「生産性がない」「同性愛は区を滅ぼす」「種の保存にあらがう」など政治家によるLGBTに関する失言や、昭和、平成では当たり前だったLGBTを卑下するお笑いが地上波で放送される度、炎上することが増えた。

トランスジェンダー女性である筆者はむしろ、最近はLGBTに配慮する人が増えたように感じている。しかし、先述したように本人にLGBT当事者を貶めようという意志が無いにも関わらず、騒動が起こってしまう状況がある。「昔は良かった。なんだか面倒臭い時代になったな」と感じる人も多いだろうと思う。

LGBTに関するトラブルを回避するにはどうすればいいのだろうか。今回、兵庫県尼崎市でLGBT当事者が定期的に集うコミュニティスペースを運営する「特定非営利活動法人 MixRainbow」理事長のみのりさんにお話を聞いた。

「NPO法人として、主に月1回の当事者を中心にした座談会『みんなの居場所』を運営しています。そこに来られる当事者と触れ合って感じるのは、幼少期や学生時代に性別関連のトラウマを抱えていたり、ロールモデルが周りに居ないことから、自分の正体に気づけず健全な思春期を過ごせなかった人が多い事です。結果、悪意に晒されやすく、傷つきやすい人も割と多いように感じます」 

みのりさんによると、テレビで見るようなパワフルなタレントをLGBTの全てだと思っている人が一定数いるようだ。しかしそんな強い人は少数。場を和ませるつもりの悪気がない発言がその人を傷つけてしまう。

みのりさんに、炎上を起こしやすいワードの例と、それに対する意見を聞いた。

 ・「俺の事、襲わないでね」

セクシュアリティを、性的な趣味で選んでいると思われていそうで不快。当事者は犯罪的な異常性欲という思い込みがあるように感じてしまう。

・「2つの人生を味わえてお得だね」

多くの苦難を乗り越えた本人だから言えるのであって、他者が言うのは違うと感じる人も多い。

・「もったいない。異性へ普通に恋愛してたらモテそう」

性の自認や、性の指向が自由自在に選べるという勘違いから来る発言のように感じる。同性愛“なんか”を選んだ、というニュアンスを感じる。

・「少子化になると思わないの?」

発展した医療などの様々な方法により、LGBTの人も出産や子育てをすることは可能。ただし法整備や社会の理解などが追いついていない為、現状はかなりハードルが高い。また子供を産むために自由自在に変更できるほど、セクシュアリティは単純では無い。そもそも少子化はLGBTの人だけに限った問題ではない。

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みのりさんはLGBT当事者を囲む環境について

「差別は減りつつありますが、未だ諦めからピエロを演じている人もいる。ただ、当たり前ですが、全ての当事者がこれらに腹を立てる訳ではないです。乗り越えた上で、あえて自虐したりハッピーに捉えている人も多いです。当事者も千差万別なので、結局はその人の表情などから読み取る他ありません」という。 

その上で、炎上を回避するためのスキルについて

 「過去に炎上したケースのほぼ全てから、『好き好んでソッチを選んだんでしょ?』というニュアンスが見えます。ほとんどの当事者は叶うなら、いわゆる普通の男女に生まれたかったと思っています。もったいない、お得、特権などの表現は趣味嗜好で片付けられている気がして、あまりいい気分はしませんね。他にも『LGBTの人は特権を求めている』と言われると悲しいですね。あくまで普通の男女と同じレベルの権利を享受したいだけです。政治家などの炎上はこの辺りが多いように感じます。

当事者の私であっても傷つけてしまうことはあります。結局は、目を見て会話をして心地よい関係を探っていくしか無いです。傷つけない術は会得が困難ですが、LGBTに限らず、全ての人に優しくなれる大切な技術だと思います」

とみのりさん。やはり相手がLGBTかどうか以前の対人スキルや思いやりが炎上回避に欠かせないのか。

なお、MixRainbowが主催する月1度の座談会は人気が高く、2020年から計27回開催されている。筆者が参加した際も、年代性別問わず20人ほどが集まっていた。

「会に集まって様々な当事者と触れ合う中で、コミュニケーションの大切さに改めて気づけました。アライ(当事者では無いがLGBTに理解支援する考えを持つ人)の参加者もいましたが、交流する中でLGBTが特別なことではないと実感している印象があります。最後には全員仲良くなっていますね」

最近は遠方からの参加者も増えているようだ。「住まいや性別に関わらず様々な人に参加してほしい」と笑顔で語るみのりさんだった。