溶けにくい性質をもつ食物繊維で、水分を吸収して数倍から十数倍に膨らみ、腸壁を刺激して腸のぜん動運動を高めることにより、便の排出を促してくれます。脂質や糖質が過剰に腸壁から吸収されるのを防いでくれます。

<多く含まれる食材>
こんにゃく、きくらげ、いんげん豆、ひよこ豆、おから、あずき、えんどう豆、大豆、グリンピース、モロヘイヤ、ゴボウ、納豆、枝豆、エリンギ、干ししいたけ、アボカド

水溶性食物繊維

水に溶けやすい食物繊維です。腸内で水分を含むことによりヌルヌルとしたゲル状になり、腸内の有害成分を吸着して排泄してくれます。余分な脂質や糖質を吸着して吸収を妨害する働きももちます。

<多く含まれる食材>
ゴボウ、納豆、オクラ、いんげん豆、トマト、さつまいも、ニンジン、春菊、切干大根、ワカメ、イチゴ、リンゴ、オレンジ

無理は禁物!糖質制限ダイエットの落とし穴


糖質制限ダイエットは、もともとは糖尿病の人や血糖値に問題がある人のために考案された食事管理法です。そのため、医学的にもその効果は実証されています。正しい方法で行えば、健康を害するものではありません。

問題なのは、短期間で痩せたいという人が行う、糖質の摂取量を限りなくゼロに近づけることを目指す、過激な糖質制限ダイエットです。このダイエットは、肉と野菜は好きなだけ食べてOK。いままでの食事制限と比べて、空腹感やもの足りなさ感がないため、ツラさも感じることなく続けられることで、挫折率が低く、短期間で痩せられるといわれています。ただし、この糖質制限ダイエットのリバウンド率は想像以上に高いのです。その理由は、糖質だけを極端にカットすることで、逆に糖質をため込みやすい体質になってしまうからなのです。

人の体は、ある特定の栄養素が極端に足りなくなると、次に体内に取り入れられたときには、無駄なく体に溜め込もうという省エネモードに変換されます。つまり、糖質摂取を限界までカットすると、体は次に糖質が入ってきた時にできるだけ無駄なく体脂肪として保管しておこうとします。そして糖質飢餓状態が続くと体の溜め込みモードはどんどん進行して、わずかな量の糖質摂取でも体脂肪が増えやすい体質になってしまうのです。

さらに、運動などをしてエネルギーが必要な時でも、糖質をエネルギーの材料として使おうとしなくなります。かわりに使うのが筋肉=タンパク質です。筋肉を溶かして、タンパク質を糖のかわりに使おうとするのです。すると、筋肉の量は減り、基礎代謝が落ちてさらに太りやすい体質になってしまいます。

もう一つ、糖質は体脂肪を燃焼させる時の着火剤の役割を果たします。火をおこすためのマッチがない状態といえばわかりやすいはずです。体脂肪は燃料で、糖質が着火剤なのです。糖質不足が続くと体脂肪燃焼は滞り、減らせなくなってしまうのです。

以上のことから、過激な糖質制限ダイエットのすえに訪れるのは、通常のリバウンドよりもさらにひどいリバウンドということがわかっていただけたかと思います。

 

監修:篠原絵里佳(しのはらえりか)/管理栄養士。総合病院、腎臓・内科クリニックを経て独立。長年の臨床経験と抗加齢医学の活動を通し、体の中から健康を作る食生活を見出し、最新情報を発信している。アスリートの栄養指導経験も豊富。睡眠改善インストラクター、睡眠健康指導士としても活躍。食事と睡眠の観点から健康にアプローチする「睡食健美」を提唱。
ライター:楠田圭子