シャトレーゼが「業界トップ」…不二家との違い…「本物のママならそんなことは絶対にしない」

シャトレーゼは菓子業界の最大手だが、かつての業界最大手といえば、「ペコちゃん」で親しまれている不二家だった。
不二家は2021年まで、業界ナンバー1の売上規模を保っていたが、この年を境にしてシャトレーゼに業界トップの座を明け渡すことになった。
今回は、企業ブランディングを行う株式会社イマジナの代表の関野吉記氏の『管理職のチカラ~採用も、業績も、人材育成で変わる』(プレジデント社)より、管理職のあり方について一部抜粋・編集してお届けする。
この交代劇が起こった原因は、両者の経営戦略の違いにある。ご存じのように、不二家は広告宣伝が巧みな企業だ。
「ペコちゃん」「ミルキーはママの味」など、不二家という会社は、広告宣伝に巨額の投資をすることによって、好感度の高い企業イメージをつくり上げ、それを売上につなげてきたのである。
一方のシャトレーゼはどうかといえば、店舗は比較的簡素で、ペコちゃんのようなマスコットキャラクターも存在しない。誰もが記憶しているようなコマーシャルソングもない。
その代わりシャトレーゼは、社員を大切にし、一人ひとりをきちんと評価することに注力しているのだ。加えて齊藤寛さんは社員を事業に巻き込んでいくのが非常にうまい経営者なのである。
同社の経営手法の一例として、独特な「プレジデント制度」が挙げられる。これは、社員に自分の持ち場のコスト・カットや作業効率の向上を、まさに社長(=プレジデント)のように考えさせ、成果が上がれば報償金を出すという制度である。現在、シャトレーゼの社員は約2200人いるが、約5%の120人がプレジデントに任命されている。
シャトレーゼの躍進が、こうした斬新な仕組みによって支えられていることは言うまでもないが、ここには重要なポイントが2つある。
ひとつは、こうした制度は経営者が現場に直接足を運んで、現場をよく観察していなければつくれないということ。もうひとつは、シャトレーゼが社員の育成を成長の原動力としている、ということである。
では、不二家はどうだろうか。
ご記憶の方も多いと思うが、不二家がシュークリームの原料に期限切れの牛乳を使用していたのが発覚したのは、2007年のこと。このニュースを聞いて私が驚いてしまったのは、検査基準の10倍にも達する細菌が検出されていながら、期限切れの牛乳の使用を中止せよという声が社内から上がらなかったという事実である。
「ミルキーはママの味」という人口に膾炙したフレーズに社員が誇りを持っていたら、基準を超える細菌の検出を放置することなどあり得ない。本物のママならそんなことは絶対にしないだろう。
これは、不二家が企業理念の浸透を怠っていた証しであり、広告宣伝さえうまくやれば製品は売れると思ってしまった結果なのかもしれない。
不二家は広告宣伝に多額の費用をかけてはいたが、社員の育成、理念浸透、理念教育には力を入れていなかったのではないだろうか。そして、ライバルのシャトレーゼは営々と社員の育成を続けてきた結果、菓子業界トップの座を射止めることになったのである。
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編集者:いまトピ編集部