【ソウル聯合ニュース】韓国の鉄鋼大手・ポスコが15日までに、徴用被害者への賠償を日本企業に代わって支払う政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」に40億ウォン(約4億1000万円)を寄付したことで、賠償肩代わりのための基本的な財源が整った。

 韓国政府は今月6日、2018年に大法院(最高裁)で勝訴が確定した徴用被害者15人(原告は14人、訴訟3件)の判決金(賠償金)と遅延利息について、同財団が民間の自発的な寄付などで調達した資金で支払うとする徴用問題の解決策を発表していた。賠償金と遅延利息は合わせて約40億ウォンになる。

 韓国政府は1965年に韓日請求権協定を締結し、対日請求権を放棄する代わりに5億ドル(現在のレートで約670億円)の経済協力資金を受け取った。この一部が企業支援資金に使われ、代表的な支援対象となったのがポスコの前身、浦項総合製鉄だった。こうした経緯からポスコは2012年3月、財団に100億ウォンを拠出することを決め、16年と17年にそれぞれ30億ウォンを拠出。残る40億ウォンを今回寄付した。

 確定判決が出た徴用被害者への賠償支払いのための財源を確保したことから、財団側は遺族や被害者に政府の解決策を説明することに一層力を入れる方針だ。解決策に賛成する遺族の声も報じられている。

 だが、勝訴が確定した原告のうち存命する3人は解決策による賠償金の受け取りを拒否する意向を財団に伝えている。3人は三菱重工業を相手取った訴訟で勝訴が確定した梁錦徳(ヤン・グムドク)さんと金性珠(キム・ソンジュ)さん、新日鉄住金(現・日本製鉄)を相手取った訴訟で勝訴した李春植(イ・チュンシク)さんで、これら被告企業の韓国内資産の現金化に向けた法的手続きを継続するとみられる。外交部の当局者は14日、「(原告に)直接説明する努力を続けていく」と記者団に語った。

 政府の解決策の実行には、さらに財源が必要になる可能性もある。政府は確定判決が出た被害者だけでなく、係争中の徴用訴訟でも原告勝訴が確定すれば同じやり方で賠償金と遅延利息を支払う計画にしているためだ。

 請求権協定の恩恵を受けた韓国企業16社のうち、まだポスコ以外に財団に寄付した企業はない。外交部の当局者は10日、海外メディアの記者との会見で、協定に基づく資金の恩恵を受けた企業はその事実を承知しているとしながら、「できるだけ早く企業が自発的に参加することを期待している」と述べた。