【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の就任から10日で1カ月となる。検察一筋で政治経験がないまま就任した尹大統領は歴代の大統領と異なる型破りの行動を取っている。権威主義を排除して積極的な意思疎通を図るイメージをアピールし、新しい大統領像を構築している。検察出身者を重用する人事などを野党が批判する中、少数与党の体制で野党と協力し、統合の政治を実現することが課題となっている。

◇史上初の通勤する大統領

 尹政権発足初期の最大のイベントは大統領執務室の移転だった。大統領執務室があった「青瓦台」を「帝王的な大統領」の象徴と指摘し、市民に開放。執務室はソウル市竜山区の国防部庁舎に設けた。

 尹大統領が「空間が意識を支配する」と述べたように、執務室の移転は大統領のイメージだけでなく働き方も変えた。韓国の歴代大統領としては初めてソウル市瑞草区の自宅から竜山の執務室まで通勤している。「王宮」とも呼ばれた青瓦台の内部で、側近らにも気付かれずに動いていた過去の大統領とは大きく異なる。そのためか、大統領の通勤時の交通規制に不満を示す声も少なくなった。

 ソウル市漢南洞にある外交部長官を公邸に改装しており、来月初めに入居した後も尹大統領の通勤は続けられる見通しだ。

◇型破りの意思疎通をアピール

 竜山の大統領執務室周辺には多くの若者が訪れる飲食店が並び、その店に尹大統領のサインが飾られるようになっている。尹大統領が訪れたパン屋では大統領が購入したパンを「尹セット」として発売。尹大統領一行が食べた昼食のメニューが話題になることもあった。尹大統領は選挙戦で、就任したら一人では食事しないと明言するなど、積極的な意思疎通を図る姿勢をアピールしていた。

 尹大統領は秘書官らに対しても担当業務に関するメディア対応を積極的に行うよう指示したとされる。自らも出勤時に記者団の質問に答える「ぶら下がり取材」に応じている。過去には大統領に会って質問できる機会自体が少なかった。米ホワイトハウス式のメディア対応策を講じるよう指示したことを受けて実務者が提案し、尹大統領が受け入れたという。

 週末には金建希(キム・ゴンヒ)夫人と出かけている。予告なしで百貨店を訪れて靴を買い、にぎわう伝統市場で買い物をし、開放された青瓦台で市民たちと写真を撮った。

 最新の世論調査では尹大統領を支持する理由として「公約実践」とともに「意思疎通」が挙げられた。

◇実質的な成果につなげるのが課題

 尹大統領は毎週月曜日に開かれる首席秘書官会議のほか、随時に秘書官らを呼んで報告を受けているという。

 保守系の大統領に対する固定観念を覆しているとの見方もある。「5・18民主化運動(光州事件)」の記念式典に保守系与党「国民の力」のほぼ全員の国会議員と共に出席したことは「破格」との評価を受けた。

 ただ、国会で過半数の議席を占める革新系最大野党「共に民主党」との関係では解決策を見いだせていないとの指摘もある。国会で行った施政方針演説で議会主義の尊重を強調し、野党執行部との会合も推進したが、検察出身者偏重との人事への批判などで政局は依然として不安定な様相を呈している。

 「見せかけのショー」を嫌うとされる尹大統領の前には新しい大統領像を確立することにとどまらず、統合の政治で実質的な成果を出すという難題が置かれている。