【ソウル聯合ニュース】2017年5月、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が朴槿恵(パク・クネ)前大統領の罷免に伴い前倒しされた大統領選で当選し、政権移行期間がないまま発足した文政権にとって喫緊の課題は4大国(米国・中国・日本・ロシア)との外交立て直しだった。

 朴前大統領の罷免で事実上、ストップ状態だった首脳外交を復活させることが急務で、そこには文政権の北朝鮮核・ミサイル問題の解決策に対する共感を得ることで朝鮮半島平和プロセスを推進する基礎を築くという考えがあった。

 ミサイル発射など北朝鮮の挑発でこうした構想の推進は容易ではないとみられた。

 文大統領は17年5月14日、就任後初の国家安全保障会議で「北の態度に変化があるとき、対話が可能だろう」と述べ、北朝鮮に対する警告メッセージを発した。

 北朝鮮による武力示威が続いたが、文大統領は対話に向けた希望を捨てなかった。

 同年7月、非核化に関する内容を中心に発表した「ベルリン構想」を通じて、文大統領は朝鮮半島平和プロセスの本格的な推進に乗り出した。

 劇的な転機となったのが18年2月に韓国で開催された平昌冬季五輪だった。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が北朝鮮の五輪参加を決定し、アイスホッケー女子の南北合同チーム「コリア」が出場するなど、南北対話にも雪解けムードが漂い始めた。

 文大統領は18年に金正恩氏と行った3回の南北首脳会談を通じて、和解と平和、繁栄の南北関係を宣言した「板門店宣言」と軍事的緊張緩和に向けた南北軍事合意という成果を上げた。

 非核化交渉の当事国である米朝間の対話の仲介役を買って出た文大統領は同年6月、シンガポールでの米朝首脳会談開催へと導き、朝鮮半島の平和実現に向けた行動を妨げるものは何もないように見えた。

 しかし、19年2月にベトナムで行われた米朝首脳会談が決裂し、文大統領の努力も水の泡となった。その後、米朝対話は膠着(こうちゃく)状態が続き、文大統領は米朝を再び対話のテーブルに引き戻すために必死の努力を傾けた。

 文大統領は、政府政策放送機関・KTV国民放送が制作し、昨年6月に公開したドキュメンタリーで「ハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わったが、対話の空白が長くなれば結局対話の動力が落ち、再び危機が訪れると思った。対話の動力を維持するために多くの努力を傾けた」と振り返った。

 同年6月には南北軍事境界線がある板門店で歴史的な南北米首脳の会合が実現し、こうした努力が実を結ぶかのように見えたがそれ以上の進展はなかった。

 文大統領は米朝対話の空転を受け、20年には南北関係の発展を通じて米朝間の非核化交渉をけん引するカードを取り出した。南北間の協力の幅を最大限広げ、必要な場合に対北朝鮮制裁の一部免除や例外措置を認めることが国際的な支持を得られれば、非核化の見返りを求めた北朝鮮を対話のテーブルにつかせることができるとの判断があったからだ。

 問題は米朝対話に進展がない状況で、文大統領の役割に限界があることをはっきりと認識したとみられる北朝鮮側の反応がなかった点だ。

 北朝鮮は20年6月、南北首脳の合意によって開城に設置された南北共同連絡事務所を爆破した。板門店宣言に基づき18年9月に同事務所が開所してから1年9カ月後のことだった。

 南北間対話の窓口であり、朝鮮半島の平和実現に向けた文政権の努力の産物だった同事務所の爆破の瞬間は、物別れに終わったハノイでの米朝首脳会談後の南北関係の冷え込みを示す象徴的な場面でもある。

 文大統領はこのような北朝鮮の行為に対し公式の立場を表明したことはないが、外交・安全保障分野の重鎮と会った席で「国民が失望したのではないかと心配だ」と話したという。文大統領の苦悩がどれほどだったかを垣間見ることができるエピソードだ。

 朝鮮半島の平和の時計を回そうとした青瓦台(大統領府)と政府の努力に北朝鮮が応じなかったが、文大統領は希望を捨てなかった。

 昨年9月、国連総会での一般討論演説で、南北米または南北米中が朝鮮半島での戦争終了を宣言することを提案した。今年2月には聯合ニュースと海外通信社による合同の書面インタビューでも「韓米間で、北に提示する終戦宣言の文案まで意見が一致している」とし、終戦宣言実現の可能性に期待を示した。

 朝鮮半島平和プロセスを再稼働させるための勝負手だったが、安保情勢が厳しい中、実効的な提案とみるのは難しいとの指摘を主に受けた。

 今年に入り北朝鮮が行ったミサイル発射が15回に上り、文大統領の努力も色あせたものとなった。

 文大統領にとって外交・安保分野でもう一つの難題だったのが韓日関係だ。

 歴史問題と未来の協力を切り離して対応するという「ツートラック」の基調に基づき関係改善に乗り出したが、両国関係が行き詰まったのは日本が慰安婦問題や強制徴候被害者問題に対する真摯(しんし)な謝罪をなおざりにしたことが大きかったといえる。

 任期内に米国との協議で、ミサイルの弾頭重量制限を撤廃したのに続きミサイル指針を撤廃したのは事実上のミサイル主権を確保したという成果として評価できるとの見方もある。

 また、東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドとの関係を強化する新南方政策、ロシアや中央アジア諸国との協力を強化する新北方政策を通じて、外交の底辺を広げたことも評価の価値がある。