国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は17日、ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領が、孤児を救うとの名目で行ってきたウクライナの子供の強制移送について、戦争犯罪にあたるとの判断を示した。ロシアへの同化を狙った「国家ぐるみの拉致」で、1万6226人の子供がロシアに連れ去られた。ICCは今後も、ロシアの戦争犯罪の捜査を続ける方針だ。
ICCは同日、プーチン氏とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表(子供の権利担当)に逮捕状を出した。
ウクライナの子供の移送について、プーチン政権はロシアの侵略が発端にもかかわらず、子供を戦火から救い、ロシアで保護しているとアピールしていた。
プーチン氏は今年1月、リボワベロワ氏に対し、ウクライナの露軍占領地域で保護者のいない子供を見つけ出すよう指示した。昨年5月の大統領令への署名で、占領地域の子供のロシア国籍取得を簡素化し、孤児をロシア人と養子縁組させることを奨励していた。リボワベロワ氏自身もウクライナ南東部マリウポリの15歳の少年を養子にした。
しかし、これは子供の意に反した強制移送だった。国連人権理事会が設置した国際調査委員会は16日の報告書で、親が露軍に殺害されるなどして孤児となった子供の被害が多いと指摘した。
親がいる子供は「キャンプ」や避難名目で親と引き離されてロシアで愛国教育を受けさせられ、戻れなくなる事例もあるという。そのままロシア人の養子にされると発見は困難になる。
ウクライナ政府の集計によると、これまでに1万6226人の子供の移送が確認され、このうちウクライナに戻ったのは308人。ウクライナの最高会議(議会)の人権オンブズマンは、両親と一緒に移送された子供を含めれば15万人近い子供が移送されたと指摘する。
ICCは今回、加盟する約40か国の付託を受け、侵略開始直後から捜査を開始。逮捕状発行まで3〜5年以上かかるのが通例だが、1年でこぎ着けた。カリム・カーン主任検察官もウクライナに入り、地元当局と連携して捜査を進めた。
ロシアのウクライナ侵略を巡っては、キーウ近郊のブチャなどで多数の民間人が虐殺されたが、大統領の指示を立証するには多くの証言が必要になる。プーチン氏の指示が明確な子供の強制移送をまず立件した。
ICCのカーン主任検察官は17日、「具体的な最初の一歩だ。今後も