イオン、西友、イトーヨーカ堂…大手スーパー『大企業なのに』就活で不人気な根深い理由…
イオンや西友、イトーヨーカ堂、ライフ、マルエツ、オーケーなど誰もが名前を知る大手スーパーマーケット。その運営母体は大手企業だが、意外にも就職先としてはいまいち人気が低いようだ。その理由は何なのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
いずれもれっきとした大企業といえるが、共通して、特に大学新卒者の就職先として人気が高くなく、人材確保に頭を悩ませているという課題を抱えている。その理由について、チェーンスーパー関係者はいう。
「今ではめちゃくちゃな長時間労働というのはほとんどなくなっており、休日も常識的なレベルで取得できるようになりましたが、スーパーはほぼ年中無休で早朝から深夜まで営業しており、変形労働時間制というシフト制の形態が一般的です。よって土日出勤が当たり前で、全国展開しているチェーンだと頻繁に県をまたいだ転勤が生じることも覚悟しなければなりません」
■もっとも大きな理由は給料の安さ?
仕事内容そのものにも理由があるのではないか、という声も聞かれる。
「大卒社員の場合、将来的には店長やエリアマネージャー、本社勤務などのキャリアパスが用意されていますが、まずは現場の業務を知るために現場に配属されるのが一般的で、スーパーだと店舗のバックヤードで生鮮食品の加工や調理をしたり、品出しや発注業務、レジ、クレーム対応をしたり、物流拠点で力仕事をしたりと、パート・アルバイト従業員と変わらない仕事をすることになります。そういうことに抵抗を感じるという若者もいるでしょう。このほか、単なる世間的なイメージからか『飲食業界とスーパー業界は嫌だ』という声は昔から根強く、学生さんは行けるならメーカーや金融、ITなどへ行きたいという風潮が強いように感じます」(チェーンスーパー関係者)
「この業界が人材獲得に苦労するもっとも大きな理由は給料の安さでしょう」と別のチェーンスーパー関係者はいう。
例として、有価証券報告書で年間平均給与が確認できるスーパー各社の金額は以下となっている(給与が高い水準となる傾向がある持ち株会社などを除く)。
・オーケー:325万円(23年3月期)
・ヤオコー:618万円(24年3月期)
・ベルク:537万円(24年2月期)
「流通業界は他の業界と比べて非常に生産性は低いです。理由の一つは、リアル店舗をはじめ多くの設備を必要とする装置産業であるという点です。もう一つの理由は多数の人員を投入しなければならない人手産業であるためです。人件費や設備費用として多額の経費が常に発生するため利益率が低く、AIやDXの活用でできるだけ生産性を上げていく必要があります。利益率が低いことは給与水準の低さにつながり、さらに土日が休めなかったり立ち仕事が多いという事情も重なり、外食と並んで就活で人気がない業界となっており、人材確保が難しいという点は業界にとって長年の課題となっています」
もっとも、スーパー業界も変わりつつある。たとえばイオングループは、スーパー子会社のパート従業員にAI(人工知能)の研修を行い、販売計画作成などの店舗運営の中核業務を任せる。これまで正社員が行ってきた業務をパート従業員に移管する格好になる。
「人手不足がより深刻化していくなか、スーパーもDXの活用や生鮮食品・総菜類などのセントラルキッチン化などを進めて、従来の常識を壊して大幅な業務効率化を進めていかなければ、業態事態が成り立たなくなります。なので今後10年はドラスティックな変革の時期を迎えるため、チャレンジ精神の旺盛な人にはうってつけです。
現在は業界全体がきちんと社員に休みを取らせて長時間残業はさせないという方向で労働環境はホワイト化しつつありますし、他の低収入とされる業界と比べてそこまで給与も低くはないので、ぜひ就職先として検討してほしいです」(チェーンスーパー関係者)
詳細はビジネスジャーナルをご覧ください。
編集者:いまトピ編集部