【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と米国のバイデン大統領は26日(米東部時間)に行った首脳会談で、北朝鮮の核脅威の高まりを受け、米国が核を含む戦力で韓国を守る拡大抑止の強化を盛り込んだ「ワシントン宣言」を発表したが、北朝鮮は沈黙している。

 朝鮮中央通信や朝鮮労働党機関紙・労働新聞をはじめとする北朝鮮のメディアは28日午前9時現在、韓米首脳会談について報じていない。

 ワシントン宣言には、核抑止・戦略を議論する「核協議グループ」(NCG)の創設や、核弾頭を搭載した弾道ミサイルを発射できる米戦略原子力潜水艦の韓国展開が盛り込まれた。バイデン大統領は尹大統領との共同記者会見で、北朝鮮が核攻撃を行えば「政権の終末を招く」と強い表現で警告した。

 北朝鮮はこれまで、韓米の合同訓練や米戦略資産の韓国展開などを対北朝鮮敵視政策とみなして非難してきた。今回の韓米の合意や厳しい発言を脅威と捉えて反発してもおかしくないが、北朝鮮は今のところ何の反応も示していない。

 北朝鮮は過去にも、韓米首脳会談などの大型イベントに即座に反応しないことがあった。韓米による昨年5月の韓国での首脳会談、21年5月の米国での首脳会談の際には、いずれも対外メッセージを出さなかった。

 だが、昨年のバイデン大統領の韓日訪問終了翌日の5月25日、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」と2発の短距離弾道ミサイル(SRBM)を発射した。米本土を狙うICBMと、韓国や在日米軍基地を射程に収めるSRBMを同時に発射したのはこのときが初めてで、韓米のミサイル防衛網の無力化を図るとともに韓米日を全て狙う意図を明確にした。

 こうした経緯から、北朝鮮が今回の首脳会談の共同声明とワシントン宣言の内容を検討した後、挑発に踏み切るとの見方もある。「軍事偵察衛星1号機」の発射などがあり得るほか、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)の妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長が談話を出して韓米の連合防衛体制を非難し、朝鮮半島での緊張の高まりの責任を韓米に転嫁しようとする可能性もある。