【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)前政権が亡命を希望していた北朝鮮住民2人を北朝鮮に強制送還した2019年の事件を巡り、現与党「国民の力」は14日、国政調査権の行使や特別検察による調査などの可能性を示唆し、文在寅(ムン・ジェイン)前政権と当時与党だった野党「共に民主党」に対する攻勢を強めている。

 同事件を巡っては、大統領室が13日、「亡命の意思を表明したにもかかわらず強制的に送還したのであれば国際法と憲法に反する反人道的・反人倫的な犯罪行為」と指摘。真相究明を進めるとの方針を示した。

 ただ、海上で韓国軍当局に拿捕(だほ)された漁船に乗っていたこの北朝鮮住民2人は船内で乗組員16人を殺害して逃走中だったとされており、共に民主党は「16人を殺害した猟奇的な凶悪犯までも韓国の国民として受け入れるべきだというのか」と反論している。

 文政権は当時、北朝鮮住民に亡命の意思がなかったとしており、国民の力は文政権が事実を歪曲(わいきょく)した背景を明らかにし、誰が強制送還を指示したのか解明すると意気込んでいる。

 また、事件当時に行われていた合同調査を強制的に早期終了させた疑いで国家情報院(国情院)から告発された、当時の国情院長の徐薫(ソ・フン)氏に加え、文前大統領の責任を問う姿勢を明確にした。

 同党の権性東(クォン・ソンドン)党代表職務代行兼院内代表はこの日の最高委員会議で同事件と関連し、「国政調査や特別検察(の設置)など、具体的な対策を検討する」とし、「政治権力のために人間の生命を利用したこの事件の実体を明らかにする」と表明。文前大統領の責任を問う意思を明確にした。 

 国民の力は論評で、北朝鮮住民の強制送還を伝える通知と、18年9月に文大統領が平壌を訪問した答礼として、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)に韓国への答礼訪問を要請する文大統領の親書が同じ日に北朝鮮に送られたと指摘し、「(この因果関係は)合理的な疑いを持つのは十分可能」と主張した。また「国民の力は亡命の意思を歪曲および北への強制送還を指示したのが誰なのか、その理由が何であるのかなど、事件の真相を徹底的に糾明して国民の疑問を解消する」と強調した。 

 一方、このような与党の対決姿勢を巡っては、党の内紛や経済危機などにより、与党の支持率が低下する傾向にある中で、文政権を攻撃することで話題をそらそうとする思惑があるとの見方も一部で出ている。