長期の景気拡大が続く米国経済が、重要な節目を迎えている。今の勢いを持続するには、慎重な金融政策と、政権運営の立て直しが不可欠だ。

 米国の景気拡大は9年目に入り、既に第2次大戦後3番目の長さに達した。

 株価は史上最高値圏で推移している。7月の失業率は4・3%まで改善した。米連邦準備制度理事会(FRB)が、ほぼ完全雇用とみなす水準である。

 2008年のリーマン・ショック後、FRBは、事実上のゼロ金利政策と、3度の量的金融緩和で強力にデフレ阻止を図った。

 景気の回復に伴い、15年末には利上げに転じた。今年6月まで4回の利上げで、金融緩和の「出口戦略」を進めつつある。

 量的緩和のために大量に購入した米国債などの資産も、9月以降に縮小を開始する方針だ。

 緩やかな金融引き締めで景気過熱の機先を制する。次の景気後退に備えて利下げ余地を確保する。そうした狙いは理解できる。

 ただ、過度の金融引き締めは景気を冷え込ませかねない。世界の4分の1の規模を占める米経済が変調を来さぬよう、FRBには重い責務が課せられている。

 今後の景気を判断する上で気になるのは、雇用情勢に比べて物価の上昇が鈍いことだ。個人消費も力強さを欠く面がある。

 7月の米新車販売は、7か月連続で前年実績を下回った。自動車ローンの焦げ付きも問題化し始めており、先行きが懸念される。

 国際通貨基金(IMF)は7月改定の世界経済見通しで、米国の今年、来年の経済成長率をそれぞれ下方修正した。

 主因は、トランプ米大統領の稚拙な政権運営で、経済政策が停滞していることだ。

 法人税率を35%から15%に引き下げる大型税制改革や、10年で事業規模1兆ドルを掲げたインフラ整備は、実現のめどが立たない。

 議会調整でも根回し不足のまま見切り発車を繰り返し、関係が悪化した。トランプ氏が最優先した医療保険制度「オバマケア」の一部撤廃法案が、与党議員の造反で否決されたのは典型例だ。

 議会が秋にも政府債務の上限を引き上げなければ、政府機関の一部機能停止が現実味を帯びる。10月からの新会計年度の予算案を巡る審議も予断を許さない。

 トランプ政権の迷走は、米経済の一大リスクとなっている。まずは、空席の目立つ政府高官人事など態勢固めに取り組むべきだ。