新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校を受けて短縮された小中高校の夏休み。東京都など多くの学校で1日、スタートした。受験生にとって、夏休みは苦手を克服したり、基礎を固めたりする大切な時期だが、今年は過密スケジュールに追われそうだ。(伊藤史彦、江原桂都)

■時間足りず

 「夏休みは短く、部活の引退も延び、受験勉強に専念する時間が足りない」

 1日に夏休み入りした千葉県立高校3年の男子生徒(17)は焦りを募らせる。男子生徒は卓球部に所属しており、例年6月にあった最後の大会がコロナ禍で8月中旬に開かれることになった。夏休みは苦手な理科と国語を重点的に勉強する予定だが「最後の大会が開かれるのはありがたいけど、勉強時間を十分取れるか不安がある」と語る。

 大手予備校は、高校の夏休み短縮を踏まえて夏期講習のスケジュールを組む。河合塾の一部校舎では7月の授業を夜間に行い、8月は2週目以降に多くの講座を配置した。駿台予備学校では例年、受験生は授業を1日最大3コマ受講できたが、今年は8月10〜22日の間、授業開始を1時間10分早めて午前8時40分とし、最大4コマ受けられるように変更した。

■お盆返上

 高校が、お盆期間も補講を行うケースもある。

 埼玉県内の進学校・県立川越高校の夏休みは、8月8日からの17日間となる。同校では毎年、夏休みに生徒が任意で参加する志望校別の補講を行ってきた。

 今年は「3密」を回避するためオンライン授業も取り入れ、短い夏休みに集中的に補講を行う。日程はお盆期間にも重なるが、補講はほぼ全生徒が受講する見込みという。飯田敦校長は「新型コロナの影響で部活も学校行事もできない。せめて進学の希望は学校全体で支えたい」と話す。

■熱中症予防も

 気象庁によると、今夏の平均気温は平年より高くなると予想され、中学受験を目指す小6も猛暑の中、ハードな生活を強いられる。

 首都圏で塾を展開する「市進学院」の夏期講習では、60分の授業を終えるたびに教室の窓を全開して換気する。例年は28度程度とする冷房の設定温度も、今年は22度程度に下げ、換気後に急いで教室を冷やすという。受講生にはマスクの着用とこまめな水分補給を呼びかけ、感染予防と熱中症対策の双方に気を配っている。夜間に授業を行う塾も少なくない。

 長女が大手中学受験塾に通う都内の女性(44)は「学校の授業がある時は、下校後すぐ塾へ行き、午後9時まで講習を受けていた。夏休み中も講習は9時まで。テストの成績が下がればレベルが下のクラスに落ちるので、気を抜けない」と話していた。

 受験生は短い夏をどのように乗り切れば良いのか。臨床心理士で子供の心理に詳しい藤井靖・明星大准教授は「生活の変化が激しいほどストレスがたまり、疲労する。夏休みが2週間しかない学校もあるので、勉強は毎日決めた時間にするなどなるべく普段のリズムで過ごすよう心がけてほしい。家族に愚痴をこぼす、冷たい物を飲むなどの簡単な気分転換も効果的だ」とアドバイスする。

 中学受験を控えた子供を持つ保護者に対して、森上教育研究所の森上展安代表は「子供の学習の遅れを不安に思う保護者は多いが、追い込めば子供は疲れ切ってしまう。休息を取りながら塾の授業も取捨選択して、体調が少しでも悪ければ欠席したらいい」と語る。

 高校3年生に向けて、駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長は「例年の夏休みは自由な時間が多く生活リズムを崩すリスクもあるが、高校の授業が続いたことで勉強のペースは守りやすくなる。コロナ禍で、オープンキャンパスをオンラインで行う大学も多く、どこに住んでいても、大学や学部への理解を深める機会が増えた。様々な状況を、前向きにとらえてみては」とエールを送った。