1985年に熊本県 松橋 まつばせ 町(現・宇城市)で男性(当時59歳)が刺殺された「松橋事件」で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は10日付の決定で、殺人罪などで服役した宮田 浩喜 こうき さん(85)の再審開始を認めた福岡高裁の決定を支持し、検察側の特別抗告を棄却した。再審開始が確定した。今後、熊本地裁で再審公判が開かれ、殺人罪について無罪判決が言い渡される公算が大きい。

 殺人事件で再審開始が確定したのは、大阪市東住吉区の小学6年女児が死亡した火災で、無期懲役が確定した母親ら2人が2016年8月に再審無罪となった事件以来となる。

 松橋事件では、宮田さんと犯行を直接結びつける物証や目撃証言はなかったが、宮田さんは捜査段階で「小刀にシャツの布片を巻き付けて殺害し、シャツは犯行後に燃やした」と自白。初公判でも起訴事実を認めた。

 宮田さんは1審の途中で否認に転じ、弁護側は「取り調べに耐えかねて自白した」と主張したが、熊本地裁は1986年、自白の信用性を認めて求刑通り懲役13年の判決を言い渡した。福岡高裁と最高裁もこれを支持し、90年に確定した。

 宮田さんの出所後に始まった再審請求審では、燃やしたはずのシャツの布片が検察側の証拠開示で見つかったことや、被害者の傷が小刀の形状と一致しないとする法医学者の鑑定結果などの評価が争点となった。

 熊本地裁は2016年6月、シャツの布片や傷に関する鑑定結果を新証拠と認め、「小刀に布片を巻いたとの自白は事実ではなく、小刀は凶器でない疑いがあり、自白の信用性が揺らいだ」として再審開始の決定をした。昨年11月の福岡高裁決定も地裁決定を支持した上で「犯人ではないのに取り調べで追及され、追い詰められて自白した可能性がある」と指摘。検察側が最高裁に特別抗告していた。

 落合義和・最高検刑事部長の話「決定を厳粛に受け止め、再審公判で適切に対処したい」