コメ高騰の中、“格安モニター”などを謳い文句に弁当販売の営業を行う謎の業者。しかし、代金を支払ったら弁当が届かないという詐欺被害が相次いでいます。その巧妙な手口とは?犯人の狙いは?亀井正貴弁護士の解説です。
■カメラが捉えた“弁当配達”飛び込み営業の一部始終

2025年5月20日、神奈川・小田原市にある自動車販売・買い取り会社『オート・エース』を訪れたのは、“弁当配達の営業”を名乗る謎の男。店長・渋谷さんは当時YouTube用の動画を撮影していたといい、男の訪問を偶然捉えたカメラは、その一部始終を収めていました。
(弁当配達の営業を名乗る男)
『2か月間のモニターで、飲食料金は頂きませんけど、配達料5000円で最大61食、お弁当をお届けできます』
2か月分の弁当を5000円。単純計算で 一食当たり80円ほどになり、コメの価格などが高騰する中、破格の値段です。
さらに、モニター終了後の値段を尋ねると…。
(弁当配達の営業を名乗る男)
『普通だったら(一食)500円になります』
(渋谷店長)
『安っ!本当に?』

(渋谷店長/番組の取材に対し)
「今、頼んでいるのが、もうちょっと金額が高いので、500円は安いと思って。手元のファイルの冊子を見せてもらうと、カラーで、こういうお弁当を日替わりで配達していますっていう何種類かのお弁当の写真も載っていて…」

結局、3人分1万5000円の代金を支払った渋谷店長ですが、あまりの安さに…。
(渋谷店長)
『1万5000円払って、ばっくれられることないの?』
(弁当配達の営業を名乗る男)
『ないです、それは大丈夫です』
(渋谷店長)
『だって、まだ御社の会社も知らないし』
(弁当配達の営業を名乗る男)
『会社はないです。私は会社員じゃないので。アルバイトです』
(渋谷店長)
『どういうこと?』
(弁当配達の営業を名乗る男)
『私はアルバイトです』
(渋谷店長)
『会社名もわからない?』
(弁当配達の営業を名乗る男)
『大元は、くるめし弁当。東京に本社がある、くるめし弁当』

アルバイトだという男が名前をあげたのは、実在する法人向けフードデリバリー会社でした。
(渋谷店長/番組の取材に対し)
「うちの奥さんが携帯でネット検索して、『くるめし弁当』って調べたら、きちっとしたホームページで。ちゃんとした企業さんで、そこを騙っていたんです。それを見て、信じてしまった。6月2日(月)の午前11時までにお弁当が届く予定だったんですけど、11時を過ぎても来なくて…」

男が名前をあげた『くるめし弁当』は、「弊社は、このような訪問営業は行っておらず、弊社または弊社の加盟店とは一切関係がございませんので、ご注意くださいますようお願い申し上げます」と、ホームページ上で注意喚起。会社としては名前を使われたことに困惑しており、被害が広がらないよう対応を協議しているといいます。

結果的に金を支払ってしまった渋谷店長ですが、実は“ある違和感”があったと話します。
(渋谷店長/番組の取材に対し)
「集金袋とか、お金を入れる袋や財布にしまうと思ったら、立った状態でクシャクシャとポケットに突っ込んだので、その時にちょっとおかしいと思って」
そこで、店を出た男に、問い合わせ先について問いただすと…。
(渋谷店長/番組の取材に対し)
「茅ヶ崎市観光協会という名前と、『もし心配だったら、電話してもらえれば対応してもらえる』と言われたので、そこまで言うんだったらしなくていいかなと思ってしまいました。自分が間抜けだったなというか、ちょっと足りなかったな、と…」
■男が持参していた説明資料を入手!実在する道の駅や観光協会を騙り…

実際、注文書には、『茅ヶ崎市観光協会』の名前と連絡先が記載されていました。弁当配達との関連について、茅ヶ崎市観光協会・大八木和也事務局長は、「茅ヶ崎市観光協会は関わっていない。2025年6月4日までで、18件ほど問い合わせの電話を頂いている。自動車関係の工場などの方が多いようだ」と話しています。

茅ヶ崎市観光協会によると、小田原市のほか平塚市や茅ヶ崎市・横浜市などから問い合わせが来ていて、さらには東京・八王子市からも被害を訴える電話があったといいます。
また、大八木事務局長は、「連絡いただいた方からは、弁当配達の人物は1人で来た・男女2人だった・50代を超えていたなどの情報が寄せられている。全然関係がない企業の名前を使うことに対し、憤りを感じる」としています。

番組は、男が説明に使っていた資料を入手。同様の被害に遭った神奈川・横浜市内の会社がコピーしていたものです。
そこに書かれていたのは、『道の駅 湘南ちがさき、2025年7月7日(月)OPEN。店舗出店オープンに向けて、お弁当試食モニター募集』という、道の駅のオープンに向けた試食モニター募集の誘い文句でした。
この道の駅は実際にオープンしますが、資料と同じ名前の店が出店する予定はありません。モニター募集に信ぴょう性を持たせるため、茅ヶ崎市観光協会の名前を騙ったのでしょうか―。

Q.観光協会の名前を勝手に使って迷惑をかけていることは、何かの罪に問えますか?
(元検事・亀井正貴弁護士)
「数が多くなってくると問い合わせも多くなって、業務妨害や偽計業務妨害になるかもしれませんが、現段階ではなかなか難しいと思います」
■自動車関連会社や建築工事会社…少人数の会社が狙われるワケ

さらに取材を進めると、千葉市内にも被害を訴える会社が…。
(被害を訴える建築工事会社/番組の取材に対し)
「10日間・一食300円で3000円だと言うので、格安じゃないですか。『なんで安いの?』と言ったら、『お弁当の宅配会社で、千葉のほうにも広めたいので、千葉担当で来ました』と」
こちらの会社も、配達予定日を迎えても弁当は来なかったといいます。
(被害を訴える建築工事会社/番組の取材に対し)
「あぁ騙された、と。3000円を騙しに来るのかと…。連絡先がGメールというあやふやなもので、会社の住所もなければ電話番号もない領収書は、おかしいじゃないですか。聞こうと思ったら、もういなかったので。お金を貰ったら、一目散だったんじゃないですか」

また、埼玉・草加市の自動車販売店も被害に遭いました。
(カートルズ草加・足立店 神谷準店長/番組の取材に対し)
「企業に行ったら、ほぼ皆さんカメラがあると思うんですけど、デジタルな世の中で、直接訪問して詐欺をするというのは、逆に詐欺だと思われにくいのかな、と。お昼ご飯を楽しみに仕事をしているので、悲しい気持ちにはなりました」

広範囲にわたる被害ですが、とりわけ自動車販売店が多く狙われています。被害を受けた神奈川・藤沢市の自動車販売店は、「自動車販売所など、少人数でやっている所に弁当を配達してくれる業者を見つけるのは難しい。これまでも“弁当屋”探しには苦労してきており、犯人はそういった事情を知っていて狙って来たか」と推測しています。
Q.捜査としては難しいですか?
(亀井弁護士)
「顔が割れていますから、本気でやろうと思ったらできると思います。ただ、被害が少額で、被害届を出したら逆に手間がかかるので、犯人は“刑事捜査まで行かないのではないか”という甘い見方をしているのかもしれません」
そして2025年6月11日、詐欺の疑いで57歳の夫と63歳の妻が逮捕されました。警察によりますと、この夫婦は仕出し弁当業者を騙り、5月29日に神奈川・横浜市鶴見区の自動車販売会社を訪問し、2か月分の弁当代1人5000円という超破格の“モニター契約”を提示して自動車販売会社から1万円をだまし取った疑いがもたれています。警察の調べに対し夫は「(神奈川)県内や東京・千葉で30件ぐらい注文は取った。だますつもりはなかった」、妻は「どうして逮捕されたのか分かりません」と容疑を否認していて、神奈川県警は県内で複数、同様の被害が確認されているため余罪を捜査する方針です。
各地で報告されている被害もこの夫婦の犯行なのか?捜査の進展が待たれます。
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年6月6日放送に一部加筆)


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