メルカリ「返品詐欺」→「定型的返答」→「対応拒否で被害拡大」
メルカリで出品者が商品を購入してくれた人に郵送すると、「当初の説明と違う」「傷がついてる」といった虚偽の理由で返品を求められ、返品に応じたところゴミや安価な別の物が返品物として送られてくるという詐欺被害が続出している。出品者は事実上、所有物を盗難されたことになるが、メルカリ事務局に相談しても「購入者の主張が正しいことが確認できた」という旨の定型的な返信が寄せられ対応を拒否され、警察や弁護士へ相談するように言われるという報告が相次いでおり、事務局の対応に批判が広まっている。返品を求められた時点で不審に思い、その時点で事務局に相談しても、同じく「購入者の主張が正しいことが確認できた」として返品要求に応じるよう指示され、事務局が一方的に取引をキャンセルしたために購入者に郵送した商品を取り戻すことができず、事実上、盗難被害にあったのと同じ状況に陥るケースもあるという。なぜ、このような事態が起きているのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
そんなメルカリで前述のような問題が深刻化している。当サイトが実際に被害にあった人へ取材したところ、以下のような事例が起きている。
・新品未開封のプラモデルをメルカリに出品して購入者に商品を発送したところ、「部品が破損しているのでキャンセルしたい」との連絡を受けた。段ボールで2重に梱包するなど注意を払って送付したので破損の可能性は低いと思いメルカリ事務局に相談したが、返品に応じるよう指示され、返品に応じたところ、購入者から別物のパーツ部分がすべて抜き取られたプラモデルが送られてきた。改めて事務局に連絡し、写真付きで被害の状況を伝え、返品は受けたくないと伝えたところ、「購入者に確認したところ、返送した品に入れ間違いはないとのことなのでサポートは終了する」という返答が寄せられ、取引を強制的にキャンセルされた。一連の流れをX(旧Twitter)上で報告したところ、ネット上で事務局への批判の声が高まり、突如「メルカリのSNS担当」から「経緯の見直しおよび補償をする」とのメッセージが届いた。さらに事務局からも「販売代金の入金および購入者へ然るべき対応を検討」する旨の連絡があった。
・iPhone14を出品して購入者に送付したところ、「初期化されておらず規約違反だ」として返品対応を要求された。事前に初期化して郵送しており、その様子を写真にも収めていたことから詐欺を疑い、メルカリ事務局に相談したが、返品要求に応じるように指示された。そこで事務局に「詐欺の可能性があるが、メルカリが補償してくれるのか」と聞いたところ、「できる限りの対応をする」との回答があったことから返品を了承した。購入者から送られてきたのは別物の書籍だったため、改めて事務局に連絡したところ、「購入者が正しくiPhoneを返送したことを確認した」としてサポートを打ち切られた。
同様の事例はSNS上でも多数報告されているが、たとえば以下のような事例だ。
・10万円のコーヒーメーカーを出品して購入者に郵送したところ、傷がついているから返品したいと要求されたが、郵送前に傷がない旨を確認していたため事務局に相談した。すると事務局から
「お客さまによる迷惑行為『商品については正確な説明を行わないこと』を確認しております」
「届いた商品が『説明や画像と異なる』場合は、取引を完了することはできません。そのため事務局といたしましても、返品・キャンセルをお受けいただきたいと考えております」
「通知から72時間経過後も、購入者に返送先住所を開示しない、または返品・キャンセルに向けた連絡がない場合は、取引をキャンセルいたします」
と、出品者のほうが迷惑行為を行っているという返答が寄せられた。結局、事務局が一方的に返品要求を認めて取引をキャンセルしたため、出品者の手元に商品は戻ってこず、盗難されたのと同じ状況になった。
サービス利用上の規約はどうなっているのか。メルカリのヘルプセンターによれば、出品者から商品が届いた段階で「商品説明に不十分な点がある」「商品の状態がわかる画像を掲載しない」「実際に発送する商品ではない画像を利用している」ことが判明した場合は、購入者は返品、すなわち取引キャンセルを行えると定められている。
では、なぜメルカリは上記のような対応をとっているのか。中堅IT企業役員はいう。
「大前提としてメルカリ運営元の対応に問題があるのは明らかであり、その前提でお話をしますと、まず、プラットフォーム運営元としては購入者から『送られてきた商品に問題があるので返品したい』という申し出を受けると、消費者保護の観点から、それを拒否しにくいという事情があります。購入者から“証拠”とされる画像などが示されれば、それが虚偽のものであるかどうかを確認する術はありません。また、フリマアプリやECサイトでこれまで問題となってきたのは、出品者側や販売者側が問題のある商品や画像・説明文とは異なる商品を送りつける、つまり購入者が被害者になるケースが多く、メルカリでもそうしたトラブルが多かったため、販売者に当たる出品者側のほうを厳しく取り締まるという方向になりがちなのは致し方ない面もあります。返品という行為を悪用して事実上の窃盗を行うというケースは、比較的新しい手法ともいえ、メルカリもあまり想定しておらず、対応マニュアルが確立されていないのではないかと推察されます。
特にメルカリの場合は利用者の数が膨大なため、サポート体制の問題から、一つひとつの個別的な事案について細やかな対応を行うことが難しくなっているでしょう。結果的に不適切なかたちでの定型的な対応が生じてしまっているのではないでしょうか。
利用者としては『運営側が厳しく取り締まるべきだ』という心境になってしまうのは理解できますが、フリマアプリのようなプラットフォームの事業者はあくまで個人間が取引を行える場所を提供しているだけにすぎず、基本的には個人間のトラブルは当人同士で解決してくださいねというスタンスであり、捜査権限があるわけでもないので、トラブルへの介入には限界があります。犯罪性のある事案については警察当局に連絡して対応を委ねるというかたちになるでしょう。なので利用者側も自己責任ということを強く意識しつつ、取引相手には詐欺をもくろむ悪意のある人が混ざっているという意識を持つべきでしょう」
以上、ビジネスジャーナルから紹介しました。
編集者:いまトピ編集部