【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が10日で就任丸1年を迎える。

 尹大統領は国会議員経験のない大統領として既成政治のしきたりを破り、理念や陣営にとらわれない実用主義路線を取るだろうと期待された。

 大統領執務室を旧大統領府の青瓦台からソウル・竜山に移転し、「竜山時代」を宣言したことは象徴的な出来事だ。

 尹大統領は「自由」と「連帯」の中核的な価値を前面に掲げ、文在寅(ムン・ジェイン)前政権の国政基調の全面転換に乗り出した

 尹大統領は民間主導、市場中心の成長を強調するとともに、「所得主導成長」と呼ばれた文前政権の経済政策とは異なる路線を取った。

 全方位的な不動産規制の緩和や大企業の法人税など広範囲な減税政策も推進した。脱原発政策を廃止し、先端産業の育成にも力を入れた。

 また、労働・年金・教育分野の「3大改革」を推進し、原発や半導体など戦略産業の育成に力を注いだ。

 特に、労使法治主義の基調の下、労組の会計問題を指摘するなど、果敢な労働改革に乗り出した。

 尹大統領は今年最初の閣議をはじめ公式の場で「大韓民国の繁栄を妨げる弊害を正すことに国家の力を結集させる」と重ねて強調した。

 対外政策では自由民主主義や人権など普遍的価値を重視する「価値の外交」を追求した。

 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への初出席、米主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」参加、民主主義サミット出席など、自由民主主義陣営との連帯を本格化した。「戦略的曖昧さ」を維持した過去の政権とは異なる姿勢を見せた。米中の覇権競争激化、ウクライナ戦争の長期化で「新冷戦時代」が本格化し、北朝鮮の核脅威が高まるなど急変する安保環境も影響を与えた。

 10年以上にわたり悪化の一途をたどった韓日関係の改善に向けた転機も設けた。

 尹大統領は3月、政治的負担があるにもかかわらず、日本による植民地時代の徴用被害者に対する賠償問題の解決策発表を強行した。これは12年間途絶えていた韓日首脳の「シャトル外交」の再開につながった。

 米国との関係では、経済・安保を中心とする協力強化に乗り出した。ホワイトハウスで先月行われた韓米首脳会談で「核協議グループ(NCG)」新設などの成果を残した。

 韓米日3カ国の協力にも弾みがついている。先月の韓米首脳会談、3月と今月の韓日首脳会談に続き、今月中旬に広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)の期間中に行われる韓米日首脳会談は3カ国の安保・経済協力のハイライトになる見通しだ。

 国政全般でさまざまな成果を上げたとの評価もあるが、影の部分も存在する。

 物価高、高金利、ウォン安ドル高という「3高」と低成長が重なった複合的な危機が依然として続いている。

 韓米日3カ国の関係が深まるほど反発が高まる北朝鮮、中国、ロシアとの関係をどのように管理するかが最大の難題だ。

 また、同盟関係の強化にもかかわらず、インフレ抑制法(IRA)など米国の自国優先の政策にどのように対応していくかも課題だ。

 国内では最大野党「共に民主党」との対立で、推進が急がれる民生・経済政策に弾みがつかないことが最も大きなネックとなっている。この1年間、尹大統領と共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表との会談は一度も行われていない。

 最近、尹大統領が就任1年を控え、「変化」を前面に押し出したのも現状に対する認識を反映させたものとみられる。

 尹大統領は今月2日の閣議で「再びスタートするという気持ちで変化を作り出そう」と呼び掛けた。同日行われた記者団との昼食会では「変化の速度が遅い部分は次の1年間でスピードを上げていく」と述べた。