セブンイレブン、65%減益の衝撃…とある戦略の誤算「ファミマの逆転あるか」
セブン&アイ・ホールディングス(HD)の業績が低迷している。
2024年3~11月期連結決算では純利益が前年同期比65%減の636億円。主力事業である国内コンビニエンスストア事業(セブン-イレブン)の営業利益は同8%減の1829億円であり、24年6~8月の既存店客数は3カ月連続で前年同月比減、既存店売上は6~9月の4カ月連続で同減になるなど変調が見え始めている。売上・店舗数としてはコンビニ業界1位のセブンだが、このまま業績低調が続くのか。また、将来的に2位のファミリーマート、3位のローソンに逆転される可能性はあるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
セブン&アイHDの純利益減少の主な要因は、ネットスーパー事業からの撤退関連費用(458億円)と米国コンビニ事業での不採算店舗の閉店関連費用(567億円)という2つの特別損失を計上したこと。このほか、米国コンビニの既存店売上高の前年同月比減が続くなど低調で、GMS(総合スーパー)のイトーヨーカ堂は全店売上高が前年同月比2ケタ減の月も出ている。
なかでも主力事業である国内セブン-イレブンの低迷は大きな課題だ。その理由は何なのか。元ローソン・バイヤーで消費経済アナリストの渡辺広明氏はいう。
「店舗の売上高というのは『客単価×客数』でしかないので、既存店の売上高が落ちるということは客単価が落ちているか、客数が落ちているということになります。これまで世の中の物価高に比例して値上げが続いていたセブンですが、昨年3月に既存店の客数が前年割れになり、9月には手頃な価格の『うれしい値!』シリーズの商品を大幅に拡充しました。ですが、あまりその戦略がうまくいっていないように思えます。たとえばセブンは7月に『手巻おにぎり ツナマヨネーズ』を151.20円(税込、以下同)から138.24円に値下げしましたが、セブンのツナマヨが138円に変わったという情報を認識している人は少ないでしょうし、『ツナマヨが13円値下がりしたのでセブンに行こう』となる人は少ないでしょうから、客数増の面で目立った効果は出にくいです。
では、セブンの低迷は続くのか。また、将来的にファミマやローソンに逆転される日はくるのか。
「セブン-イレブン・ジャパンは今月の決算説明会見で『うれしい値!』をはじめとする価格戦略は効果が出ていると説明しており、つまり成功していると分析しているので、当面は今の状況が続くと予想されます。ただ、他の大手2社に追いつかれる可能性があるのかといえば、よほどの大きな要因が発生しない限りは、ないでしょう。セブンと他の大手2社の日販を比較すると、セブンのほうが10万円以上高く、埋められないほどの大きな差があります。その差を生んでいる大きな要因は店舗の立地です。セブンの店舗は競合他社と比べて非常に良い立地にあり、これはすぐに変えられるものではありません。それだけセブンの立地選定の能力が高いということですが、そうした立地の差は、どれだけ商品開発やラインナップの拡充・改善に力を入れたところで、埋めるのは難しいです。
また、惣菜・弁当類をはじめとする自社開発の食品を例にとれば、『スイーツはローソンが強い』といったように細かいカテゴリー別にみると多少の優劣はあるかもしれませんが、全体でみるとクオリティはどのチェーンもおしなべて高く、一般消費者が感じるほどの差はなくなっています。そうなると、やはり立地の差が売上を左右することになりますし、スーパーや外食、中食などあらゆる業態で値上げが進んだことで『コンビニは価格が高い』ということもなくなりつつあるので、セブンに限らず大手コンビニの売上が大きく下がるということは考えにくいでしょう」
また、コンビニチェーン関係者はいう。
「売上や客数が前年同月比減になる月が出ているといっても、幅としては1%前後くらいなので“ちょっと風邪をひいた”くらいのレベル。セブンのことなので、いろいろと対策を打って持ち直してくると考えられますが、懸念はあります。セブンは挽回策としてレジ横販売の食品に力を入れるとしており、一昨年以降『お店で揚げたカレーパン』、ピザ類、『お店で揚げたドーナツ』を相次いで投入し、店内焼きたてパン『セブンカフェ ベーカリー』の取り扱い店舗を拡大中です。たとえばドーナツは発売当初はかなり多く売れましたが、こうした商品は客は一度は好奇心で買ってくれるものの、飽きられるのも早いというリスクがあります。なのでレジ横商品で稼ぎ続けるためには、魅力的な商品を揃えて、かつ絶えず新商品を投入して棚に変化をつけ続ける必要があるため、ハードルは高いです」
詳しくはビジネスジャーナルから紹介しました。
編集者:いまトピ編集部