2024/5/2 18:00

車「アイドリングストップは不要」トヨタ社員ですら機能をオフでドライブ

車

アイドリングストップ機構は燃費性能が向上するにもかかわらず、わざわざその機構をOFFにして運転するというユーザーも多いようだ。そこで、ここではなぜこのような脱アイドリングストップという流れが起きたのかを考えてみたい。

筆者が先日、撮影のため軽自動車に乗っていたときのエピソードだ。季節外れの暑い日だったためエアコンの設定温度を低めにしたことで、かなり強い風量となっていた。その結果、都内を20km弱ドライブしたのだが、メーターパネル内のインフォメーションディスプレイには「エアコンを優先するためアイドリングストップしません」というメッセージが出つづけた。

つまり、そのドライブ中、快適さを優先するために一度もアイドリングストップすることはなかったのである。その際に、こんなにアイドリングストップしないのなら、必要ないかもしれない……と思ったのは事実だ。

そもそも、アイドリングストップ機構というのは、信号待ちなどの停車時にエンジンを止めることにより、無駄な燃料の噴射を止めること。そしてエンジンを停止することにより、排出ガス中に含まれるCO2の削減を実現させるために多くの車種に搭載された機能だ。

そんななかで“脱アイドリングストップ機構”に踏み切ったのは、トヨタ・ヤリス。2023年の新車販売台数で1~9月まで、すべて第1位となっているベストセラーカーだ。これほど販売台数が多い車種が脱アイドリングストップというアクションを起こしたことで、注目度が高くなったのだ。

またダイハツでは、軽自動車のムーヴキャンバス、タント、タフトの3車種で「eco IDLE」と呼ばれるアイドリングストップ機構非装着車も設定している。まず、このアイドリングストップ非装着車を設定したことについて、ダイハツ広報部に聞いてみた。

ダイハツ広報部によると、今回ムーヴキャンバス、タント、タフトの3車種でeco IDLE非装着車を設定したのは、半導体不足による納車遅延を減らすための施策とのこと。例えばeco IDLE装着車だと新車の納期が3カ月かかるところを、非装着車は2カ月で納車できる。ユーザーはどちらかを選択できるというわけだ。

ちなみに、売れ筋のムーヴキャンバスで比べてみると、ムーヴキャンバスストライプスG 2WD車の車両本体価格は167万2000円。燃費性能はWLTCモードで22.9km/L、自動車重量税が軽減されるエコカー減税は50%軽減で3700円。さらに、軽自動車税の環境性能割は非課税となる。

一方のeco IDLE非装着のムーヴキャンバスストライプスG 2WD車の車両本体価格は、163万9000円と3万3000円安だ。燃費性能はWLTCモードで20.9km/Lとなり、自動車重量税が軽減されるエコカー減税は対象外の9900円。そのうえ、軽自動車税の環境性能割は2万6800円で、アイドリングストップ付と変わらないのだ。

さらに、ダイハツのディーラーにバッテリーの価格を聞いてみると、ムーヴキャンバスの場合、アイドリングストップ機構の有無によるバッテリーの価格は変わらないという。結果的にダイハツムーヴキャンバスの場合、購入時の乗り出し価格は差がなく、バッテリーの交換費用も同じだが、燃費性能の差はわずか10%程度だ。これくらいの差ならば、ドライバーの運転の仕方で十分カバーできる範囲といえる。

ベストセラーカーながら、脱アイドリングストップを行ったトヨタ・ヤリスは、高い熱効率を実現した“ダイナミックフォースエンジン”の採用により、アイドリングストップ機構を装着しなくても優れた燃費&環境性能を実現したというのが理由だ。

先ほどのダイハツムーヴキャンバスを見てもわかるとおり、燃費性能が高いとエコカー減税の対象となるのだ。これまでは燃費性能を向上するためにアイドリングストップ機構を装着していた。

しかし、燃費性能を計る基準が変わったことにより、ヤリスが脱アイドリングストップを実施したともいえる。これまではJC08モードが燃費性能の基準となっていたが、現在は国際基準のWLTCモードへと変わっている。

WLTCモードの計測方法は、JC08モードよりアイドリング時間が減少しているのだ。したがってエンジンそのものの燃費性能が向上すれば、アイドリングストップ機構を採用しなくてもエコカー減税の対象となるのだ。

例えば、ヤリス1.5Z 2WD車の場合、自動車重量税はエコカー減税により2万2500円優遇され、自動車税の環境性能割は非課税となっている。1.5Lのダイナミックフォースエンジンの搭載により、アイドリングストップ機構を採用しなくても税制面で優遇されるのである。

また、頻繁にエンジンの再始動を行わないため、バッテリーの劣化も少ないし、エンジンへの負荷も小さいとユーザーにとって非常にメリットが大きいのである。すなわち、熱効率の高いエンジンは、燃費性能も向上し、無駄なCO2の排出も削減できるだけでなく、アイドリングストップ機構の非搭載により車両本体価格を下げることができ、さらにバッテリーの交換頻度が減るためランニングコストも削減できるということなのだ。

カタログの燃費データを鵜呑みにすることはできないため、8割程度としてもアイドリングストップによる燃費向上はWLTCモードでは期待するほどではないということだ。

ちなみにBusiness Journal編集部がトヨタ自動車の営業担当者に話を聞いたところ、アイドリングストップ機構を採用している自動車では、容量の大きいバッテリーを搭載しているため、同機構非採用の車種に比べて交換頻度が高いということはないが、バッテリー自体の価格は高くなるという。さらに、同担当者自身も機能をオフにして運転していると明かしていた。

以上、ビジネスジャーナルから紹介しました。

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編集者:いまトピ編集部