腰を曲げながら農作業に励む山形市下東山の宗片むねかたきのさん(97)が、SNS上で話題を集めている。畑仕事にいそしむ姿や休憩中に見せる愛らしい表情が人気を呼ぶ理由だ。「人生100年時代」とも言われる中、宗片さんは「勤労感謝の日」の23日も、畑の隣にある小屋の中で黙々と収穫した大豆の選別作業をしていた。(柏このか)

 宗片さんは山形市出身で、1925年(大正14年)生まれ。戦中は東京で飛行機の部品工場に勤め、戦後は山形駅で切符売りなどをした。夫の吉四郎さんと結婚後も、2人の子供を育てながら様々な仕事をこなし、61歳から農作業に専念している。

 8年前に吉四郎さんが亡くなって以降は一人暮らしで、現在は大根やネギ、ほうれん草などを栽培し、漬けものや味噌みそを手作りして、隣人など「欲しい」と言ってくれる人に分けている。木の棒をつえ代わりにして畑の中を歩き、雑草を取り除いたり、大きく育った野菜を収穫したりする。

 こうした暮らしぶりを写真・動画共有サイト「インスタグラム」のアカウント「宗片吉四郎農園」で投稿しているのは、東京都で暮らす孫の麻美さん(39)だ。きっかけは2015年、一緒に宗片さんのサクランボ農園を訪れた友人が山形弁に驚き、「残しておかないと、この声は聞けなくなるよ」と言われたことだった。多くの人に見てもらおうと、16年から宗片さんを訪ねるたびに写真と動画を撮影し、「キノさん」として投稿している。

 初めて注目されたのは、今年2月に投稿した、畑で休憩中にフルーツサンドを箸でほおばる姿で、既に約80万回再生された。

 この動画を機にフォロワーが1万人を超え、「自分はまだ60代だけど、この年まで頑張れるかな」「キノさんを見習って私も頑張ります」といった反響が全国から寄せられたという。宗片さんは「おれみたいなのを撮ってもらって、みっともなくて悪いなあ」とはにかむ。

 11月上旬には、玄関先で干し柿作りのために渋柿を一つずつ包丁でむく宗片さんを、麻美さんがスマートフォンで撮影。「もう少し顎をあげて、笑って」と声をかけられると、「へっへっへ」と得意の笑顔でカメラ目線になった。2人のやりとりから生まれる自然な表情が人気の秘密だ。

 20年には、草むしりの最中に股関節を疲労骨折したが、リハビリをへて21年には農作業に復帰したといい、麻美さんは「本当に働き者。こんなに元気な97歳はなかなかいない。生命力がすごく、不思議な力があるおばあさんなんです」と話す。

 近年は、高齢になっても活動的な人が増えており、精力的に農作業に取り組む宗片さんの姿が県内外に元気の輪を広げている。「新しい耕運機を買った。来年も畑仕事を頑張らなくちゃ」。今も、干し柿作りやたくあん作りと、冬支度に大忙しだ。