【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の就任から10日で1カ月となる。尹大統領は大統領執務室のソウル・竜山への移転、新型コロナウイルスの防疫措置で打撃を受けた小規模事業者らに対する損失補填(ほてん)に向けた62兆ウォン(約6兆6000億円)の補正予算の執行、韓米首脳会談開催などを超短期間のうちにこなし、国政を比較的安定して運営していると評価されている。

 だが、大統領室にはそうした成果を自評する余裕はなさそうだ。北朝鮮による7回目核実験の可能性も相まって朝鮮半島の安全保障危機が増していることに加え、経済面では物価高と高金利により景気後退とインフレが同時に進むスタグフレーションの懸念が強まっている。少数与党の政権運営で求められる巨大野党との協調、中国や日本など周辺主要国との外交の立て直しといった課題も横たわる。

 まず挙げられる尹政権の成果が、大統領執務室を広大で外部から閉ざされていたソウルの青瓦台から竜山の国防部庁舎に移転したことだ。「国民と意思疎通する大統領になる」と訴え、拙速との批判を押し切って断行した執務室移転だが、予想以上に順調な滑り出しを見せている。野党が問題視した安保の空白が懸念される状況も、今のところ起きていない。

 また、尹大統領は就任から20日にして過去最大規模の補正予算を執行し、新型コロナ流行の長期化で打撃を受けた小規模事業者や自営業者を支援するという目玉公約を実行に移した。

 補正予算の成立は今月1日の統一地方選をにらんだ与野党の思惑が一致した結果ではあるが、尹大統領が最初から最後まで気を配ったことも大きかった。尹大統領は就任の2日後に臨時閣議で補正予算案を決定し、国会での施政方針演説などで予算案の成立を迫った。そのおかげで、約371万人の事業者が600万ウォンから最大1000万ウォンの損失補填金の給付を受けることができた。

 就任から11日後という早さでソウルで開いた韓米首脳会談も、大きな成果の一つに数えられる。

 韓米は会談を機に、従来の対北朝鮮軍事同盟関係を超え、先端技術、サプライチェーン(供給網)、国際的懸案などを網羅するグローバルパートナーシップへの発展を宣言したと評価されている。

 両国はとりわけ、技術・サプライチェーン協力をはじめとする「経済安保同盟」の構築に焦点を当てた。その一環として、韓国は米国主導の新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に加わった。

 韓米首脳は、北朝鮮の弾道ミサイル発射などの挑発に対し、連携してより強力な対応を取ることでも一致した。検察一筋で外交経験のなかった尹大統領が、初対面のバイデン米大統領と「自由民主主義」という価値を共有し、絆を深めたことも収穫といえる。

 こうした成果が注目され、支持率も小幅に上昇している。世論調査会社の韓国ギャラップが今月2日に実施した調査結果によると、尹大統領の支持率は53%で5月第3週の前回調査から2ポイント上昇した。不支持率は34%だった。

 安定的な国政運営には、韓悳洙(ハン・ドクス)首相をはじめとする閣僚の大半が就任し、内閣の構成が事実上、完了していることも影響している。さらに、今月1日投開票の地方選で保守系与党「国民の力」が圧勝したことで、初期の政権運営に弾みがつくとみられている。

 一方で、大統領室や金融監督院、情報機関の国家情報院(国情院)といった権力機関の要職に検察出身者を重用したことに対する「偏重人事」との批判は収まりを見せていない。

 5年間の任期が始まったばかりの尹大統領の前には、数々の難題が横たわる。

 喫緊の課題が物価の急騰だ。尹大統領は就任翌日の先月11日に開いた初の首席秘書官会議で物価安定へ努力を求め、物価高への対処に乗り出したが、5月の消費者物価上昇率は5.4%とおよそ14年ぶりの高水準を記録した。

 北朝鮮が核実験という超大型の挑発に出る可能性が高まっている中、厳しい安保環境への対処も尹大統領にとって試練となる。北朝鮮が核実験を強行すれば南北関係の改善は一気に遠ざかる可能性が高く、対北朝鮮政策の余地は一層狭まる。

 国会議席の過半数を占める革新系最大野党「共に民主党」との関係設定にも苦労しそうだ。尹大統領は野党側と面会する意向をたびたび表明しているが、地方選で大敗した野党の執行部との会合は当面難しい見通しだ。

 外交上の難題も山積している。日本との関係回復に向けては、日本による植民地時代の強制徴用問題や慰安婦問題という歴代政権が手を焼いた難題を解決せねばならない。

 また、米中の覇権争いが激化し、米国の反中包囲網への参加圧力が増している中、韓米同盟の格上げや韓米日協力の強化に取り組みながらも経済・産業面でつながりの深い中国との関係の継続的な発展を図るという米中間でのバランスが求められている。