職場などで「悪口を言っている」と思われた時、あなたならどうする?「大人研究」のパイオニアにして第一人者、『大人養成講座』『大人力検定』など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏が「大人の切り返し講座〜ピンチを救う逆転フレーズ〜」と題し、その打開策をお伝えする。

  ◇       ◇    ◇

【今回のピンチ】同僚が突然「お前、俺の悪口をあちこちで言ってるらしいな」と詰め寄ってきた。かなり怒っているが、まったく身に覚えがない……

  ◆    ◆    ◆

 世の中でいちばん面倒臭いのは「怒っている人」です。こっちが何を言っても聞こうとしないし、落ち着けと言えば言うほど興奮するし、何より怖いし……。

 勘違いで怒っていたとしても、どっちでもいいことなら、さっさと謝って場を収めるのが賢明な判断。しかしこの場合は、簡単に謝るわけにはいきません。謝ったら、悪口を言っていると認めることになります。濡れ衣を晴らすにはどう切り返せばいいのか。

 「えっ、どんな悪口?」と尋ねるのはタブーです。相手は聞かされたときの怒りがよみがえってきて、「とぼけるな!」とさらにこっちを悪者にするでしょう。「誰が言ってたの?」とネタ元を探ろうとするのも、言い逃れのための悪あがきと受け取られそうです。

 まずは、「えっ、俺がお前の悪口を……」と絶句し、しばらく考えたあとで、「ははあ、俺に対するそういう悪口を言いふらしているヤツがどっかにいるわけだな」

 そう言って「悪口の構図」をややこしくからませることで、怒っている相手をいったん混乱させます。ひるんだところで反撃開始。

 「お前は、そいつの言うことを信じて、俺が陰で悪口を言いふらすようなヤツだと思ったわけだ。……残念だな」

 穏やかな口調で、それでいて思いっ切り悲しそうに呟きましょう。さらに「ま、俺の日頃の行ないが悪いから、信用がないってことなんだけどさ……」と自分を卑下する言葉を続ければ、さらに効果的です。

 相手が「えっ、違うのか?」と、悪い情報を吹き込んだヤツに疑いを抱いたら、いよいよ仕上げです。

 「そう言ってたヤツも、きっとなんか勘違いしたんだろうな。あるいは、俺がそいつに失礼なことをしたのかもしれない」

 そんなふうに騒動の元になったウソつき野郎をあえてかばいます。「とんでもないヤツだな」と責めるより、怒っている相手に何倍も強烈に「こっちの勘違いみたいだな」と思わせることができるはず。

 そもそも「誰かからの『〇〇がお前の悪口を言っていた』という告げ口は信じてはいけない」というのは、大人の大原則のひとつ。意識してか無意識かはさておき、そいつは〇〇およびこっちを陥れようとしています。

 告げ口をされたときは、「親切にありがとう。本人に確かめてみるよ。××がこう言ってたって」と返せば、たぶん慌てるなり困るなり面白い反応を見せてくれるでしょう。

 そして、今回の切り返し方が活躍するのは、濡れ衣を着せられたときだけではありません。実際に悪口を言っていて本人の耳に入ってしまった場合も、同様のセリフを繰り出しましょう。さも濡れ衣のようなフリができます。

(コラムニスト・石原 壮一郎)