あまたあるひとりレジャーの中でも、かなりハードルが高そうなのが「ひとりテーマパーク」だろう。友達グループやカップル、家族連れであふれるそこに、ひとりで行くと、どうなのか。記者が東京ディズニーリゾート(TDR)を訪ねた。(茶山瞭)

ひとりディズニー初参戦、勇気を出したが誰にも見られず

 今月6日午前10時過ぎに、東京ディズニーシー(千葉県浦安市)に入園した。ディズニーランドよりやや大人向きのイメージがあるが、冬休み中のせいか、学生さんらしき若い人が目立つ気がした。

 形から入ろう。気分を高めるためにキャラクターのカチューシャを頭に付ける。勇気を出したつもりだが、行き交う人たちは自らが楽しむことに夢中で、こちらのことなど見ていない。

 七つのエリアのうち、まず玄関口にある南欧の港町、「メディテレーニアンハーバー」へ。和服姿のミッキーたちキャラクターが船上から新年を祝うショーを見る。ちらほらと、ひとり客の姿もあった。

 年季の入ったTDRキャップをかぶり、一眼レフカメラを構えていたのは、千葉県船橋市に住む警備員の男性(44)。好きが高じて7年ほど前に北海道から移住してきた熱烈なディズニーファンだ。魅力は何かと尋ねると、「現実逃避です」という。「今日も夜勤明けですが、眠さも空腹も疲れも、ここにいる時は全部忘れられる。ベンチで海を見ていたら1時間が過ぎていたこともあります」

 確かに、違う世界に浸り切るには、ひとりがいい。

ジャンボリミッキー!には気が引けて……

 次に「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー」のアトラクションへ移動した。ここは、ひとり客が待たずに乗れる「シングルライダー」制度がある。1列4人がけのシートに3人グループなどが座った際、空いた席にひとり客が乗れるのだ。

 65分待ちの列を横目に、専用の通路をぐんぐん進んで、数分で3人連れの隣に滑り込んだ。暗い古代遺跡が舞台で、隣り合った人が気になることはない。ひとりの特典だ。

 ランチは、混み合う時間帯を避けて午後1時ごろに「ミゲルズ・エルドラド・キャンティーナ」に入った。一段下がったところにある水辺のテラス席は、周囲から目立たず落ち着いて過ごせた。航行する船を眺めながら、ピタサンドを食した。

 店内で、東京都新宿区の女性会社員(20)が、チップスをつまみながら目当てのショーまでの時間を潰していた。仕事が休みの平日に、ひとりでよく来るという。「ひとりが好きで、抵抗感もないです。好きな所に行って好きな食べ物を食べ、やりたいことをして帰ります」と自然体だった。

 食後は、昨年末のNHK紅白歌合戦にも登場した「ジャンボリミッキー!レッツ・ダンス!」を見にいく。軽快な音楽に合わせてキャラクターが踊る。一緒に踊ってもよいのだが、ひとりではしゃぐのは気が引けた。が、見回すと、ひとりで踊る人もいた。

 冬休みに熊本市からひとりで来た女子高校生(17)だ。ユーチューブの動画を見て練習したという。「家族で来ると、いつも家族は私に引っ張られてしまう。弟はアトラクションが好きだけど、私はショーやパレードが好き。ひとりの方が気を使わなくて楽しい」。かばんから、現代文の参考書がのぞいていた。「学校が始まったらテストが……」。高校生も忙しい。寸暇を惜しんで楽しむための選択が、ひとりディズニーだった。

ひとりディズニー最大の難敵は「待ち時間」

 せっかくなので、人気の「ソアリン」を目指す。巨大な映像を見ながら飛行体験ができるアトラクションで、待ち時間は150分だ。シングルライダー制度はない。

 長い行列に並ぶと、親子と学生2人組の間に挟まれ、周囲の目が少し気になった。ひとり客らしき人は、100人いれば3、4人で、音楽を聴いたりスマホを見たりしている。連れに頼んで列を離れるわけにもいかないので、トイレに行っておいて正解だった。ひとりの難敵は「待ち時間」と知る。2000円で、あまり待たずに乗れるサービスがあるので、利用したら良かったかもしれない。

 出てきたら、日が暮れていた。昨年11月に始まった夜のショー「ビリーヴ!〜シー・オブ・ドリームス〜」を見る。ディズニー映画の音楽が流れる中、水上ステージや船がライトアップされ、花火が打ち上がる。海を囲むように集まった観客はくぎ付けで、こうなると、ひとりでいることは、全く気にならない。

 岐阜県多治見市の男性会社員(30)は今回初めてひとりで来て、このショーをいい場所で見ようと約5時間待ったそう。「寒くてひたすらスマホを触っていました。待ったかいがありました」。余韻もひとり占めという風情だった。

 午後9時、一斉に帰宅する人波にのまれるようにパークを出た。電車に乗り、現実に戻ってきた感じがした。

行きたい場所にはひとりでも

 家族や友達と高揚感を分かち合うのが、王道だろう。でも、ひとり客の話を聞けば、楽しみ方はそれだけではないとわかる。

 話を聞いた女子高校生は「『本当にこの世界に来ちゃったのかな』という感じになります」と、夢見心地で話した。細部まで作り込まれた虚構の世界を自分だけで存分に味わうのはありだ。案外、ひとりと相性がいい場所かもしれない。ディズニーに限ったことではなく、行きたい場所には、ためらわずにひとりで行けばいいと思った。(茶山)

パークも「おひとりさま」需要見込む

 「ひとりディズニー50の楽しみ方」(サンクチュアリ出版)の著書があり、攻略ブログ「TDRハック」にも寄稿するみっこさんに聞いた。

 「初めてひとりで行った時はドキドキして、誰にも見つからないよう深めの帽子をかぶりました。でも、ゆっくり散策でき、お金も時間もすべて自分の自由に使えて本当に楽しかった。今はカラオケも焼き肉もひとりで行く時代です。自分がやりたい時にやりたいことをやる空気感もあり、行きやすくなりました」

 「レストランにカウンター席があったり、(ショーの場所取り中に一時離れたい人のために)『おひとりさまはお声がけください』とアナウンスがあったり、パークもひとりの需要を見込んでいると感じます」