「一瞬の出来事だった。何も考えられない……」。森町のホテルの駐車場でゴーカートが見物客をはね、函館市赤川の吉田成那せなちゃん(2)が死亡した事故。母親は悲嘆に暮れ、同業者からは「安全対策が不十分」との声が上がった。(高橋広大、永野慎一)

一転悲鳴

 事故のあった18日、成那ちゃんは「ライオンキング」のTシャツに、「かわいい」とお気に入りだったアニメ「モンスターズ・インク」の緑のスニーカーを履き、母親ら家族と自宅から約20キロ離れた森町のゴーカートの運転体験イベントに足を運んだ。

 同市の自動車販売会社「函館トヨペット」など4社が、運転免許がない子供らに車に親しんでもらおうと企画した。3連休の中日で500〜600人の人出でにぎわい、ゴーカートは一番の人気コーナーで50人以上から予約があったという。

 しかし、午前11時45分頃、悲劇は起きた。小学6年の女児(11)が1周200メートルのコースを3分間走る運転体験を終えようとした頃だ。カートはピットレーンに向かって直線を走っていたが、減速しない。イベント運営を委託された「新千歳モーターランド」の担当者が異変に気付き、「ブレーキ!」と叫び、カートに近づいて手を伸ばそうとしたが振り切られた。カートはそのまま直進し、見物客に突っ込んでいった。

 子供たちの悲鳴が上がり、近くにいた母親は成那ちゃんに駆け寄ったが、呼びかけに反応がなかったという。母親は「本当に一瞬。一瞬痛かったかな。びっくりしたと思う」と声を詰まらせ、「今後のことは何も考えられない」と目を赤くした。

「初めては危険」

 女児が運転していたのは、時速40キロに達する高速カートだった。見物客への安全対策は十分だったのか。

 主催者側によると、コースには、周回レーン側には膝丈ほどの高さのフェンスが設置されていたが、ピットレーンと見物客の間は約5メートル。その間には、三角コーンによる仕切りが置かれていた。「新千歳モーターランド」の担当者は「フェンスを設置していない想定外の場所に暴走してしまった」と話す。

 しかし、同様に時速40キロほどのカートを運営する南幌カートスポーツクラブ(南幌町)の桜井泰己代表は「危機管理意識が足りない」と指摘する。「カート乗車時は視線が低くなり、体感速度は非常に速い。初めての子どもがパニックになるのもうなずける」と話す。

 運転不能になった場合に備えるのが重要で、桜井代表は、「スピードが出やすい直線の延長線上にカートを止めるための措置が十分ではなかった」と語った上で、「子ども向けの企画としては内容に無理がある。主催者の責任は重いと言わざるを得ない」と批判した。